42、醍醐味を知る幼女
はっぴーばーすでー、たまごさーん♪
とゆわけで、無事に鳥の奥さんはご出産されたそうな。
もちろん鳥さん(でっかい鳩)なので、産んだのは「卵」ですけどね。
「息子は奥さんの血が濃いけど、次は俺に似てるかもなぁ」
「おとこのこ、おんなのこ?」
「娘だ」
「ほぇー」
卵の状態でも、どっちか分かるのすごい。
まぁ、お師匠様のことだから、きっと魔法でうんちゃらかんちゃらしてるんだろうね。
「卵が赤っぽかったからな」
「え、そういうやつなの? おとこのこは、あお?」
「よく知ってるなぁ、嬢ちゃん」
いやいや知りませんって。
でもわかりやすくていいね。この世界は「ひよこ鑑定士」とか必要なさそうだね。
さすがに卵は奥さんが鳩……羽毛でしっかりとあたためているそうだ。お師匠様とは一日交代なんだって。大変そうだけど、生まれてくるお子様はきっと可愛いんだろうなぁ。
「この前は息子しか行けなくて悪かったな。おかげで母子ともに健康だ」
「おししょは、なまえ、かんがえているの?」
「ん? そうか。嬢ちゃんは知らなかったか。獣人は自分の名を自分で考えるんだ。そして伴侶に出会った時にお互い名乗り合う」
「はんりょ?」
「結婚相手のことだ」
おおう。小鳥さんに「名を名乗れ!」とか言わなくて良かったよ。
獣人さんは名乗らないのが普通で、小鳥さんの場合「白鳩の息子」か「虹髪ペンドラゴンの息子」と名乗るらしい。
「ふぉぉ、かっこいい!」
「ん、そういうわけで、今日もやるぞ」
「きょうも……」
声に魔力をのせて早口言葉を何度もくり返すやつ、結構キツイんだよね。
以前からやってはいるのだけど、淑女教育のこともあり、訓練時間を増やすことになったのだ。
「ランベルトは、そのままで良いと言っているけどなぁ。嬢ちゃんは立派な淑女になりたいんだろ?」
「はい」
「それと体力作りも必要だ。筋力をつける訓練も増やしていこう」
「……はい」
実は、この前のお披露目会では五才から十才の子どもが数人いたのだ。
だけど、その子たちと同年代であるはずの私は、招待客のほとんどに三才くらいだと思われていたという衝撃的な事実が。
侯爵であるお父様が溺愛する「やんごとなき赤ちゃん」と遊ばせて、うっかり怪我でもさせてはと親たちが子どもたちを私に近づけなかったとのこと。
ぐぬぬ、せっかくの友達作ろう作戦が……。
でも、猪突猛進なイザベラちゃんの件もあったし、会の後半はほぼお父様抱っこだったからしょうがないよね。
次の機会ではしっかりと対応できるように、嫌いな運動も頑張ろう。
「魔力暴走の影響とはいえ、今からちゃんと体を作っていけば大きくなれる。諦めるなよ」
「はい!」
口を大きく開けて、噛まないように返事をする。
このままだと、お父様に恥をかかせてしまう。
早く大きくなって、鳥の奥さんのような『ボンッキュッボンッ』スタイル抜群の立派なレディになるのよ! ユリアーナ!
「……おい、無理はするな無理は」
どういう意味ですか、お師匠様。
そんな忙しい日々を過ごす中、私はモモンガさんと保護者のお師匠様、そして護衛のオルフェウス君を引き連れ、とある場所に来ている。
「なぁ、お嬢様。ここに何の用があるんだ?」
「しょくざいあつめ」
「きゅ?(食材ならば、調理場にあろう?)」
「みちの、しょくざいをさがす」
嘘です。
私の作品の世界ならば、未知の食材なんて面倒なものは設定にないだろうから。
「きゅ(なるほど。気分転換か)」
「そうともいう」
お父様は忙しいらしく、王宮で寝泊りをしている状態だ。お兄様も学園が休みにならないと帰ってこないし。
そんなこんなで寂しい気持ちを誤魔化すために、私は町へ繰り出すことにしたのだ。
「毎日訓練ばかりだもんな。お嬢様も息が詰まるってもんだ」
「ごめんなさい。ちょっとだけだから」
「いいって。俺もちょうど息抜きしたかったんだ。あの執事、俺を殺そうとしてんのかってくらい、急所スレスレを狙ってくんだぜ?」
「だ、だいじょぶ?」
「強くなるためだから、死なないように頑張るだけだ」
あははと笑っているけど、セバスさんったら一体どんな訓練をしているのだ。怖いよ。
ちなみに護衛はオルフェウス君だけじゃない。森の時にもいたけど、セバスさんの手の者たちがいてくれる。なんかいい匂いするから分かるんだよね。
「よろしくねー」
特に良い匂いがする方向に手を振って、いざ、町の市場へレッツラゴー!!
屋敷から町までは馬車で、お昼過ぎに迎えに来てもらうことになっている。
歩きづらい石だたみの道に四苦八苦しながら、私はオルフェウス君と手をつないで歩いている。
だって、つい周りを見ちゃうんだよ。そんで転びそうになるんだよ。
「こんなところを侯爵サマに見られたら、俺、殺されるんじゃねぇかな」
「あはは、まさかー」
「きゅきゅ!(ははは、さもありなん!)」
え、なにそれ怖いんですけど。
そして建ち並ぶ家やお店は、石造りが多いのね。木造もあるにはあるけど、基本の建材は石みたい。そこら辺は詳しくないし、詳しい設定をした記憶もない。
自称保護者のお師匠様は、キョロキョロしている私にすかさず声をかけてくる。
「朝市には間に合いそうだけど、人が多くなってきたら抱き上げるぞー」
「う、おねがい、します」
この世界の人たちは体が大きい。
ただでさえ平均よりも小さい私なんて、人混みに入った瞬間ボールのようにぽんぽん蹴られてどこかいってしまいそうだ。
「あ、あれは……」
「肉の串焼きが気になるのか?」
「くしやき……!」
市場の入り口に屋台がいくつかあり、その中のひとつから焼いた肉とタレが焦げた、なんとも食欲をそそる匂いがする。
炭火で熱いのだろう、ムキムキマッチョのお兄さんが汗だくで焼いているのがいいね。
もしや、あれが異世界ラノベによくある「屋台で売られている肉の串焼き」ってやつか!
なんの肉だかよく分からないという、あのお約束のやつか!
「豚バラと鳥肉の串焼きだ。食うか?」
「……たべる」
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早く前の環境に戻るよう祈る日々です。
皆様、お体に気をつけてくださいませ。




