表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/147

19、幼女と聖女?


 私の作品では、主人公を取り巻く美少女たちがいた。

 その中で無口キャラだった私は、主人公の妹的な立ち位置にいたと思われる。

 幼なじみキャラは正統派ヒロインで、回復魔法が得意な彼女はお色気担当だった……はずだ。彼女が噂の聖女なのかは分からないけど、とりあえず話だけは聞いてみたい。

 自作キャラくらい覚えておけよって感じだよね。うん。私もそう思うんだ。


 でもね、人それぞれだとは思うけど、作家にはいくつか種類があるのだよ。


 自分の作品を骨の髄まで愛する作家。

 このタイプは世界設定、人物設定、物語の流れなど、詳細な部分まですべて記憶している。


 自分の作品を生み出した瞬間忘れる作家。

 このタイプは世の中に出した瞬間、ログラインは辛うじて覚えているけど、詳細な部分はほぼ忘れる。むしろ翌日あたりに読み返すと、新鮮な驚きと感動を得るくらいに忘れる。


 もちろん、私は後者だ。

 そもそも自分の小説って、自分の性癖やらもにょもにょを晒す公開処刑みたいなものなのじゃない?

 だからこそ、羞恥で心がわちゃわちゃするくらいなら、いっそ忘れたほうがいいという自己防衛本能っぽいのが働いていると思うのですよ。たぶん。


 そんな、誰に対してなのか分からない言い訳を心の中でしつつ、私とお兄様は教会に到着する。途中でお兄様抱っこのお世話になったのはご愛敬だ。

 幼女の体力、なめんなよ!

 なんでもないですごめんなさい。筋トレがんばります。


「どうしたユリアーナ、疲れたか?」


「だいじょぶです、おにいしゃま」


 大袋に入ったクッキーを抱えた私は、うんしょこらしょと持って教会の中に入る。

 お兄様が無表情のままハラハラするという器用な表情をしているけど、私は大丈夫ですよ。ちゃんと神官様に差し入れできますよ……あれ? 神官様がいない?


「すまない。誰かいないか?」


「はぁーい!」


 出てきた神官は、ピンクブロンドの髪を後ろでゆるりと結え、大きな胸をたゆんたゆんと揺らして出てきたのは……。


「あら、可愛らしい子が来たわね! 小さなおててに持っているのは、もしかして差し入れのクッキーかしら? 嬉しいわぁ!」


……ナイスバディな美丈夫だった。







「聖女? ああ、それ、もしかしたらアタシのことかも?」


「え!?」


 なぜか固まったまま動かないお兄様はとりあえず放置……じゃない、休んでもらうことにした私。

 ゆとりある神官服を着てても分かるくらいの、ムチムチわがままボディを持つ神官様に、噂になっている聖女のことを聞いたら予想外の答えが返ってきた。


「ここら辺で回復魔法が得意な人間ってアタシくらいだし?」


「あの、でも、ちいさなおんなのこだって」


「アタシ、神官になって十年なのよ。だからいつも『美少女神官クリス、十才です!』って自己紹介しているわ」


「……なるほ、ど?」


 それでいいのか、噂の幼い聖女。

 ん? クリス?


「クリスティア?」


「あら、よく知ってるわね。クリスティアはアタシの娘よ」


「ほぇ?」


「クリスティアは、とても良い子なんだけど……なかなか回復魔法が上達しなくてね。教えようとしても反抗期なのか『パパはパパっぽくないから嫌い!』なんて泣いちゃって、話もしてくれなくなっちゃって……」


 それ、反抗期とか関係ないのでは?

 娘さんに同情しながら、首をかしげる私。


 主人公と出会った時、クリスティアは回復魔法の名手だったはず。

 物語では魔法を不得意とする主人公が、仲間になって欲しいとクリスティアに何度もお願いして、共に冒険の旅に出るという流れだった。


「まほう、かんたんなのに、ね」


「そうなのよねぇーって、あら、お嬢ちゃんは魔法のことが分かるの?」


「ん、おししょ、かんかくでやるの」


「感覚派……それは魔法理論と対をなす発動方法ね。こう見えてアタシは理論で魔法を発動させているから、もしかしたらその教え方がよくなかったのかも……」


 こう見えてって、どう見えてだろう? 

 筋肉でムチムチしてるようにしか見えないけど?


「ん、いんてりきんにく」


「言ってることはよく分からないけど……まぁ、そんな感じかしら?」


 どこが理論派だ。この脳筋め。

 クリスティアが回復魔法不得意だと、物語に影響ある気がする。

 いや、すでに私がアレな感じになっているけど、魔法はまぁまぁ上手くいっているし、そこは大丈夫……だと思うよ。うんうん。


 よし、決めた。


「くりす、あそぶ?」


「なぁに、お嬢ちゃん? アタシは神官のお仕事が忙しいから、あまり遊べないと思うわよぉ」


「違う。妹は神官殿のご息女と遊びたいと言っている」


 いつのまに復活したのか、お兄様が私のフォローをしてくれる。ありがたや。


「あら、そっち? そうねぇ……」


 私とお兄様を交互に見たクリス神官は、艶やかな赤い唇が弧を描くように満面の笑みを浮かべた。


「うん。お嬢ちゃんなら、きっと良い刺激を与えてくれそうね! ぜひともお願いしたいわ!」


「ならば、父上には私から伝えておこう」


 やったー!! 主要キャラゲットだぜー!!


「ありがと、おにいしゃま! だいしゅき!」


 お兄様に抱きつき、思いきりぎゅーっとしたら、離れるようクリス神官に注意されてしまった。

 神聖な教会で、つい荒ぶってしまってごめんなさい。


「ごめんなさいねぇ。さすがにあそこまで赤くなったら倒れてしまう気がしたのよぉ。二人の邪魔をする気はなかったのよ? ほんとよ?」


「たおれりゅ?」


 お兄様を見れば、いつも通り安定の無表情だ。

 それでも何が起こるか分からない世の中だし、ましてや神官様に心配されるようなことはしないほうが良いだろう。

 八の字眉になった私の頭に、ぽんぽんと優しく手を置いてくれるお兄様。


「気にするなユリアーナ、私はもっと強くなるから」


「あい!」


 よく分からないけれど、キリリとしたお兄様はとてもカッコイイです!


 とりあえず、本日のミッション「聖女と接触する」はクリアしたと思っていいのかな?

 自作のキャラであるクリスティアと会えるみたいだし、ちょっと怖いけど楽しみだ!


 ん? クリス神官?

 そんな濃ゆいキャラ、作中に出てきたかなぁ……???



お読みいただき、ありがとうございます!

そしてブクマや評価、感想での応援……感謝です!!!!


あれ?こんな(筋肉)キャラいたっけ?ってなりませんか。そうですか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] たゆんたゆんと揺れるのは、果実ではなくて胸筋だった…ww
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m 主要キャラより強烈な神官さん(笑)
[一言] キャラの押しが強すぎて思ってたのと違う展開、とかもあるのでこんなキャラ居たっけ位どうと言う事は無い!と思いますよ と言うかゲームで居なかったキャラって大体重要ポジだったりするの多いですよね?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ