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夢から覚めたとき

作者: 門外不出

「おはようございます、宮内さん。」

 私は呼びかけられ、眠りから覚めた。もう思い出せないが、何だか楽しい夢を見ていた。

「おはようございます。」

 そう答えてから、呼びかけられた声に全く聞き覚えが無いことに思い当たった。私は急いで眼を開けた。私は薄暗い部屋にいるようで、知らない人が立っていた。性別はわからなかった。

「あなたは誰ですか? どうしてそこにいるんですか?」

「もちろん説明しますが、その前に確認させてください。あなたのお名前を言ってもらえますか?」

「私の名前? 宮内義政だ。」

「良かった、記憶の損傷は少なそうですね。あなたは冷凍睡眠から、今目覚めたところなんですよ。眠る前のことを思い出せますか?」

 そう言われて思い出してみた。…そうだ、確かに私は30代半ばで原因不明の致命的な心臓病になり、未来の可能性を信じて当時始まったばかりの冷凍睡眠のテストに治験者として参加したのだった。

「思い出しました! そうか、私は無事に解凍されたんですね。治療法は見つかったんですよね?」

「まずは、ようこそ未来へ。ええ、治療法は見つかりました。結果的に判明したのですが、冷凍すること自体が治療方法だったんです。あなたと同じ病気で冷凍睡眠に入っていた方の制御装置が故障して、その方は予期せぬ解凍となりました。その時点では残念ながら原因も治療法も見つかっていなかったのですが。」

「その人はどうなったんです?」

「何も治療はしていないのに、病状の進行は止まっていました。」

「何もしていないのに?」

「原因はトリパノソーマ科に分類される寄生虫でした。寄生虫は肺静脈にいてそこで排泄物を、人間に対しては毒素になるものを排出して心筋を徐々に壊死させていたんです。心臓ばかり探していたのでずっと見つけられませんでした。その方の脳血栓の緊急手術を行った時に、血栓部から寄生虫の死骸が見つかったのです。それで心臓以外も調べてみたら、肺静脈の肺胞に近い部分に炎症反応が残っていました。死骸の一部が血管壁に残っている箇所もあったので、ようやくわかったのです。血管壁に自分の身体の一部を打ち込んで、血流の中で固定していたのです。」

「肺にいた?」

「そうです。心臓ではなく肺にいました。遺伝子レベルで解析しましたが、免疫機構にも識別されない状態で、寄生虫だけを選択的に死滅させる薬品も作れないことが判明しています。要は、人間の細胞に近い反応を示すので、外科的に取り出す以外に方法は無かったのです。ただ、数が多い場合、外科的な手法で根治することは実際には困難です。基本的に治療方法はありませんでした。」

「じゃあ、さっきの冷凍することが治療法っていうのはどういうことですか?」

「…冷凍睡眠から故障で解凍された方の寄生虫は死滅していたのです。冷凍睡眠実施時に人間の細胞には影響が出ないように薬剤が投与されていますが、寄生虫の細胞にはその薬剤は何ら寄与しなかったのです。そのため、冷凍時に寄生虫の細胞は膨張して破壊され、死滅したのです。あなたは冷凍睡眠を選択し、その結果ご自身の未来を勝ち取ったのです。ようこそ、γ暦314年の未来へ。西暦換算なら2359年になります。」

 手間取ったが、計算すると私は329年間眠っていたようだ。世界はどのように変わったのだろう。

「また、明朝回診に来ます。では、お休みなさい。」

 そう言われた後で何やら消しゴムの様な臭いがし、急激な眠気が来て耐え切れず眠ってしまった。


「おはようございます、宮内さん。」

 もうこの声に聞き覚えはあった。振り返ると20代前半くらいの中性的な人が微笑みながら立っていた。

「おはようございます。あなたを何とお呼びすればよろしいでしょうか?」

「ああ、すみません。自己紹介をしていませんでしたね。何せそんなことが必要になることはめったに無いものですから。私は主治医のユーリと申します。」

「ユーリ先生と呼べばいいですか?」

「先生は不要なので、ユーリでいいです。これから徐々に慣れていくと思いますが、現代では敬称といわれていたものはありません。個人の呼び名で呼べばいいのです。それで不快に思う人はいませんから。」

「通称? 名字や名前は無いんですか?」

「ありません。そういった関係性は、あまり意味がありませんから。呼ばれたい名を自分で選択しているだけです。」

「名前につけなくてもわかる? どうやってです?」

「そういったことの説明は私ではなく、専門家を呼んでありますので彼女に聞いてください。リンさん、後はお願いします。」

 ユーリがそういうと部屋の壁の一角が開き、中学生くらいの子が入ってきた。名前からすると女の子なのだろうか、見た目ではよくわからなかった。その子が入ってくるのと同時にユーリは会釈をして部屋から出て行った。

「初めまして、宮内さん。わたしはリンです。精神疾患が専門です。誤解の無いように言っておきますが、あなたが精神疾患という事ではもちろんありません。冷凍睡眠から戻られた方に、適応方法について説明するように指示されているのです。」

「指示って誰からですか?」

「世界の運営機関からです。」

「運営機関? 政府とか何とかのことですか?」

「あなたが眠っている間に世界は変わりました。重要な意思決定だけは人間がしていますが、それ以外はγ(ガンマ)が行っています。立法、行政、司法の全てです、まあそれほどありませんがね。人間が行うよりも早くて正確に、適切に処理していますよ。」

「γ?」

「ええ。世界規模で分散配置され統合処理をしていたコンピュータ群の名称です。今は非常に小さな規模になっていますが…。わたしはγから指示を受けてここに来ました。冷凍睡眠から戻ってこられた方には質問されるのであらかじめ答えておきますが、わたしの年齢は44歳です。現代では成長ホルモンの分泌を極力遅らせています。二次性徴の発現前に生殖腺を摘出してホルモン分泌をさせないようにし、いわゆる大人の身体になることはありません。身体は子どものままの状態を極力継続させることで、現在の平均年齢は180歳になりました。」

 私はさっきから気になっていたことをリンに聞いた

「時々私じゃなくって、私の周りを見ていますよね? 何を見ているんですか?」

「えっ? ああ、それはあなたの関連情報や、γからの助言を見ているんですよ。」

 私は周りを見渡したが、そんなものはどこにもなかった。そういえば、この部屋には医療器具やモニターも、それにTVも何も無かった。

「何もありませんよ?」

「ええ、それに関連することで私はここに来たのです。あなたに手術を受けてもらわないと、この世界で生きていくことは難しいのですよ。」

「手術? 何で?」

「先ほどの話に関連しますが、わたしたちは全員手術を受けています。眼球内にある水晶体をES(Eye Screen)に置き換えています。それで必要な情報が視野に投影されるようになります。」

 そう言うとリンは自分の顔の前で手を動かした。

「何しているんですか?」

「あなたにどのように説明すればわかりやすいか、γに相談しているのです。宮内さんが冷凍睡眠に入った時代のもので言うと、タッチスクリーンで端末を操作しているような感じですね。」

「でも、何も無いじゃないですか。」

「わたしのESにはγからの情報なども含めて、いろいろなものが投影されているんですよ。それを操作しているんです。実際にはESがわたしの動きと位置を分析して、操作しているように内容を変えているんです。」

「…私は飛行機が好きだったので知っているんですが、HUDヘッド・アップ・ディスプレイが眼の中にあるようなイメージですか?」

 リンは私の言葉を聞くと、また何か操作しているかのように手を動かした。

「そのようなイメージです。ただ、投影されているものは記号や文字だけではなく、映像も含めてです。だからこそ、ESをつけてもらわないと困るのです。」

「どうして? 情報が見えなくなるだけですよね?」

「ESは外光を受け、網膜側に情報を付加したものを投影しています。焦点合わせは毛様体筋の動きに連動しています。水晶体の厚みを変える代わりに、デジタルズームで映像補正をしています。ESは可視光以外の領域も可視化してくれますから、照明というものは無くなりました。情報機器と呼ばれていたものも無くなりました。必要ならγからESに投影されますから。」

「本当に全員ESをつけているんですか? 子どもにも?」

「手術は眼球の成長がある終わってから行います。適用できない子ども達は、外装式のESをつけています。…えー、メガネといえば分かりますか?」

「ああ、メガネがESになっているんですか? それでもいいならどうして手術してまで眼球内にESを入れるのですか?」

「外装式では視線の向きの認知が難しく、焦点距離の調整もできないのです。ESと目線の向きが異なる場合があり、その場合には適切な情報表示ができません。焦点距離は手動でしか調整できないので、基本は固定です。それに周辺環境の影響も受けてしまいますからね。」

「一度外装式を試してみてもいいですか?」

「もちろんいいですよ。どうぞ。」

 同じようなことがあったのだろう。リンはポケットからケースを取り出し、中に入っていたメガネを私に手渡した。見た目はただのメガネだった。私は掛けてみた。

「うわっ。」

 さっきまでの視界に、いくつもの表示が加わっていた。リンの横には名前や年齢、専門とする分野の名称が浮かんでいた。その中には動画もあり、リンのインタビューの様だった。音声も聞こえてくる。

「こんな風に見えていたんだ。音も聞こえる。」

「そうです。外装式は子ども向けなので音声もフレームから骨伝導で伝えています。ただ、音声は多重化すると人間は識別できなくなるので、ES装着後は必要に応じてヘッドセットなどを使用しています。外装式でも操作はできますよ。視界の中心から外れた左右に、メニューや検索表示があるはずです。今はデフォルトの表示ですが、個人に合わせてカスタマイズもできます。ただ、外装式なので目線だけ動かすと追従できません。顔の位置はそのままで、目線だけ違う方向にしてみてください。」

 私は言われた通りにやってみた。私が見ている方向には何の表示も出ていなかった。目線の方向に顔を動かすと、見ている所を中心に表示がいろいろ出てきた。

「本当だ。メガネじゃ上手くいかないんだ。」

「ええ。ESも最初は外装式で開発されました。でも、目線との不一致や、焦点距離の問題、外部環境の影響を受けることもあって、最終的に今の内装式になりました。内装式なら、いわゆる『メガネが曇る』といったこともありませんからね。」

「すごいな。…でも、これってどうやって動いてるんだ? 電池?」

「電池は内蔵されています。γからの通信波を使って電波方式によるワイヤレス充電を行っています。それはお貸ししますので、ESをいろいろ使ってみてください。また、明日来ますので、それまでに手術を受けるのか否か考えておいてくださいね。」

「ありがとう、リンさん。」

「いいえ、どういたしまして。では、また明日。」

「ああ、また明日。」

 リンは私に会釈すると、部屋から出て行った。部屋は薄暗い状態だったが、ESのおかげで鮮明に見ることができた。

 私は気になっていたことを調べてみた。私が解凍されたこの世界の事を知りたかったのだ。ESには次々と私の知りたかった情報が表示された。

『日本という国は、現在ありません。西暦2044年に、それまでの世界は終わりを迎えました。以後はガンマ暦として、再出発しています。現在、国と呼ばれていた地域分類は無くなりました。現在存在している居住区域は、ここ島根県沖の高島居住区と対岸の三隅居住区のみです。地球上の総人口は約3千人。高島居住区に約千人、三隅居住区に約2千人です。』

 ちょっと待て。私が冷凍睡眠に入る前の世界人口は70億人以上だったはずだぞ。私が眠っていた330年足らずで、一体何があるのだろうか。

『極端な人口減の原因は地球規模のウィルス疾患蔓延によるもので、潜伏期間が長く発症直前にくしゃみや咳による空気感染を引き起こし、発症後は95%の致死率でした。一部の国の関与が疑われていましたが、現在は事実であると認定されています。生物兵器によるもので予期せぬ突然変異もおきたので、彼らが自分達のために用意していたワクチンも効果を発揮できず、罹患後は全員死亡しています。』

 どうして人類は絶滅しなかったんだ? そんな状況で生き延びることは、容易ではないはずだ。

『高島は、日本初の完全隔離自立型BSL4施設として建設されました。本来は周囲に危険を及ぼさないための隔離と自立でしたが、今回の罹災では、その機能のおかげで逆にノアの箱舟となったのです。罹患者の搬送も受け入れ、もちろん蔓延することはありませんでしたが、助けることもできませんでした。この島には、インフラとして日本海海底付近から捕集しているメタンハイドレード火力発電による電力供給があり、γのサブシステムも設置されています。複数の藻類を用いた高循環率の食物製造プラントもあります。排泄物のリサイクルシステムです。世界に存在していた他のBSL4施設はここまで自立できていなかったので、電力か水か食料の不足で維持できなかったのです。ここには50人足らずの研究者しかいませんでしたが、数千個の凍結受精卵と宮内さんを含めて70人近くの冷凍睡眠者がいました。冷凍睡眠者は治療の見込みが発見されなければ解凍できないので、凍結受精卵の人工培養で徐々に人口は増えたのです。彼らは基本的に親子や血縁関係にはありません。彼らの名は自分でつける以外に方法がありません。』

 なぜすぐに人口を増やさないんだ? 全部の受精卵を培養すれば数千人まで人口が増えるじゃないか。そうすればその後もどんどん増える可能性があるのに。

『人口を増やしても支えきれません。ワクチンはできましたが変異する確率が非常に高いので、再び接触すれば今度こそ死滅は免れません。ここの食物製造プラントで支えられる人口は千人程度です。三隅居住区は、三隅発電所2号機がここと同じメタンハイドレード火力発電所に更新された際に新設された、元々は大規模な製造プラントです。ほとんど無料に近い電力料金になったので、それまで採算に合わなかった農産物プラントやミコの生産工場も誘致されました。』

 ミコ? 何だそれ?

『ミコは自立型ロボットの派生系ですが、γを介してESと接続することで人間が意のままに操作可能になっています。いわゆる臨機応変な判断などが必要な現場で使用されています。参考画像を表示します。』

 目の前にスクリーンが現れ、動画が始まった。いろいろなロボットが動いて組み立て作業を行っているようだった。その中の1台だけ他のロボットとは動きが違っていた。私が知っている工事現場の現場監督のようだった。

 あのロボットは何だ?

『あれがミコです。人間が操作している現場監督です。ロボットは事前の指示に従って作業をすることは可能ですが、事態の変化に臨機応変に対応することはできません。人間が指揮監督することで、より効率的に運用できるのです。彼ら監督者の作業状況に画面を切り替えます。』

 そう言われた後、目の前の画像は全く違うものに変わった。ユーリくらいの年恰好の人が椅子に座ってヘッドセットを着けて何やら手足を動かしている。あれで作業をしているのか?

『ESに映像を転送し、現場の音声やミコからのフィードバックも行っています。あそこは彼の自宅の中で、あれは彼の好みに合わせてカスタマイズされた操縦席です。現場にいるミコからの映像や音声、動作へのフィードバックを感じながら作業を行っているのです。彼はいろいろな現場経験が豊富な優秀な技術者です。現場でおきうる一切の危険から離れた安全な場所で作業を行い、必要に応じて操作しているミコを切り替えてあちこちに散らばっている5箇所の工事現場を担当しているのです。』

 ロボットだから危険な場所での作業も問題無しか。さっきの現場は砂漠みたいなところだったが、見慣れない地名だった。あそこはどこだったんだ?

『月で建設中の有人用基地です。チタンなどの鉱物採掘基地がある嵐の大洋西部のマリウスヒルズホールを基点に進捗率15%です。ヒルズホール基地自体は無人運用で、ミコやロボットにより建設は進められています。応答の遅れは約3秒なので、それほど深刻な遅延ではありません。』

 月に基地があるのか。それほどのことができたのに、どうして生物兵器なんかで絶滅するようなことになったんだ。

『ESもミコも、先進国の中でもわずかな国でしか運用されていませんでした。元々2つは先端医療用に開発されたのです。ESは顕微鏡やスキャン画像を併用しながらなどの複雑な手術を容易にするためでした。見ている術野に3Dスキャン画像が合成され、必要なら拡大も容易にできます。ミコは、人間では行い難い超精密な手術を行うために作られました。術者の動作をESの拡大倍率に合わせて、縮減して行うためです。微細手術では20倍まで可能になりました。そして手術室を出ても、ESとミコとγの組み合わせなら、危険を伴う仕事も安全に行うことが可能になりました。宇宙への進出も、わざわざ人間が行く必要が無くなり、安全装置や生命維持装置などの分はペイロード増となりました。』

 いいことばかりじゃないか。それと生物兵器はどうつながるんだ?

『γは世界中で使われていましたが、ESとミコそのものは無制限に輸出されることはなく、γとの接続部分も技術公開を禁じられたのです。悪用すればミコそのものを兵器に転用することも可能だったからですが、やはりそれを考えていたある陣営は、開発運用国ごと手にいれようとしたのです、住んでいる人間を除いて。』

 それで生物兵器だったのか。自分達はワクチンで守って。

『そういう思惑だったようです。結局、生存者は高島の研究者50人足らずだけとなりましたが、ミコを用いることでウィルスとの接触を避けて作業は可能なのが救いでした。ミコが無ければこの島の中だけでしか行動できず、いずれ死滅していたでしょうから。』

 今の状況は?

『三隅居住区は可住可能領域が40%まで広がりました。ミコとロボットで遺体の処分と徹底的な殺菌、密閉化を行い、ドームで覆うことで他の動物の侵入を防ぎました。農産物プラントも稼動を進めており許容人口は2千人強です。一度は汚染されたところなので、慎重に進めているのです。今は少ない人口でより効率的に運用するため、長寿命化による知識と経験の持続を図っています。ロボットもミコも多数使用できますが、まだ多数の人間を支えられるだけの環境は整っていないのです。』

 そんな脆弱な状態なのにどうして月の開発なんて? 月に移住でもするのか。

『月は避難所です。ごく少数の人間以外は、「種」の保存のため凍結受精卵の状態で保管されます。2、3千年はそのままでも維持できます。宇宙へ進出していくのかは彼らが決めるでしょう。』

 凍結受精卵はもう残り少ないんじゃないのか?

『長寿命化で摘出された生殖腺は、必要に応じて成熟させて人工授精を行っています。ある程度分裂増殖した段階で遺伝子検査を行い、将来に亘って健康な個体を選別して凍結しているので、現在1万個程度確保できています。』

 私はどうすればいい? この世界で何か役に立つのか?

『最初の決断はESの装着の可否です。多少不便かもしれませんが、外装式でもこの世界で対応はできます。ただ、ミコを使うのなら外装式は許されていません。』

 ESを装着しても、ミコを使いこなせるかな? 私の知っている事はずっと昔のことだけなんだよ。

『大丈夫ですよ。この世界に新しく生まれてくる者も、最初から何もかも知っているわけではありません。徐々に学んで知識と経験を手に入れることは誰しも同じです。お気の毒ですが、宮内さんは長寿命化手術は既に間に合わないので、推定余命は70年くらいしかありません。以前の世界よりは30年くらい長くなっていますが、今の基準では短命です。』

 70年もあれば十分だよ。数少ない人間の一人として、精一杯人類の復活に向けてがんばるよ。

『ご協力ありがとうございます、もうすぐ来るリンも喜ぶでしょう。』

 もうすぐ来る?

『ええ、もう朝になりました。リンと話をしてから、一度休まれることを推奨します。』

 ありがとう、γ。何だかわくわくしてきたよ。ただ、今は眠りたくないな。眠りから覚めた時に、全部『夢』だったなんてことになりたくないから。


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