第2話
工房の中は物が多く、一言で言えば雑然としていた。部屋の外周は試料や試薬の詰め込まれた棚、足元は歩く場所を残して何かのアイデアや設計書の束が山をなしている。
「さてと…何を創るかな」
俺は紙束の山を崩さないように歩きながら、山のてっぺんの紙を数枚手に取り工房の中心にある作業机に並べて置いて顎を摩る。
「そう言や依頼書が来てたっけね、クルト~!依頼書何処に有るんだ~?」
『ドアのポストに入ってる!』
クルトに尋ねるとそう返ってきたので、机からドアに振り返ると茶色い封筒がドアに取り付けてある書類ポストに入っていた。
「あれか、《来たれ》」
軽く意識を封筒に集中して鍵言を唱えれば、封筒がポストから飛び出し作業机の中心にフワリと着地した。
「内容は…強壮剤…依頼人は、アルガス…ああ、アルガス爺さんか」
アルガスはウチから一番近い村の鍛冶屋を営んでいる爺さんだ。依頼書には、最近農具の依頼が多く疲れが気になってきたので強壮剤を5本ほど作って欲しいと書いてあった。
「爺さんもう70越えてっからな~あんまり効き目が強いとポックリ逝っちまうから、子供でも飲める位のにしておくか」