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☆2日目―2 白昼の戦闘

2日目後編です。

視点が変化しているので、読みづらい部分が多々あると思いますが

ご了承下さい。

 衛が黒装束の一団に囲まれている頃、ジョーンズは、先程の状況を

薪を抱えながら整理していた。


「えぇーとお?マモルが誰かに連れられて、街のはずれまで走っていった……

たしか、手を引いてたのは、見間違いじゃなきゃあアメリだったな」


(んん?おっかしいぞぉ?たしかアメリはまだ、怪我人の世話をしているはず……)


 そこまで考えた所で、ジョーンズは両腕に抱えていた薪を放り捨てた。


「……やべえ!マモルが危ねえ!!」


咄嗟の判断で、勢いよく衛の連れて行かれた方向へ走り出す。

加えて、腰にぶら下げていた通信機から、他の隊員へ連絡を飛ばした。


「こちらジョーンズ!マモルが連れ去られた、至急街はずれの森林へ向かえ!」


程なくして、通信機越しに第三部隊の面々から返事が響く。

ジョーンズは脇目も振らず、指示した場所へ突き進んだ。


「マモル……無事でいてくれよお!」



「ひ、ひぃい……!」

「ふん、主が血相を変えて我らを招集したから、どんな奴かと思ってみれば……

ただの子供ではないか!」


その頃、街外れでは衛が黒装束の五人組に今にも襲われそうになっていた。

 足が震え、その場を動くことも(かな)わない衛は、必死に助けが来る事を

祈るしか為す術が無い。


「ふふっ、さあて、どう料理してやろうか?」

「その首かっ切って、主へ献上(けんじょう)するのも一興だな!」

「お前達、獲物を前にして余裕を見せている場合ではないぞ。

我々は“奴”の確実なる抹殺を命じられているのだからな。全力でかかれ」


(ま、抹殺って、そんな……!)


にじり寄る黒装束達。とうとう衛は、尻餅をついて倒れてしまう。


(ど、どうしよう……あの力が使えれば、何とかなるけど……)


 一度偶然に使えたものが、このタイミングで都合良く使えるわけがないと

衛は(なか)(あきら)めかけていた。だが、相手は待ってはくれない。


「我が主の為――覚悟!」

「うわぁぁああ!」


先程までアメリに化けていた黒装束の一言で、一斉に飛びかかっていく四人。

衛も完全にうずくまって、もはやこれまで、と思われた。が、


「「ぐはぁあっ!!」」


次の瞬間、飛びかかった四人は勢いよく、周囲の木々に(したた)か体を打ちつけていた。


「……あ、あれ?」


衛が目を開け、顔を上げてみると、なぜかあの時発現した力が再び発現し

彼の周囲を薄い障壁(しょうへき)のように覆っている。


「なっ……何だと!?」


驚いたのは、一団のリーダー格である黒装束。

 それもその筈で、よもや容易に仕留められるであろう少年に返り討ちに

遭っているという、異様な光景を目の当たりにしたからだろう。


「こ、これが主の仰っておられた“異能”だというのか!?

信じられん……これ程のものとは!」


(え?な、何であの力が、今……?)


 衛本人ですら、発現した理由を知る由もなかったが、相手が体勢を崩した

今が好機(こうき)とばかりに、立ち上がって一目散に逃げ出した。


「くそっ、“奴”が逃げるぞ!追え!」


始めは何が起こったのか、見当がつかず警戒していた黒装束たちだったが

すぐさま起き上がり、衛を追跡する。


(うわぁあ!こ、このままじゃ追いつかれちゃうよぉ!)


 相手は手練れの暗殺者と思しき集団。中学生の衛が全力疾走しても

すぐに後ろを取られるのが関の山だろう。しかし、この時間稼ぎが

功を奏した。


「マモルーー!どこだぁーー!」

「あ、あの声……ジョーンズ、さん?」


すぐ近くで、自分の名前を呼ぶジョーンズの声が聞こえる。

衛は、声のする方へ走りながら叫んだ。


「ここです!僕はここにいまぁぁす!」

「ちっ、『警備隊』の輩がまだいたとは!」


衛を追跡していた黒装束のうち一人が、腰の短刀に手をかける。

そして、立ち止まり意識を集中し始めた。


『我は影、音もなく()い寄るもの(なり)――“潜行(ハイド)”!』


呪文の詠唱のような、その言葉が聞こえた次の瞬間、衛の背後を

黒装束が捉え、手にした短刀を彼目がけて振り下ろさんとしていた。


「鬼ごっこは終いにしようか、小僧!」

「え!?えぇぇぇぇぇぇぇえ!?」


またもや、絶体絶命の状況に追い込まれた衛だったが……。

 間一髪、草陰から身を乗り出すように大きな影が飛び出し、両者の間に

割って入った。

直後、ガキィン、と金属が触れ合う音が響く。


「ふん!その様子だと生きてるみてえだなあ、マモルぅ!!」

「あぁ……ジョーンズさん!」


まぎれもなく、彼を助けたのはジョーンズその人であった。

 ジョーンズは、なんと素手で短刀の一撃を受け止め、しかも刃物に振れたはずの

右腕はまったくの「無傷」。どんな手品を使ったのだろう。


「くっ……貴様、術式を行使したか!?」

「おいおい、質問するのは俺の方だろう?よくもうちのルーキーを

可愛がってくれたなあ、コラあぁ!!」

「案ずるな、相手は一人!数では負けていない!」


丸太のような太腕を二、三度回して、相手を威嚇するジョーンズ。

それに対して、黒装束の四人組は陣形を組み、彼に相対する。

 しかし、黒装束たちの予想は、脆くも崩れ去った。


『風よ……我が名の元に、(あまね)くすべてを舞い上げん――“突風(ブロウ)”!』


衛たち二人の背後から、呟くような声が聞こえた次の瞬間。

かれらは足元からの強風をその身に受け、天高く舞い上がっていた。

 目の前で起きた突然の出来事に、頭が追いつかず混乱する衛をよそに

ジョーンズはにやりと笑った。


「うぇえ!?な、なにが起こったんですかぁ!」

「へへっ、この術式……早かったなあ、サイファ!」


衛が後ろを振り向くと、そこには、宝石などで装飾された古めかしい杖を

(たずさ)えたサイファが立っていた。


「ふわぁ……なんでこんな厄介事に巻き込まれてる?」

「俺だってさっき気づいたんだ!マモルに訊くしかあるめえよ!」

「え?ぼ、僕ですか?」

「そうだ!マモル、一体全体どうしたってんだ?」

「え、ええと……アメリちゃんに連れられてここまで来たんですけど

アメリちゃんはアメリちゃんじゃなくって、それで……」

「大体のことは把握できたわ、ジョーンズ」


声のした方を向くと、歩み寄ってくるマルグリットとそれを追うように

駆け足で近づいてくる、アメリの姿があった。


「マモルさーーん!お怪我はありませんかーー!」

「大丈夫だよー!力が守ってくれたからー!」

「マモル君、またあの力が?」

「はい、僕もなんで出たのか分からなかったんですけど……」

「がははは!取りあえず、無事で何よりだぜ!」


アメリに手を振りながら、返事をする衛。

 しかしながら、マルグリットは自分の警戒心のなさを

気に病んでいる様子だった。


「ごめんなさいマモル君。私が側にいたなら、危険な目に遭わずに

済んだというのに……隊長失格ね」

「そ、そんな!マルグリットさんが気にする事じゃありませんよ!」

「で?何が「大体分かった」んだ、マルグリット?」

「ここへ向かう途中で、アメリから話を聞いたの。多分、昨日の刺客

だったのよね、マモル君?」

「は、はい!あの黒装束の人の仲間みたいで……」


なるほど、と合点がいったように、マルグリットは一つ頷いた。


「やはり、今日起きた一連の出来事には関連性があるようね。

後でガルゥ隊長の話も聞いておきましょう」


そう言うと、衛を隊舎で休ませておくよう告げてから、まだ私は仕事があるから、と

彼女は足早にその場を去った。


「よおし!これで一丁あがり!

マモル、俺に掴まっていくか?」

「だ、大丈夫です!自分で歩けますから!」

「ボクもご一緒します!万が一、マモルさんに何かあったらボクの責任ですし……」

「い、いや、ついて行ったのは僕の方だから。アメリちゃんは悪くないよ」

「……じゃ、俺はここで」


サイファが先にのそのそと歩き始めてから、それに続くように

衛たちも隊舎へ戻った。気絶した黒装束四人を手土産に。



 その夜。国境から戻ってきたガルゥに、昼間起きた事の一切を告げたマルグリット。

傍らには、衛を含めた第三部隊を引き連れている。

 ガルゥは、最初は驚いた様子を見せていたが、すぐに落ち着きを取り戻して話し始める。


「なるほどな。俺達が討伐しに行った奴らは(おとり)の可能性が高い、と?」

「はい、あくまでも狙いはマモル君、しかも捕える事が目的ではなかったようです」

「ふうむ……そんな事を平気でするような奴は、一人しか思い浮かばねぇな」

「私も、あくまで仮説ですが隊長と同意見かと」


――ヴァンエルビア帝国現国王。二人の脳裏には、はっきりとその名が浮かんでいた。


「逃がしちまったっていう“化ける術式”を使う野郎……居たら吐かせてやったんだがな」

「私達の捕縛した者たちからは、何か聞き出せなかったのですか?」

「へへっ、あちらさんも頑固でねぇ。尋問してみたが何一つ口を滑らせやしねえ。

それどころか、自害する気満々のご様子だった。正直、敬意すら覚えたよ」

「そうですか……」

「だが、少なからず収穫はあった。ご苦労だったなお前達!」

「「はっ!」」


ガルゥの(ねぎら)いの言葉に、その時ばかりは規律正しく一斉に返事をする

第三部隊の面々。衛はその姿を横目に、慌てて同じポーズをとった。

 その後、何か付け加えるように、ガルゥが衛の方を向いて話し出す。


「それと、マモルの力についてもはっきりさせておかねえとな。

明日、朝一で力の検証をする」

「えぇ!?明日の朝ですか?」

「マモル、お前にとっても、いつ今回のような危なっかしい目に遭うか

分からねえ現状、どういう能力か分かっていた方が数段対処しやすくなるだろ?

国王に謁見するのは、その後でも構わんさ」


確かに、と衛は呟きつつ頷いた。


(僕の力……一体どんなものなんだろう。

なんにせよ、元の世界へ戻る為にも生き残らなきゃ――)


「さて、本日はこれにて解散!明日から忙しくなるぞ、よーく休んでおけ!」

「「はっ!」」


こうして、異世界へ突然衛が現れてから、二日目の夜が過ぎていった。


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