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ちょっと不思議な物語

常連客

作者: 秋野 木星

銘尾 友朗さん主催の「春センチメンタル企画」参加作品です。

 川土手に並ぶ満開の桜が、時折吹く風に花びらを散らしている。


「今年も来てくれたのね。」

「君に会いにね。」


桜祭りの赤い提灯(ちょうちん)が、彼の青白い顔をピンクに染める。


園子(そのこ)は手元のたこ焼きを手早くひっくり返しながら、チラチラと顔をあげて彼の存在を確かめる。


あちこちから漂ってくる屋台の食べ物の匂いに、たこ焼きが焼ける湯気が混じり合う。


彼のお腹がぐう~と鳴る音がした。


「ふふっ、もうすぐ焼けますよ。」


千枚通しに三つずつたこ焼きを通しながら、木の匂いのするフネに並べていく。

たっぷりとソースを塗って、鰹節と青のりもふりかけた。


園子の手馴れた所作に、彼は感心して目を注いでいた。


「これを。」


園子に日記を渡し、たこ焼きを手にすると、彼は銀色のタイムマシンに乗り込んだ。


近くを行き交う人は誰も彼の存在に気づかない。


毎年やって来る不思議な客。


たこ焼きのお代はいつも未来の園子が書いた日記だ。


日記の中に彼の影が見えるようになって、園子は先を読むのを躊躇するようになった。


彼と園子はどんな関係なのだろう?


この日記の終わりは来るのだろうか?


ちらほらと舞い散る桜の花びらをぼんやりと眺めながら、園子は気弱に心を揺らしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 未来の日記ですか。 読みたいかもしれませんが、怖いものもありますね。 どうして彼が園子さんの日記を持って来るのかが不思議です。 日記を手にすることができるくらい近い人なのでしょうけど。 内…
[良い点] 雰囲気がすごく好きです! たこ焼き食べたくなりました(*´﹃`*) ロマンチックなSFですね。 こういうの大好きです!ε-(*≧m≦*) タイムマシンでやってくる彼は誰なのか。 日記に…
[一言] たこ焼きの匂いが感じられて、思わずお腹が空いてしまいました。 桜の時期にだけ現れる不思議な彼。青白いのは未来人の特徴なのか、それとも彼自身の特徴なのか。どうして未来の日記をくれるのか。この…
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