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なれそめ

 異世界。一言、そう言われて君たちは何を連想する?剣と魔法?それとも貴族や奴隷?冒険者が魔物や竜と戦うファンタジーを想像する人もいるだろう。


 え、オレは?そんなもん全部乗せに決まってんだろ?剣も魔法も学園も貴族も奴隷も獣人モフモフも、冒険者になって殺す覚悟も、魔物や竜も!ついでに勇者と魔王。思いつく限りの素敵要素てんこ盛り全部乗せで、イケメン+チート能力で俺TUEEEEEE!展開とハーレムは欠かせない!力にまかせて誰もが最高の腕力家になれる、欲望のみに生きれる最高の世界。それが俺にとっての異世界だ!


 「ん"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!い"せ"か"い"に"い"き"て"ぇ"よ"ぉ"お"お"お"お"!」


 だから俺は叫ぶ。下校途中に白昼堂々、異世界に行きたいと。チート能力を駆使してハーレムを築いて酒池肉林を楽しみたいと。


 「うるせぇよバカ野郎!」

 「イタイッ!」


 隣に歩いていたモブ男Bが頭を叩いて来た。チクショウこのサル顔風情が、お前なんかラノベや携帯小説でプロローグにだけ出てくるぱっと出のモブの癖に。主人公が異世界に召喚された後なんて回想ですら出てこない馬の糞以下のミジンコ以下。カースト制度が在るならお前だけのために最低のクラスが出来るレベルの癖に。


 「なんだよ、いきなり叫ぶお前が悪いんだろ?」

 「すっ、すんませんやないかいワレ」


 これだから人語を解する類人猿は質が悪い。ちょっと睨んだだけで胸ぐら掴んで来るなよ。ゴリラみたいな体格しやがって。怖くなんかねーよ。ビビって関西弁になったりしねーよ。首しまってるから早く離して下さいなんて思って……く、苦しいです、離して下さいお願いします。なんでもしますから、許して下さい。


 「ったく、アホらしい。早く帰るぞ」

 「ふん、俺様の覇気にブルっちまったか。雑魚め」


 オーケー、冷静になろう。幸い我々はお互いの言葉を理解できる。それは神様が与えてくれた素晴らしい贈り物だ。話し合おう、そのためにも先ずは振りかぶった拳を下ろすんだ、類人猿。人を害する獣は駆逐されるんだよ?オレは君の為にも話し合おうと言っているんだ。これは最終警告だよ?いいか?


 「よし、殴る。目を噛みしめろ」「いや!?どうやっt」


 ひたい、俺様の美しい顔を殴るなんてモンキー風情が舐めた真似をしくさりおってからに。ん?猿がコッチ見て慌ててるぞ?類人猿が、自分の行為がいかに罪深いものか行動を起こして初めて理解出来たみたいだな。ふふふ、しかし謝ってももう遅い。時すでにお寿司。後悔先に立たずだ。


 「あばばば、早く逃げろバカ!」

 「うっせー猿!モブB!お前のカーチャンでーべーそー!」


 うわっ!サル顔のゴリラがこっち来た!あれ?サル顔のゴリラってゴリラじゃね?てかオレの足元光ってね?ってコレはまさか……


 「異世界フラグキタァアアアアアア!」

 「……っバカ!早く逃げろ!なんかヤバイぞ!」


 あーもう、鬱陶しい。お前はこっちくんな!お前と一緒に異世界なんてゴメンだぞ俺は。こういう巻き込まれ系はイケメン&ハーレムとイケメンの親友って相場が決まってんだ。根暗オタクの俺とサル顔ゴリラの組み合わせって誰得なんだよ!帰れ!


 「あーもう!早くコッチ来い!」

 「手を放せ類人猿!お前は生きてちゃいけない人間なんだ!暗黒の世界に帰れぇええ!」

 「くそ!なんで蹴るんだよ!?こいつバカなの?前から思ってたけどバカなのか!?」


 オーレーはー!異世界に行くんだぁあああああああ!気合の咆哮と同時に、突如発情した類人猿を蹴り飛ばし、光の外に出す事に成功する。よし、これで何の憂いもなく異世界に行ける。ざまぁみろ、サル顔が異世界なんて一千光年早いんだよ。


 光が一際強くなり、周りの景色もサル顔も、白いヴェールに阻まれ見えなくなる。それはさながら光の結界のようだ。あぁ、時が見える。そして光が俺の意識までも飲み込んで行く。


 「しまった、光年はキョリだった……」

 「お前ってホントばかぁあああああ!!」


 遠のく喧騒の中で、最後にゴリラのドラミングに似た声が聞こえたが、それはきっと幻聴だろう。糞め、この素晴らしい瞬間にまで割り込んできよってからに。まぁいい、この類人猿ともこれで最期なんだから多めに見てやると……するzzz


 

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