ないものねだり
(ヤッツリ~ン!)
はーい! ゆらゆら、はっじまっるよー!
大きな災害が起きた時に必要なもの。
飲料水、ラジオ、懐中電灯、軍手、カイロ等々。
では、不必要なものは何か。
奴botに「大怖俺」とリプライを送るために費やす時間である。あと千羽鶴。
今回は、日本に地震が多すぎるせいで地味にお馴染みになってしまった「地震こゎぃ><→大怖俺」の流れがどのように誕生したかを書いていこうと思う。こんなん書いたところで誰が得するんだよ、と一瞬思ったが、ちょっと考えたらこの小説自体誰も得しないものなので問題ない。二話、三話と炎上案件を続けざまに書いたせいで、いささか気が滅入ってきてたからこういうのもアリ。
一年間、三百六十五日を通して、地球が突発的に世界各地で(特に日本で)行うゲリラライブが地震である。小さな規模なら「おっ、やってるやってる笑」的な軽いノリでツイッターを覗く程度だが、大規模となると途端に現地会場の余裕はなくなり、オーディエンスの熱狂も凄まじいものとなる。ウェーブが起きたり、余震という名のアンコールに心まで震えたり、なにより常にモッシュをし続けているような状態になるので、建物が壊れたりするし、死人も出たりする。そんな時でも恒例の流れを敢行すべく例のツイートを投稿すると、小規模な地震の時には一緒にヘラヘラしてたくせに、なぜか突然「不謹慎ですよ」とか言ってくる奴が出てきたりする。これは偏見だが、そういう奴に限ってツイッター上では「◯◯住みの皆さんの無事を祈って~」とかのたまうくせに、募金したり物資を送ったりといった具体的な支援は一切しない。震度で態度を変えるなよ。こっちにあーだこーだ言う前に被災地の方々を心配したら良いんじゃないの。奴botは奴botで、しょーもないツイートをする役目があるんですけど。大丈夫? 怖くないよ? 心配のツイートするだけならタダだからね? そんな気持ちになる。
もはや定期イベントの様になっている、ブスと出会い厨のかけ合いによる地震速報ツイートだが、調べてみると、最古の投稿は二〇一五年三月二十三日だった。この時はまだ、ツイート内に登場する架空の出会い厨のセリフは「大丈夫? 俺がついてるよ?」となっている。しかしフォロワーとの連携は既に完成されており、リプライ欄にはまったく同じセリフがこれでもかと言わんばかりに並んでいる。キモい。
最古の投稿からしばらく経った同年七月十日に、出会い厨のセリフは「大丈夫? 怖くないよ? 俺がついてるからね?」と改訂され、それ以降、リプライ欄においても定着し、フォロワーによる返信の数や速度も増していった。
しかし、つい先日の二〇一七年七月二十日、いつものように地震が起き、いつものように奴botが投稿した恒例のツイートのリプライ欄に彗星の如く現れた野生の湯婆婆によって、完全に定着したかに思われた「大丈夫? 怖くないよ? 俺がついてるからね?」は「大怖俺」というダイナミックな簡略化を遂げた。その使い勝手の良さから「大怖俺」は瞬く間に浸透していき、現在では「DKO」というダイナミックさの中にスタイリッシュさを加えたものや「大乱闘」「森鴎外」などまったく意味のわからないものと共に「大根俺」などという突然の野菜アピールまでリプライ欄に溢れるようになってしまった。漢字三文字ならなんでも良いってもんじゃない。でも大怖俺、超画期的。今後どれだけ震度の大きい地震が発生しても、ブレずにツイートしていきたい。心理的にも物理的にも。
以上で「大怖俺」の移り変わりについては終わりだが、二話、三話に比べると文字数が少ないため、地震が起きると毎回決まって奴botのTLに現れるツイートをいくつか適当に紹介していきたい。
まず一つ目は、ヘッドフォンを装着し、鏡餅とヒキガエルをかけ合わせたような容姿をしている女が「みんな地震大丈夫?」と、すっとぼけた表情の自撮りと共に注意喚起を促している画像である。ここは地震大国日本。今後、国内全土を襲う大災害か、北からの発射物によって日本が粉々にならない限りは、ほぼ永久的にネタにされ続けるであろうツイートだ。彼女に敬意を表したい。
二つ目は、某声優が地震による胸部の揺れを否定しているツイートである。一つ目の鏡餅はもはやただの面白画像と化しているが、こちらは本人によるオリジナルのツイートがRTでTLに流れてくる。本日もお疲れ様です、という気持ちになる。彼女に敬意を表したい。
そして三つ目、これは地震とまったく関係のないツイートなのだが、元大阪府知事であった男性のアカウントで、彼の娘のイタズラによって投稿されたと思われる女児向けアニメのタイトルがなぜかTLに流れてくることがある。これをRTしている人は相当冷静さを欠いているか、プリティでキュアキュアな魔法少女に助けてもらいたい一心で拡散しているのだろう。どちらにせよ、大規模な地震が起きたら真っ先に死ぬタイプだと思う。第四話はこれで終わり。
気が向いたらまた書きます