プロローグ
見切り発車です!
アラサー幼女が無双(意味深)します!
よろしくお願いします!
初回は2話更新です!
想像してみてほしい。
妻の生んだ子が、自分の子ではなかったら?
そして、その子を置いて他の男と駆け落ちしてしまったら?
想像してみてほしい。
その子供を、家族は、どう扱うのかを。
ただひとつ言えることは、私は若造で考えが甘かったということだろう。
いや、私だけじゃないはずだ。皆がそうであるに違いない。
それでも、誰かの物語について「想像力」を働かすことを疎かにしてはいけなかったんだ。
「う……いたい……」
魔力の暴走。なぜか自分に起こった出来事が一瞬で認識できた。
部屋に閉じ込められ、毎日のように「お前は体が弱いから」と言い続けられていた。それなのに母親と名乗る女は、数日に一度顔を出せば良い方で、ほとんどの時間を放置されていた。
食べ物もあまりもらえず、母親付きの侍女が時々パンや甘いお菓子をくれた。それでなんとか生き延びていた。
「こんな、ことって……」
今なら母親が「私」に何を願っていたのかが分かる。
病弱だと言い張っていたくせに医者を呼ぶわけでもなく放置され続けていたのは、ろくに食べ物を与えず部屋に閉じ込めていたのは……。
「私」に、死んで欲しかったのだろう。
不幸中の幸いだったことは、あの女に「暴力をふるう」という選択肢がなかったことだ。貴族の箱入りお嬢様だったせいか、彼女の中身は夢見がちな少女のままだった。
顔を見せるたびに「わたくしには王子様が迎えにくるの。悪い魔王に囚われたわたくしを愛してくださるの」と言うのが口癖だったから。
そして今日、あの女が侍女に「王子様が迎えにきたから出て行くわ。この部屋はもう開けないでちょうだい」と命令しているのが聞こえた。
必死で止める侍女から鍵を取り上げて去っていく女。泣き崩れる侍女はドアの向こうで「今すぐ誰かを呼んで開けますから!」と叫んでいたけど、私はもうどうでもよくなっていた。
生まれてから数年間、よく分からないまま必死に生きていた私に、生まれて初めてわきあがった感情。それは次第に魔力へと変換され、次々と身体中から溢れ出す。
骨の浮き出た腕を見る。満足に食事をもらっていないせいで、かわいそうなくらい痩せた体。
容姿は鏡を見なくても分かる。私はきっと母親譲りの蜂蜜色の髪と、アメジストのような紫色の瞳をしているのだろう。
顔の作りは悪くないはずだ。あんなクズの見本みたいな母親でも、顔だけは良かったから。ただ二人目である私を産んでから劣化が激しいらしく、事あるごとに「産まなきゃよかった」と言われ続けていたけれど。
魔力の暴走で全身が痛いけれど、その衝撃と痛みのせいで思い出した。
私が前世、ライトノベル作家だったということ。
そして……私は、「前世の私が書いた作品の世界に出てきた無口魔法使いキャラ」にそっくりだということを。
お読みいただき、ありがとうございました!