13、大物がやって来た
なんとか更新…!
ブクマ、評価、感謝でございます…!
「嬢ちゃんはすげぇぞ。魔力暴走の恩恵か、予知みたいな能力があるのかもなぁ」
「……そうか」
眉を少し動かしただけで、通常どおりの無表情なお父様。なんとなくだけど機嫌よさそうに見える。
お師匠様は虹色の髪についた寝ぐせをフワフワと揺らしながら、満面の笑みを浮かべて私を褒めてくれる。
いいぞいいぞ。褒められて伸びるタイプなんですよ。私は。
日当たりのいい庭園にある東屋は、魔法の勉強をする定位置になっていた。
実際魔法を使うときもすぐできるし、部屋を水浸しにすることもないからね。(すでに何度かやらかして、お師匠様が証拠隠滅したけどセバスさんにはバレた)
休憩時間の今は、お父様も交ざってお茶をしている。
今日のお茶菓子はカスタードとブルーベリーのタルトですよ。疲れた目に染み渡りますよ。
大捕物があった翌日から、なぜか屋敷で仕事をすることになったお父様。
そして数日に一回きていたお師匠様は、毎日来るようになった。
さらに言えば、私が町に住む「おししょのおくさん、きけん?」とお父様に問いかけたところ、屋敷近くの森に希少種の獣人たちが引っ越してくることになった。人身売買から解放されたけどお仕事がない獣人さんたちは、森の管理をしてくれるんだって。
セバスさん曰く、やたら広いから管理が大変だったから助かるって。結果オーライだ。
「奥さんは町よりも自然がある家のほうが嬉しいってよ。森を貸してくれてありがとな、ランベルト」
「希少種の保護は貴族の義務だ。それに森の管理は必要だ」
「んなこと言ってぇ、また嬢ちゃんが泣くからだろぉ?」
え? そうなんですか?
「義務だ」
「へいへい」
ムスッとした声で言いながらも、膝抱っこしている私の頭を撫でる手を止めないお父様。
薄々感じていたんだけど、もしかしてお父様は私を……。
「ぺっと、みたいな?」
「なんだ?」
「なんでもないでしゅ」
見上げてへらりと笑えば、さらに撫でてくれる。最近ちょっとだけ頭皮が心配だけど、こうやって親子のスキンシップをするようにセバスさんが言ってくれているのだろう。
ほら今も、生温かい目で私たちを見ているし。そろそろ頭皮が摩擦で熱くなってたから止めるよう言ってくださいセバスさん。
「それにしてもランベルト、王宮の仕事はいいのか?」
「問題ない。部下が優秀だからな」
「けどよ、アーサーが困るだろ? お前の意見を元にして仕事をすると一番うまくいくって言ってたぞ?」
「そろそろ陛下にも独り立ちしてもらわねば」
「いやいやお前は王の家臣だからな? 貴族の義務はどこいった?」
「……明日は行く」
「そうしてやれ」
呆れたように苦笑するお師匠様に私の膝抱っこを交換したお父様は、仕事をするために屋敷へ戻って行った。
いや、別に私はひとりでも座れますよ、お父様。
「過保護にされてんなぁ、嬢ちゃん」
「ベルとうしゃま、おうしゃま、なかよし?」
「おう、俺とアーサーとランベルトは学園で同級生だったんだ。俺の息子と王太子とヨハンみたいなもんだな」
「おーたいし?」
「王太子の入学にあわせて、同年代の俺らの息子を学園に入れたんだ」
「ほぇぇ」
「とはいえ、三人とも出来が良すぎるから、飛び級して卒業ってなりそうだけどなぁ」
「しゅごい」
さすがお兄様、私とは頭の出来が違う。
頭のいいお兄様ならきっと、理論を駆使して魔法を発動させたりできるんだろうな。
「さて、今日は発声練習をするぞ。『大麦まぜた小麦を大麦ぬいてひいてこねたら大麦ぬき小麦でパン焼けた』って、三回早口で言ってみろ」
「おおみゅぎまじぇたこみゅ……うう……」
無理だ!! ユリアーナじゃなくても無理だ!!
「いくつか紙に書いておくから、俺のいない時でも頑張れ。嬢ちゃんはもっと話をしたいんだろ?」
「……あい」
そうだ。この前はお父様が居たからなんとかなったけど、また危機的状況になった時に自分の意志を伝えられないのは困る。
よーし、やるぞー。
とりあえず小麦は置いておこう。
「この、たけがきに、たけ、たて、かけ、たのはー」
「お、やる気になったなぁって……そのタケガキっつーのはなんだ?」
「たけ、しょくぶつ」
「タケ……ああ、東の大陸にそんな植物があったな。すげぇ早く成長する木だとか」
そっか、植物は気候や土壌に左右されるから、いくら世界設定を適当にしていても、さすがにそこはざっくりとはしていないよね。
そしてやはり存在するのか……ファンタジー作品あるある『東の大陸』が……。
作者なのに、そこらの設定に置いてきぼりでござるの巻。
そして私ことユリアーナは、ひと月ほどお父様やお兄様やお師匠様に弄ばれ……じゃない、構ってもらう日々を送っております。
ユリアーナの体力はだいぶ元に戻っていて、お医者様からも問題ないと言われました。
苦い漢方は卒業です! やったね!
「セバス、だいじょうぶ。ひとりであるけます」
「さようでございますか、お嬢様」
「ベルとうしゃまに、いってくだしゃい」
「旦那様に直接おっしゃっては?」
「なんどもいってるの」
「さようでございますか、お嬢様」
日課の朝の散歩に出た私を、どこからともなく現れて捕獲抱っこするお父様。
王宮へ行かなくて大丈夫なのだろうか。そして私は歩きたいのですが。
「私が処理するものは、部下のマリクが屋敷まで持ってきているから大丈夫だ。それと、歩くと転ぶ危険性がある」
それって、部下のマリクさんとやらが大丈夫じゃない気がするよ。
あと、散歩って自分で歩かないと意味がないので抱っこから解放してください。転ぶ危険性は加味しておりますので、可及的速やかにお願いいたします。
「……そうか」
優しく地面に足をつけてくれるお父様。そして私の心を読む技術が日に日に向上しているお父様。恐ろしい子!
さて、歩きながら早口言葉の練習だ。
「なまむぎ、なまごめ、なまたまごー」
「生麦と生卵はともかく、ナマゴメとは?」
「ひがしにある、しょくぶつです。……たぶん」
「ふむ、そうか」
「いつか、ひがしにいってみたいのでしゅ」
早口言葉の成果は着々と出ているけど、油断すると甘噛みするなぁ。がんばれ私。
ご機嫌で歩く私は、ふと空気が冷んやりしていることに気づく。
「……東の大陸に行く、だと?」
「あい。いってみたいでしゅ」
「なぜだ?」
「いろいろみたり、ぼうけんしたり」
「ユリアーナは冒険者になりたいのか?」
「ぼうけんしゃは、つよいから、あこがれましゅ」
「……そうか」
「ベルとうしゃまは、つよいから、すごいぼうけんしゃになれましゅね」
「……そうか」
お、冷んやり空気がなくなった。
なぜお父様のご機嫌が直ったのかは不明だけど、私がいずれ冒険者になるという『物語の流れ』を伝えることができたのは良かった。
お父様と手をつないで散歩していると、セバスさんがスッと前に出てきた。
「お客様のようです」
「構わん」
「おきゃくしゃま?」
屋敷の門のあたりが騒がしい。お師匠様は屋敷まで直接森から来ちゃうし、お兄様の休みはまだ先だ。誰だろう?
「ランベルト! ランベルトはいないのか!」
低く響く声に驚いて、思わずお父様の足にしがみついてしまう。
流れるような動作で抱っこされた私は、お父様の胸筋にしがみつきながら、そっと声のする方向を見る。
そこには軍服みたいな姿の、オレンジがかった金色の髪を後ろに撫でつけ、整えた顎髭の美形オジサマがいた。お父様と同じくらいの年代かな?
「静かにしろアーサー。ユリアーナが怯える」
「す、すまない。しかし、ランベルトが王宮に来ないから仕方ないだろう?」
キリッとしていた軍服さんは、お父様のひと声で途端にへにょりと八の字眉になってしまう。この人……御方は、もしや……。
「私は忙しいと言っている」
「今、のほほんと散歩してたよね!? 忙しくないよね!?」
「朝の散歩は、すべての事において優先されるユリアーナの日課だ」
「いやだから、それは君じゃなく『ユリアーナ嬢にとっての優先されること』だよね!? 僕が頼んでいる仕事は!?」
「知らん。マリクに聞け」
「ひどいよランベルト!!」
私の予想ではこの人、学園時代のお父様とお師匠様の同級生であり、この国のトップである国王陛下ではなかろうか。
なんか、ただの残念キャラにしか見えないよ?
どうなっているんだよ作者!!(特大ブーメラン)
お読みいただき、ありがとうございます。
なるべく間を置かずに更新したいです。
バタバタしております。
(ヒント:確定申告)




