121、ファンは大事にしたい系の幼女
前世でお祭りといえばヤグラ?が建てられて、太鼓を鳴らし盆踊りを踊って、出店がたくさん並んでて……という夏祭りのイメージがある。
この世界では祭りは収穫祭や、祝い事があったら皆で宴会をすることも、一種の祭りという認識されているみたい。
ティアのお父さんは、一体どのような説明をしたのだろうか……。
「むくつけき!」
「ユリちゃんは難しい言葉を知っているのですね」
「よく分からないんだが……コイツらは祭りで何をするんだ?」
目の前に現れたのは、屈強な男性たちだった。
お父様がビアン国の神殿に申し出たところ、ティアパパは快諾。そこから祭りに必要な人員を寄越してくれるという話だったと思う。
それがなぜ、こんなことに???
「俺らは祭りについては素人だ!」
「しかしながら、いつでも全力で動けるよう訓練している!」
「筋肉の準備も万端だ!」
「クリス神官は後から来るとのことだぞ!」
寝起きの幼女に、むくつけき男たちの筋肉は目に優しくない。
ビアン国の人たち特有の褐色の肌は、朝日をあびてキラキラテラテラと輝いている。オイルでも塗られているのだろうか。
中庭に面したテラス席で、セバスさんが用意してくれた冷たいお茶を飲む私たちは、目の前で繰り広げられる異様な光景に戸惑っていた。
「俺もあれくらい筋肉を増やしたいな」
「前は、普通なのに、なぜ後ろが……はわわ……」
やめてください。オルフェウス君はそのままでいてください。
そしてティアは両手で目をふさいでいるように見えるけど、しっかり指の隙間から彼らの筋肉をみているよ。
そう、彼らは神官服を着ている。でもそれは「前」だけで、うしろは布が極端に少なくなっている。
そのT字になっている下着はなんですか? 紐ですか? 布ですか?
引き締まった大臀筋が眩しすぎて、幼女は直視できません。
「は、はれんちすぎる……」
「ハッハッハ! ビアン国は暑いからな!」
「後ろだけでも涼しく過ごしたいのだ!」
「そんな我らの願いを、クリス神官が叶えてくれたのだ!」
「クリス神官は、いつも我らを褒めてくれるぞ!」
彼らはムッキムキの筋肉を見せびらかしてはいるけれど、神殿関係の騎士などではなく純粋な神官なのだそう。
普通の服や本来の神官服だとボタンをぜんぶとめられないから、後ろの布面積を少なくして、せめて前だけでも……という神官としての心意気があるんだって
うん! 何を言っているのか意味がわからないよね!
「王都には、こんなガタイのいい神官はいなかったと思うけど……ビアン国だからか?」
「巡礼神官時代の父は、ビアン国で神官の指導をしたことがあると聞きました」
ああ、それで筋肉信仰が広まったと。
この世界には数多の神々がいる……という設定だったけど、まさか筋肉の神なんていないと思うけど……いやまさか……。
ビアン国王宮の中庭は、少しでも涼しくさせるために日陰を作るような植物が多くある。
そんな配慮は不要とばかりに、筋肉神官たちはお日様の光に照らされながら、ひたすら肉体美を披露している。
……後ろの。
「ユリア、そんなに神官共が気になるのか? アレをどう思う?」
「ムキムキしてるなぁって」
「そうか……セバス!」
いつになく難しい顔をしているアロイスモードのお父様に、セバスさんが青を基調とした胸元に印の入った服を差し出している。
この印、ティアや神官さんたちの服によくある……。
いや、ちょっとまって。
それは王都風の神官服ですか? それともビアン国風の神官服ですか?
どれも違って、どれもいい……って言いづらいです!!!!
思いとどまってくださーい!!!!
あと、どうせならアロイスじゃないお父様の姿で見た……いや、なんでもないでーす!!!!
「というわけで、たいへんだったの」
「そ、それは……ぷっ、大変だったのね、ぷふぅっ」
笑い事ではないのですよ。予言の巫女様。
そして祭りといえば、古来より神様へ向けての儀式だったりするから、王族のみならず巫女様にも頑張ってもらわないとなんですよ。
「きゅっ(我は何をすればいい?)」
「モモンガさんは、いいかんじのところで、あめをふらすの」
砂漠といえば乾燥しているイメージだ。
そこで祭りの最骨頂の時に、雨とか降ったら楽しくなるのでは? と思う。
前世でも神輿を担いでる人たちに、水をかけてた気がするし。わっしょい。
そして、お腹を抱えて笑っている巫女様を、ぺしぺし叩く。
お父様とセバスさんは王様たちと祭りの打ち合わせをしているし、ティアとオルフェウス君は筋肉神官たちと交流中(?)だ。
だから、巫女様とじっくり話せるのは今のうちなのだよ。
「はぁー、笑った笑った。氷の侯爵様のビアン国風の神官服姿、見たかったなー」
「それはみたかった。でも、それよりだいじなことがあるの」
私の真剣な様子に、巫女様は表情を引き締める。
巫女様がこの世界について書き込んだノートについて、気になる部分があったのだ。
だから私は、もう一度見せてほしいとお願いしようと思っていたのだ。
「ユリちゃんのお願いなら何でも叶えたいとは思うけど、私のできることは少ないよ? だって、私は偽物の予言の巫女なんだから」
「そんなことないの」
だって巫女様は乙女ゲームのシナリオを知っている。
私の知らない、スピンオフの物語の知識があって、もしかしたら祭りの他にも何かできることがあるかもしれない。
そのヒントになるようなものを、巫女様は持っている気がするのだ。
「ユリちゃん……そうだよね。私も、私がここにいる理由が知りたいと思っているの」
「うん。ヒント、あるかも」
「あ、見つからなくても大丈夫だからね。だって私、王様のこと好きだし、出会えて嬉しいから理由は後付けで構わないと思っているんだ!」
巫女様……後付けエピソードでもいいとか、なんということでしょう!!
作家に優しいにも程がある!!
もう、何でも買ってあげるからね!!
王様の財布が唸りをあげるからね!!
お読みいただき、ありがとうございます。
『氷の侯爵様に甘やかされたいっ!』
小説5巻、コミックス3巻が発売しました。
(小説は全編書き下ろしです!)
そして、たくさんの応援をありがとうございます。
なかなか更新できず申し訳ないです。
毎日、執筆しております。
これからも頑張ります。
筋肉神官ズはWEB版が初登場です。
アダム、サムソン、ゴンザレス、ブルース…みたいな名前をつけたいです。(希望)




