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☆閑話 剛堅のバレルド

いよいよ、敵国ヴァンエルビアから幹部クラスの刺客が現れます。

 クロワール王女が提案した『闘技大会』の報せは、あろうことかヴァンエルビア

帝国にも知れ渡っていた。暗雲立ち込める中、城内にはいつものように二つの影が。


「ふふっ、なんだか面白そうなことになってるじゃない、陛下?」

「ふん……確かに、選手として兵を紛れ込ますもよし、大会の喧騒(けんそう)に紛れて

“あれ”を始末するもよし……どちらにしても価値はありそうだ」

「先の襲撃失敗や、エルマとかいう傭兵に逃げられた借りもあるでしょう?

たっぷりとお返しする良い機会ではなくて?」

「ヤオイェン、貴様の言う通りかもしれんな。ならば……」


ヴァンエルビア国王が手をかざすと、扉が開き、そこから五人の豪傑(ごうけつ)が姿を現した。

 血に(まみ)れたかのような、深紅の鎧甲冑に身を包んだ騎士。深緑のローブを

羽織り、両手に魔法陣のような紋様(もんよう)を入れた、いかにも魔術に長けて

いそうな者。一際大柄で、身を守るものは肩から胴にかけて、上半身を覆うように

被せられた妙な形の鎧のみの者。

目深に帽子を被った、闇に溶け込む暗黒色のマントと、腰に付けた二つの

ホルスターが特徴的なガンマン風の者。最後に、派手な色のチャイナ服らしき

装いが目立つ者。

 かれらは国王の前に(ひざまず)くが、既に一人ひとりが相当な修羅場を潜り抜けてきた

手練れであることが、周囲を漂う気配から感じ取れる程であった。


「……久しいなお前達。各地から取って返すのは骨が折れただろう。せめて

今夜だけでも羽を休めるがよい」

「「はっ、陛下」」

「さて、此度(こたび)お前達を集めたのは他でもない。かのベルグランデ王国で開かれることと

なった『闘技大会』に、誰か名乗りを上げる者はいないか?」


国王の申し出に、五人の手練れ達は顔を見合わせる。

そして、暫しの間を置いて各々の意見を述べた。


「――残念ですが、俺としては、そのようなお遊戯に興じる時間が惜しい。いち早く

領土を奪い取り、帝国の威光を示さねばならないので」

「僕は抜けさせて頂きます。元々そういった手合いは、僕の領分ではありませんから」

「あたいもパスね。折角だし街中の奴らを苦しませてやりたいけど、騒がしいのは

苦手なの」

「……(それがし)もだ。静寂こそ我が戦場。そこで獲物を射止めることこそ至高なり」

「ヒヤッハァ!なら俺様が独り占めしちまって良いってことだなぁ!」


勢いよく立ち上がったのは、謎の鎧を着た大男だけだった。

 国王はそれを見て、にやりと口角を上げたように見えた。


「ほう、ではお前に任せるとしよう。我がヴァンエルビアの誇る『狩忌者(しゅごしゃ)』・剛堅の

バレルドよ」

「ギヒヒヒッ!任せておきなせえ陛下!俺様が全員、血祭りにあげてやんよぉ!」


バレルドと呼ばれた男は、豪快な笑い声と共にその場を後にした。


「大丈夫、陛下ぁ?バレルドに任せたらどちらに転ぶか分からないわよぉ?」

「案ずるなヤオイェン。その為に手は打ってある。奴は遊び過ぎるからな」


国王が再び手を上げると、黒装束に身を包んだ兵士が、瞬く間に二十人程姿を見せる。


「くくっ、陛下は相当お冠のようですね」

「ふん。貴様ら、先の失敗に重ねて泥を塗るような真似をしてみろ、我自ら

貴様らに引導を渡してやる。ゆけ!」

「「はっ!」」


ローブを羽織った男の言葉を意に介さず、国王は冷酷非道なまでの命令を

配下へと下した。

 その様子を、さも当たり前のように横目で見やる『狩忌者』の面々。


「待っていろ、“異能”を持つ者よ……今度こそはその命、貰い受けてくれよう!」


ヴァンエルビアの空に赤き月が昇る時、その魔の手が静かに、ベルグランデ王国へと

忍び寄るのであった。


閑話は大体、短く設定しております。

お読み頂きありがとうございました。

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