英雄を守る悪魔~旅はこうして始まる~
英雄の扱いがぞんざいすぎる夢を見ていたら、突如現れた悪魔のお話しです。
世界を救った英雄。英雄は、強大な帝国から国を守った。多くの犠牲を払いながら……生み出された平和だった。
だけど、権力者たちは英雄の存在を許さなかった。都合が悪いのだ。奴らがいれば自分たちの支配に支障がでるからだ。
ゆえに、英雄は権力者たちに殺されようとしていた。
自分が守った存在たちに殺されようとしていた。
そして、私は……それを守る者だ。
英雄に止めを刺そうとした兵士の前に立ちふさがる。
「そこをどけ」
「断る。この地を守った人だ。今度は私が守る番だ」
「ならば、貴様を切るだけだ。やれ」
兵士は剣を振りかざして、私を切ろうとする。
「……」
両手斧を振り下ろし、剣を破壊する。
「なっ……」
そのまま、左足で兵士を蹴って吹き飛ばす。
「大丈夫か」
私は周囲を確認しながら、英雄に声をかける。
「あなたは……?」
「昔から、この星に住む住人。そして……英雄と悪を守る者だ」
「……あ、ありがとう」
「礼はいい。少し待っていろ」
私はそういうと、近くにいる敵へと接敵。両手斧を振り回す。悲鳴を上げる暇もなく上半身と下半身に人を分ける。
後ろを向くと、背後からの攻撃。すぐに相手を見据えて、斜め横に振り下ろして首を切断する。
周囲を確認しながら、攻撃の勢いを生かしながら次の敵の腕を切り落とす。
例え、鎧を着ていても重さと切れ味などを両立した無骨な両手斧の前には無意味だった。
「弓で殺せ」
弓で私を殺そうした奴は、幻影の斧を作り出す技を使い投擲して対応。言うまでもなく、頭に突き刺さり、幻影の斧がなくなれば、傷口から血が噴き出して兵士は出血死する。
力の差は歴然だった。たしかに、人数では相手に勝っているが、それに勝つだけの能力と経験がある。英雄の援軍は、私1人で十分なのだ。
私は、とにかく私と英雄を殺そうとする人たちを殺し続けた。なぜなら、自分の命を懸けて襲ってくるのだ。つまり、負ければ死ぬだけである。
「ひぃいいいい」
そして、1人の兵士が叫び声をあげて逃げ出した。恐怖が伝搬すると、わらわらと蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
私はそいつらを追いかける必要がないので、私は英雄の所へと歩み寄る。
「歩けるか」
私は英雄に手を差し出した。
「は、はい……」
「これから、少し長い旅になる。大丈夫か」
「ええ、大丈夫です……」
英雄の手は小さかった。それもそのはずだ。15になったばかりの女の子。まだ、人生の半分も生きてない子が英雄をやっていたんだ。
大切なものを守りたくて、剣と盾を持ち多くを殺して、自分の心を殺し続けた彼女。それを誰一人として慰めなかった。
誰一人して、守ろうとしなかった。あまりにもひどい話だ。
だから、私はそんな人たちを守るために存在している。
「それじゃあ、行こう」
私は英雄の手を引いて、王都を後にした。
「これから、どこへ行くですか」
英雄は、私を見上げながら不安そうに聞いてきた。
私は、微笑みながらこう言う。
「世界は広いから、いろんな場所を見て歩こう。それで、君が気に入った場所に住むのはだめかな」
「……いいのかな?」
「私は、いいと思う」
そう言って、英雄を抱きしめる。
「……」
英雄は何も言わない。私はしばらく、英雄を抱きしめて……彼女の手を引く。
これからどんな旅があるかわからない。でも、楽しい旅になってほしいと思った。
戦いで失われた心を取り戻す、そんな旅になってほしいと心から願うのであった。
地味な設定
・私
英雄と悪を守る悪魔
身長189㎝。エルフのような尖った耳が特徴。昔から、この星に住んでいる。昔は悪魔とか呼ばれていなかったらしいが、現在は悪魔と呼ばれる存在になっている。
両手斧を振り回して、平気で人を殺しているので本人は悪魔の所業と言われてもしかたがないと思っている。
・英雄
人生の半分も生きていない少女
偵察と称して帝国によって、村を焼き払われる事件に巻き込まれたことがある英雄。その際に、目の前で残虐な行為をされながら母と妹を殺されたのを見るという経験をする。
それが少女の決意となって、多くのものを守りたいという決意に繋がる。清らかな願いは大きな力となり、英雄と呼ばれるほどの力となった。
多くの人の前に立ち、多くの人を導いた英雄。それは絶望的な帝国の侵略から守り、勝ちを奪うほどの力である。しかし、それは多くの協力が得られて手にした力である。彼女は非力であり、1人ではただの少女でしかない英雄である。一応、普通の兵士と1対1で戦えば勝つ実力はあるが、その程度な存在である。
ここまで読んでいただきありがとうございます。