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【Web版】氷の侯爵様に甘やかされたいっ!~シリアス展開しかない幼女に転生してしまった私の奮闘記〜  作者: もちだもちこ


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10、幼女の失言は天災を呼ぶ

嵐を呼ぶ幼女。


 いつもより早く屋敷に帰ってきたお父様に、夕飯の途中だった私は慌てて立ち上がろうとしてリーリアに止められる。


「お食事が終わりましたら、旦那様のところへ向かいましょう」


「んぐ、ふぁい」


 確かに食事中に動くのはお行儀が悪い。

 それでもお父様から私に対しての好感度が、どう変化しているのかが気になる。


 やっと普通に食事がとれるようになったユリアーナだけど、まだまだ食が細い。

 料理長が作った料理を並べて、そこから取り皿にとってもらって食べれるだけ食べるという方法をとっている。

 もちろん、食事内容や量は毎日毎回しっかりと記録されているよ。ハハッ。


「お嬢様、昨日よりも食事の量が多くなっていますね。これなら旦那様からお褒めの言葉をいただけるかと」


「えへへ、そうかな?」


 お父様は常に情報を集めているらしい。

 それは私の食事量という些細なものから、ヨハンお兄様の学校での活動のみならず、王様がお妃様と喧嘩したとか結構重大なものまで様々だ。

 フェルザー家の役割として、情報は大事なもの……らしい。


「ユリアーナ」


「おかえりなしゃい、ませ」


 食後のお茶を出すタイミングのところで、お父様が食堂に入ってきた。

 セバスさんも一緒に入ってきたところを見ると、何かお話があるのかな?


「セバスから報告を受けたが、ペンドラゴンに認められたようだな」


「おししょ、です」


「……そうか」


 なぜか一瞬冷たい空気が流れたけれど、お父様もセバスさんも普通にしている。気のせいかなって思ったら、リーリアが震えていた。


「リーリア、だいじょぶ?」


「は、はい! 申し訳ございません!」


 慌てて謝るリーリアだけど、お父様は通常モードでも怖いからしょうがないよね。

 かよわい女性には刺激?が強すぎると思うのよ。めっちゃイケメンだけど無表情だし。眉間のシワもすごいし。


「それで、どうだった?」


「おししょ、ふわふわ」


 鳥の羽根で作ったローブとか、素晴らしいさわり心地だった。


「あと、かみ、きらきら」


 虹色の髪って、不思議だったなぁ。お父様とお兄様の銀髪も素敵だけど、光の加減で虹色に変化するとか驚きだよね。かなり派手だけど。


「……そうか」


 また空気が冷たくなった気がする。

 近くに立っているリーリアの服が小刻みに震えているのが分かる。

 あれ、もしかしてお父様が聞きたかったのは、そういうことじゃなかったとか?


「まりょくのれんしゅう、ごはんたくさんたべ、ました」


「……そうか」


「ごほうび、たのしみ、です」


 ふわっと空気があたたかくなった。

 やっぱりそういうことか。私からも進捗?を報告する必要があったんだね。



「ユリアーナ、こちらへ」


 リーリアに手伝ってもらって椅子から降りると、お父様のところへと向かう。

 そのまま抱き上げられて、膝抱っこ状態に。


「ふぉ、ごほうび?」


「そうだ。ご褒美だ」


 あたたかくて、大きな手で優しく撫でられる。

 お父様の顔を見ようと上を見上げれば、美しく整った安定の無表情に思わずへらりと笑ってしまう。


「うれしい、だんなしゃま」


 その瞬間。

 窓の外を光が走り、地響きと共に屋敷全体がみしりと揺れた。







 翌日。

 銀色の髪にエメラルドの瞳を持つ美少年、ヨハンお兄様が屋敷に帰ってきた。

 また来るって言ってたけど、学園が休みだからって本当にまた来たよ。びっくりだよ。


「ユリアーナ、体の具合は?」


「げんき、です。おにいしゃま」


「父上は……珍しく属性の違う魔法を発動させたのか?」


 私とお兄様は今、庭の東屋でお茶をしている。

 そこから見える屋敷の「食堂だった」部分は、窓ガラスがすべて割れていて、壁には所々黒く焦げた跡が残っていた。


「びりびりって、まほう」


「雷か? さすがは父上だ。文官でありながら武力だけではなく強い魔力もお持ちである」


 ふむふむと無表情でうなずいたお兄様は、リーリアが私の世話をしようとするのを制して、パウンドケーキを手ずから取り分けてくれる「やさしいお兄ちゃん」だ。

 どうやら嫌われルートは回避しつつあるらしい。ちょっとだけ安心した。


「まほう、すごかったの」


「しかしなぜ、父上はこれほどまでに強い魔法を発動させたのだ? セバス」


 いつの間にいたのか、お兄様の後ろにセバスさんが控えている。

 執事って忍者みたい。鳥のお師匠様にも暗器みたいなもので攻撃していたし。もしやセバスさんって黒げほげほ。


「若様、その、実は……旦那様のことをお嬢様が『旦那様』と呼ばれまして」


「父上を、旦那様と呼んだのか? ユリアーナが?」


 無表情のまま目を少しだけ見開いたお兄様は、真っすぐな目で私を見る。


「ユリアーナ。なぜ、父上と呼ばない?」


「よんでも、いいの?」


「セバス!」


「申し訳ございません! まさか、お嬢様がそのようなことを……」


 いや、正直、その呼びかたはどうだろうって思ってはいたんだよ? でも、皆が旦那様って呼ぶし、それでいいかなって……ついうっかり。そう、うっかりってやつだ。


「幼いとはいえ、貴族の女性が男性に向かって『旦那様』などと……妻が夫に対するような呼び方はよろしくない」


「んぐっ」


 思わずパウンドケーキをのどにつまらせそうになり、慌ててお茶で流し込む。


 え? 夫?

 もしかして、私、お父様のことを「ダーリン(はぁと)」みたいに呼んだってことになっちゃうの!?

 やだ幼妻みたい……いや、幼女だから幼妻という訳ではないし、むしろ幼すぎるだろう落ち着けもちつけユリアーナ! すぅ、はぁ。(深呼吸)


 本当にごめんなさい。お父様。 

 そりゃ自分の(書類上だけでも)娘から突然「旦那様♡」なんて訳の分からない呼び方されたら、びっくりして魔法で雷をおとしちゃったりするよね。

 ごめんよ! ほんとごめんよ!

 ひぇぇ、顔が熱くなっていくのが分かる……恥ずかしい……!!


「ごめ、しゃい」


「んんっ、今度から気をつければいいだろう。父上かお父様と呼ぶのだ」


「あい、おにいしゃま」


 顔を真っ赤にして、うるうる目でお兄様にあやまる私。


 でも、いいのかな? 私がお父様って呼んでも怒られない? お兄様はともかく、お父様からの嫌われルートを回避できたのかは分からないし……。

 本人からOKもらえるかなぁ?


「大丈夫だ。さぁ、これも食べたほうがいい」


「んぐ?」


 お皿に盛られたクッキーを手に取ったお兄様は、私の口へ素早くインさせる。

 うむ。バターがきいてて美味である。


「よし、それでいい」


「んぐぐ?」


 お兄様の手から何度かクッキーを詰め込まれ、もぐもぐ口を動かせば「よく食べた」と頭を撫でられる幼女ユリアーナ。

 お菓子を食べただけで褒められるとは、幼女であり妹であればこそなのか。

 こんな低いハードルのミッションをこなすだけでご褒美をもらえるなんて……これに慣れてしまったら、ただのダメ人間になりそうだよ……。


 誰か塩を……塩対応をプリーズ……!!



お読みいただき、ありがとうございます!


おかげさまで異世界転移転生の恋愛

日間ランキングに載ったようです!

感謝、感謝でございます!

これからも「しりてん」を、よろしくお願いいたしまっする…!


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