序章
序章
この世には何種もの「人間」がいる。その中で全人口の40%を占めるのは「ヒュム」と呼ばれるその一派である。力を持ったヒュムは自分たち以外の種族を徹底的に排除しようとしている。
そんな世界にリストアという村がある。その村はとても変わっているところ3つある。
ひとつは種族構成。ほとんどの村は人口はヒュム中心だったり、ヒュムしかいない。しかしこの村にはヒュムはほとんどいない。様々な種族が争いごと無く共存しているのだ。
ふたつは村の政治。この村は領主から完全に自立し、一種の『都市』である。政治は村の司祭を中心に成人したものが交代して行っている。
この点から生じることが最大の点である。領主から独立しているということは、自分達のことは自分たちでやらねばならないということである。内政も外交も交易も、そして自衛も。リストアは内陸部にあり、周りはほぼ森である。そんな地形のためからか、知能を持たない魔物が村を襲い、多大なる被害をもたらす。さらにその種族構成からヒュムからの大迫害を受けてしまう。そして実際に半壊滅状態にまで陥った。これがきっかけとなり村の牧師ウィリアムを中心とし立ち上がった村人は村の周りを城壁で囲み、下水を整備した。そしていつ魔物やヒュムが襲ってこないか分からないため、近衛部隊に守らせた。近衛部隊は成人男子だけではなく女性や少年少女から結成された。もう大切な人を失いたくないという気持ちが産んだのだ。この部隊の目的が外敵を撃退すること、指揮をとるのがウィリアム牧師であるということから『ジェネヴィーヴクルセイド』と名付けられた。そしていくつかある戒律の中に最も特徴的なことがある。
《何人も隣人、敵にかかわらず人間を殺すことなかれ》
この戒律はヒュムが攻めてきてもけしてその者を殺してはいけないということである。戦争が起き、死者が出れば敵味方に限らず悲しむ人がいる。その気持ちからこの戒律が生まれたのだ。
これはリストアという村にあるジェネヴィーヴクルセイドを指揮するウィリアム牧師を様々な形で取り巻く少年少女をはじめとする人々の物語である。