17、しっかりと後片付け
落ち着け私! すぅー、はぁー。
姿勢を正した私は、ピンク頭のイケメンに視線を向ける。
「おいちゃん、ベルとうしゃまは、どうしておこったの?」
「ユリアーナ嬢、もう一度頼む」
「う? おいちゃん?」
「フェルザー侯爵、やはり娘さんを私に……」
「断る」
ふぉっ! 寒いっ!
なんとなく分かった。私の叔父を名乗るピンク頭が、自国で保護するのあたりで激怒したのね。
お師匠様を見れば、こくこく頷いている。だから心を読むのをやめなさいってば。
「ここまでしっかりと守られているのであれば、祖母も納得するだろう。いや、すでに予知にも出ているだろうな」
「それは良かった。では交換条件として出ていた自称ユリアーナの母親は、引き取ってもらっていいということだね」
「うっ、それは……」
自称ユリアーナの母親? と首を傾げていたら、お父様が頭を撫でてくれる。
お父様も知ってるの? あの人が来ているの?
むむむと唸っていると、苦笑したお師匠様が
「嬢ちゃん、アレ、凍ってた現場にいたぞ。見なかったのか?」
「んー?」
目を閉じて、脳内に先ほどの光景を思い浮かべる。
我の脳細胞よ、今こそ目覚めよ。ふぉぉぉー!(気合い入れる感じ)
お父様がアイスブルーの魔力をまとってて綺麗だった。
お師匠様のアホ毛が便利そうだった。
イケメンな王様と叔父様がお師匠様に魔力を送って協力していた。
椅子やテーブルが凍りついている間に、なんか転がっている物体があった。
ピコーンと頭に電球のマークが光る。
「おお、あれだった」
「分からなかったのか? まぁ、あんな女を覚えている必要はないけどなぁ」
「あのひと、へんなあたま、だったから」
「ん? 変な頭?」
お師匠様の隣に、ススッとセバスさんが近寄る。
「ペンドラゴン様、かの方は御髪を……多少失われておりましたので」
「髪を多少、ねぇ」
とたんに悪い笑みを浮かべるお師匠様から、大人の色気のようなものが出ている。
なぜかお腹に回されたお父様の腕に力が入って、ちょっと「ぐぇっ」てなりましたよ。ぐぇっ。
あー、そういえばさっきアフロみたいな髪型の人が、どっか連れて行かれてたかも?
「んー、氷の魔力をどうにかしようと、嬢ちゃんが火で俺らを守ってくれてたからなぁ。多少燃えても、あの中で生きてただけで御の字だろ」
「そうだね。彼女は名前も抹消されているし、我が国の民ではない。……そうだ! そちらの寺院で預かっていただくのはどうだろう!」
王様がさらりと提案しているけれど、隣国の寺院ってあの過酷な修行をすることで有名な所では……。
ちなみに私の作品内では、主人公が血反吐を吐きながら修行をする場でもある。ひぇ。
「寺院ですか……なんとかなるとは思いますが、お布施をかなり要求されるので」
「そこは王家が持とう」
「え、なんでランベルトが言うの?」
「気にするなアーサー、あいつは嬢ちゃんを守るために必死なだけだ。それに、持ってやるんだろう?」
「はぁ、そうだね。生家である伯爵家の資産からも徴収しよう。さすがに隣国に迷惑をかけているのだから、多少は出してもらわないと」
お父様の素早いレスポンスに、王様とお師匠様がコソコソ打ち合わせしている。
うん。なんか母だった人がすみません。
「さてと。これで解決かな? アケト殿は王宮でごゆるりと休まれよ」
「感謝いたします。明日の朝には国へ戻りますので」
急に王様が王様の顔になって、叔父さんも王族っぽい顔になった。
さて、私はどうしよう?
「嬢ちゃんは、今日はもう王宮から出たほうがいいな」
「おししょ、まほうのおべんきょうは?」
「慣れない魔法を使っただろう? いくら魔力が高くても、あんな無茶な使い方をしてたらダメだ。減点20だ」
「にじゅう……」
「明日からまた、魔力操作と理論の勉強をするから、それまで魔法を使うのを禁止だぞ」
「きんし……」
がっくりとうなだれる私を、お父様が膝をゆすってあやしてくれる。
うう、その厚い胸板に包み込まれると、悲しみが癒えていきまっする。くんかくんか。
「でもまぁ、助かったよ。よくやったな、嬢ちゃん」
「あい!」
ほめられたことによって、幼女のご機嫌は急上昇だ。
それにしても、何かを忘れている気がする……なんだっけ?
セバスさんが新しい茶菓子と紅茶を持ってきてくれたので、ふたたびティータイムだ。
お腹がちょっとたぷたぷしているけど、お菓子の魅力にはあらがえない。
今回はカヌレでございます。うまー。
「ところで、ここに来る前に面白い噂が流れていましたよ」
「ほう?」
薄紅色の髪を背にはらい、微笑みを浮かべて話し出すアケト叔父さん。王様も笑顔で返しているけれど……。
これはなんとなく「貴族的な話題」の香りがするくんかくんか。(二回目)
お貴族様たちの言う「面白い」というのは、もちろん笑えるような話ではない。そこは場合によりけりだけれど、だいたい「キナ臭い」内容が多いのだ。こわいこわい。
「町のはずれにある教会に『聖女』が現れたと。多くの怪我人や病人の治癒をしたそうですよ」
「それは、我が国にとって喜ばしいことだ」
へぇ、聖女かぁ。治癒の魔法って難しいとお師匠様が言ってた。
それをたくさん使えたら、たしかに聖女って呼ばれてもおかしくな……。
え? 聖女?
「まだ幼いようですが、ぜひビアン国にもご招待したいものです」
「教会と交渉されるのはどうかと……幼い子は自由であるべきでしょう」
「そうですね」
「しかし無償で民を助けるとは、素晴らしい功績だ。詳しく調べさせよう」
「それがよろしいかと」
茶番!!
王様も叔父さんも詳細を知った上でのやり取りだね!!
それにしてもその少女は、私の作品に出てくる主要キャラの聖女なのかが気になる。
どうにかして、接触できないものか……。
お読みいただき、ありがとうございます。
しっかりお布施を渡せば、逃げないよう見張りをつけてくれるコースを選べます。




