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4日目―1 初・国境へ! 

ようやく国境へ行けるよう、話が運びました。

これからが本番という感じです。よろしければご一読を。

 僕の「能力」について検証が行われた、次の日。早速ガルゥさんに、国境へ行く

意思を伝えようと、馬小屋の方へ足を運んだ。


「あっ、ガルゥさーん!おはようございまーす!」

「ようマモル。昨日は眠れたか?」

「えーと、ちょっと寝不足です。あの、話があるんですけど……」

「ああ、昨日の国境へ行くって話か?」

「はい、それです!」

「マモル、お前はいつ行きたい?」

「で、出来れば今すぐにでも、お願いします!」


そこまで話すと、ガルゥさんはにやにやしながら、僕の肩を叩いた。


「うんうん、その心意気大変結構!けど、国境へ行くのは三日後にしてくれねえか?」

「三日後……ですか?」

「ああ。流石に昨日の今日で連れて行くってのは、俺としても気が引けるんでな。

それと、国王もお前が襲撃されたことについて疑問を抱いていてな。今日から

国境の警備を強化して、怪しい奴を片っ端から取り締まることになった。

マモルが行けるようになるには、それからになっちまうなぁ」


もっともな意見に、僕は首を縦に振るしかなかった。


「で、宿題と言っちゃ何だが、それまで国境付近の資料でも読んで、どういう場所

なのか把握しておいてくれ」

「そ、そうですね……そうします」

「ようし!そんなら三日後、またここで会おう!

俺はそろそろ検問の時間なんでな、失礼するぜ」


言うが早いか、ガルゥさんは足早に馬に乗って、隊員さん達を引き連れ

出かけていった。

 その後ろ姿を見送った僕は、取りあえずマルグリットさんに、先程の話を伝えることに。



「良かったじゃないマモル君!なら早速、国境について色々教えておかないとね」

「おぉ?なんだマルグリット、マモルと勉強でもすんのかぁ?」

「違うわよ。マモル君がガルゥ隊長から、国境へ行く許可を頂いたんですって。

だから、国境へ行くための下準備として、あそこの情報を伝えておこうと思って」

「へえー、熱心だなぁマモル!飽きっぽい俺にゃあ真似できねえぜ!」

「そ、そんな大層なことじゃ……あいてっ!」

「おお、わりいわりい!手加減したつもりなんだがな!」


それからというもの、作業の合間にマルグリットさんが付きっきりで、国境付近に

何があるのかを丁寧に指導してくれた。


 一日目・・・国境付近の状況について。

 マルグリットさんが言うには、国境付近は地形的に小高い丘が多く、僕も

その内の一つ、警備隊の皆さんがよく通る場所で発見されたのだという。

それ以外の丘で気絶していたらと思うと、背筋がぞっとする。


 丘が並ぶ地帯を抜け、少し進んだ先に国境を隔てる「関門」が建てられている。

ベルグランデに足を運ぶ人たちは皆、そこで検問を受けてからでないと中へ入れない。

関門というよりは、防壁と言った方が分かりやすいらしい。

 これは、他の国に周囲を囲まれたベルグランデならではの『防衛策』であり

発案者は何代か前の国王様。ちょうど、この大陸の西で大規模なクーデターが起きた

時に建設されたそうだ。


 「関門」が空いている時間は日が落ちるまで。それまでガルゥさん達は、国境を

離れられないのだという。聞いているだけでも厳しい仕事だ。


 二日目・・・主な活動について。

 行商人や交易車に対しては、どんな目的で国を訪れるのかを聞き出し、詳細な

報告書を書かないといけないらしい。その為の部屋も、「関門」には用意されている。


 次に、「関門」が入国を拒否し、不審者と思われる者にはそれなりの処置をしなければ

ならないという。例えば尋問、そうでなくても門前払いを受ける人も少なくないらしい。

 大抵は、密入国や違法交易物(銃器や薬物など)の取引で、見た目で誤解する事はそうそう無い。

けれど、僕が一回くらいはありますよね、と質問をすると、マルグリットさんは苦笑いをした。

おそらく、最低でも一度はそういう事があったんだろう。


 三日目・・・国境の現状について。

 最近、国境付近では怪しい黒マントの一団が現れるとの報告がなされていて、どこの

国の者なのか、あるいは野盗の一団なのかも区別がついていないらしい。


 マルグリットさんが言っていたが、おそらくは「ヴァンエルビア帝国」という

国の関係者ではないかという話だ。僕はこの世界の地理をまったく知らないけれど

エルグランデが周囲の国に囲まれた立地条件であることと、その為に東西南北各所に

「関門」を置いている事は分かった。だからこそ、自分の国と敵対している国には

特別注意を払っておかないといけないだろうことは、何となく理解できた。


 そういえば、気にする程の事でもないんだろうけど、この三日間、なぜか

他人の視線を感じているような感覚に、度々襲われるようなことがあった。

 アメリちゃんと街へ買い出しに行っている時、サイファさんと馬小屋の掃除を

している時、更には、僕が国境についての指導を受けている時にも……。


(あの視線、気のせいだったらいいんだけど)


そう思いつつ、僕は出発に備えて支度をしていた。



 そして、出発前。見送りに来た第三部隊の皆さんと、僕の警護に付いてくれる

マルグリットさんが、ガルゥさん達の隊列に加わる。


「おおー!マモルさん、今日の国境遠征に向けてやる気満々ですねー!」

「ええ。今朝も色々と質問されたわ。教えている私が参っちゃうくらいに」

「あー……ごめんなさい。少しでも分からない所が無いようにと思って……」

「がはは!それだけマモルも楽しみにしてたってことだろうよ!感心するぜ!

で、マモルの警護には誰が付くんだ?」

「私よ。もうガルゥ隊長には、私が保護者役に見られているらしくて……」

「マルグリットも、色々大変だな」

「ご、ごめんなさい!僕が早く国境に行きたいとか言い出すから……」

「謝ることなんかないわ。寧ろ私は、そうやって頑張ろうとする姿勢が見られて

嬉しい位だもの」


僕らが談笑している最中、ガルゥさんの号令が木霊(こだま)する。


「いいかお前達、今日は我が警備隊の新鋭・マモルの初陣だ!

マモルは自ら志願して、今回の警備に同行してくれている!くれぐれも

危ない目に遭わせないようにな!」

「「うおおーーっ!」」

「そしてマモル、お前には南側の国境へついてもらう事になった。

他の隊員やマルグリットに、要らぬ迷惑はかけるんじゃねえぞ!」

「は、はいっ!」

「それでは、出発!」


居残ったジョーンズさん達に手を振りながら、マルグリットさんの操る馬の背に乗り

僕は初めての国境警備へと向かった。


 僕の担当することになった南側の国境は、鬱葱(うっそう)と茂った森林を、丁度切り開いた

途中にあった。間近で見ると、より「関門」の大きさが際立って、まるで国境を(さえぎ)

壁を目の当たりにしているような感覚だった。


「マモル、この門はね、数代前の国王様が長年かけて建造されたものなの。

門の至る所に耐魔構造を施してあって、ちょっとやそっとの術式ではびくともしないのよ!

ね、マルグリット!」

「ええ。本当に、いつ見ても素晴らしい(たたず)まいだわ。」


と、若い女性の隊員さんが話しかけてきた。僕はただただ、感心するばかりで

言葉も出なかった。

 門へ到着すると、早速僕に仕事の用命が下った。


「それじゃあ、私達は行商人用の調書を書いているから、マモル君は個人で訪れた方の

目的聴取をお願い」

「も、もくてきちょうしゅ?」

「何のためにこの国へやって来たのか、そこで待っている方々に聞いて回るの。

怪しいな、と思った方は、悪いけれど門の手前で止めてもらえるかしら。

マモル君にも出来そうな仕事でしょう?」


門の外側を見ると、たしかに列をなして並んでいる人たちが見える。

僕の最初の仕事は、あの人たちからここへ来た目的を聞きに行くことらしい。


「は、はいっ!が、がんばります!」

「良い返事ね。聴取が終わったら、私に言って」


マルグリットさんから紙とペンを渡され、僕は並んでいる列の先頭へ向かった。

一番前で立っていたのは、いかつい顔をして大きな布袋を担いだ人だった。


「あ、あのー……今日はどんなご用で来られたんですか?」

「ん?君、もしかして警備隊の人?」

「はい!今日から国境警備の仕事を手伝うことになって……」

「そうかそうか、大変だろうけどしっかりやるんだよ!」

「は……はいっ!」


そう言うと、その人は快く「交易目的だ」と言って、袋の中身を見せてくれた。

中には、たくさんの穀物や野菜が入っていた。人は見かけによらないものだ。



「ありがとうございました!」


最初の聴取からどの位経っただろう。先頭の人の言葉に元気づけられて

僕は順調に仕事をこなしていた。

 中には、目的は言うものの持ち物は渡さないといった頑固な人もいたが

他の隊員さんが丁寧に事情を伝えると、渋々渡してくれた。


「マモル、よーく聞いておけ。聴取のコツは、いかに相手の不信感を拭い去るかにある。

お前なりにどうしたら、相手の不安を取り払えるか考えてみな」


と、手伝いに来てくれた中年風の男性隊員さんが教えてくれた。

 俄然(がぜん)やる気になってきた僕は、意気揚々と次の人に話を聞く。


「あの!今日はどのようなご用で……」

「あぁん?」


そこに立っていたのは、僕の身長のゆうに三倍はあるであろう、大男の姿だった。

こころなしか、周りにいる人たちが距離を開けて立っているように見える。


「ひ、ひぃい!」

「何だよ、俺に聞く事があって来たんじゃねえのかい?警備隊のおチビさんよ」

「は、は、はいぃ……」

「へっ、チビが更に縮こまってやがる!そんじゃあ答えてやるよ」

「え、え……?」


言うが早いか、大男はどこからか大斧を取り出した。

それを合図として、周りの草陰から数人の男が現れる。


(こ、これってもしかして、野盗……?)


悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らしたように逃げる人たちを横目に、僕は

足が震えて身動きが取れなかった。


「どうしたの、マモル君!」


異変に気づいて門から出て来たマルグリットさん達。しかし、時すでに遅く、僕は

大男の仲間に捕えられてしまった。


「へへっ、警備隊の皆さん方よお!今日という今日はこの門、通らせてもらうぜぇ!

世話になった仲間たちの為にもなあ!」

「うわぁあ!た、助けてぇえ!」

「マモル君!?これじゃあ迂闊(うかつ)に手が出せない……!」

「おい、どうするマルグリット?」

「このままじゃ、マモルが危ないわ!」

「くっ……」


僕が捕えられているせいで、手も足も出せないマルグリットさん達。

そこへ、大男がじりじりと近づいてゆく。


(僕のせいだ……僕がもっと気をつけていれば、こんな事には……)


「おらあぁあ!!」


大男が、手にした斧を振りかざした、まさにその時。

 門の内側から、一発の銃声が響いた。次の瞬間、大男の肩が裂け、そこから

血がどくどくと吹き出す。


「う、うぎゃあああああああああ!」

「お、お頭ぁ!」


目の前で起こったことが何なのか理解できなかったが、これはチャンスだ。

僕は、拘束が緩んだのと同時に、思いっきり仲間の腕を噛んだ。


「ひぎゃっ!?いてて……何すんだてめえ!」

「こら!逃がしてんじゃねえ!」

「げぇっ、しまった!」


そして、全速力でマルグリットさん達のいる方へ走った。


「マモル君!良かった、無事のようね!」

「ご迷惑おかけしました!僕も戦います!」

「おっしゃあ!『国境警備隊』の実力、皆様方にお披露目するとしようか!」


一気に形勢が逆転し、たじろぐ大男たち。

片腕に深手を負った大男は、後ずさりながら指示を出す。


「くそっ、人質が取れりゃあどうにかなると思ったが……お前ら!今日は引き揚げだ!」

「「おう!」」


そう言って、あっさりと森の奥へ姿を消してしまった。



「なんだよ、折角俺達の日頃の成果を見せられると思ったのに……」

「とんだ腰抜けだったわね。図体はでかい割に」

「さあ、事態も落ち着いたことだし、検問の続きをしましょう」


マルグリットさんの一声で、みんなが持ち場へ戻ろうとした、その時。

門の向こうから、一人こちらへ歩み寄ってくる影があった。

 その人は、マントを羽織っていて男女の区別がつかなかったが

真っすぐ僕を見つめているように見えた。


「……しえろ」

「え?」


その人は、何かを呟いているようだった。

そして、僕の目の前まで来ると、突然僕の手を握って


「教えろ!私のこの胸の高鳴りはなんだ!?何故君を見つめる度に体が熱くなる!?」

「えっ?ええええええ!?」

「こんな事……生まれてきて初めてだ。だから教えろ!この感覚の意味を!」

「そ、それは……」


突然の告白に、辺り一帯が静まりかえる。というより、みんな呆気にとられたような

表情をしていた。あのマルグリットさんでさえ。

 その人の問いに、僕は意を決して答える。


「それは……恋、ってやつじゃないかな?」

「こ、こい!?」


僕の言ったことが理解できているのかは定かではなかったが、その人が

マントの奥の顔を真っ赤にして、震える声でそう言ったのは分かった。


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