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君に月が綺麗ですねと言わせたい。~非リアな彼女たちは、能力者!?ただし、リア充になると無能力者に・・~  作者: 天城


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第2話 5回目の告白の結果

遠くからでも美人だと分かる横顔を、月に照らされている彼女を見て、少しドキリとしながら俺は近づいていく。


左手に広がる海も、今日は自分たちを応援しているかのように、波音がやけに静かだ。


彼女もこちらに気づき、歩み寄ってくる。


~♪ ~♪


近づくにつれ、どこかで聞いたことのある鼻歌が耳に入った。


彼女がこの鼻歌を歌う時は、だいたい機嫌がいい。

今までの告白でも、毎回この鼻歌を歌っていた気がする。


……ということは?


嫌な考えはよそう。


「おーい。今日はだいぶ機嫌が良さそうだな」


今回の告白で重要な“月”が、まだ雲に隠れていないことを確認しながら声をかける。


「そうね。あなたの面白い告白が見られると思うと、気分が良くてね♪」


いたずらっ子みたいな笑顔で笑った彼女を見て、心臓がドキッと跳ねた。


……やっぱり、こうして見ると本当に美人だ。


今の世界では、高校生になっても女性が誰とも結ばれていないのはかなり珍しい。

特に彼女のような美人ならなおさらだ。


本来なら引っ越し先で結ばれていてもおかしくないのに、高校に来た時も能力者登録は継続されたままだった。


強制ではないとはいえ、男性に告白されたら半ば当然のように結ばれる空気のこの世界で、拒否し続けるには相当な胆力がいる。


だから、もしかして自分のために……と思った時期もあった。

でも最近は、自分をキープにしておいて、世間には前向きに恋愛しているように見せつつ、実際には誰とも結ばれないための逃げ道を作っているんじゃないか、なんて最低な考えが浮かんでしまう。


そんな自分が嫌だ。


「じゃあ、早速。今日はどんなことで私を楽しませてくれるのかしら?」


不敵な笑みを浮かべる彼女を見て、内心でほくそ笑む。


覚悟しろよ。

今日こそ、決めてみせる。


俺は懐に入れていた包みを取り出し、彼女に差し出した。


「これは……?」


「前にデパートで眺めてた髪飾り。欲しそうだったから、バイトして買ったんだ」


「……そう」


嬉しいのか嬉しくないのか分からない表情で、彼女は包みを開け、髪飾りを手に取って眺め始めた。


男性だから時給は優遇されているけど、それでも結構高かった。

もう少し喜んでほしかった気もするけど……まあいい。


これが本命じゃない。


「じゃあ、ちょっとこっち見てて」


そう言って、彼女を月に背を向けさせる。


既に月は雲に隠れつつあるが、まだ間に合う。


そういった焦りが錯覚させるのか、異常な速度で月を隠している気がする。


「そういえば、夏目漱石って知ってる?」


「ええ、意外と私色々なことを知っているのよ」


「そっか、じゃあ振り向いてみて」


彼女がゆっくりと振り向いた。


そして――


「今日は、月が綺麗ですね」


「……曇りだけど」


……やっぱり、勢いで言ったけど間に合わなかった。


彼女が振り向こうとした瞬間に雲が完全に月を覆い隠してしまった。


海岸に着いた時から雲が出ていたし、嫌な予感はしていた。

していたけど……。


今日は雲一つないって、お天気キャスター言ってたじゃないか!

ガッツリ曇ってるじゃないか!


「クスクス……」


うなだれる俺を見て、彼女が堪えきれずに肩を震わせる。


「曇りなのに『今日は月が綺麗ですね』って……面白すぎるわ」


恥ずかしさよりも心配になるくらい、お腹を抱えて笑う彼女を見て、胸の奥が少しモヤっとする。


「俺が海岸に来た途端、急に曇り始めたんだ! これは陰謀だ! 毎回、君に告白するたびに何かしらポカが起きるんだ!」


「……っ」


俺の力説を聞いて、彼女はさらに笑いをこらえきれなくなったらしく、呼吸するのも大変そうだ。


確かにポカをやらかす俺も悪い。

でも、毎回こんなふうに笑われると、さすがに少しムッとする。


こうやって、いつも答えをはぐらかされるんだ。


「……で、笑いは収まったか? それで答えは?」


ようやく涙を拭い始めた彼女に、答えを促す。


「そうね。曇ってたから、綺麗だったかは分からないわ。だから次は……見えるところで……クスクス」


また笑い出した彼女を見て、胸のモヤモヤが増す。


変なことを考える前に、今日はここまでにしよう。


「次こそは、成功させてみせるからな!」


「期待してるわ」


「俺は電車で帰るけど……一緒に帰るか?」


「いいえ。他に用があるから、先に帰って」


「そっか。じゃあ、また明日。学校で」


「ええ。また明日」


帰りまで拒否された俺は、すっかりボロボロだった。

足取りも、いつもより重い気がする。


昔は隣だった澪の家も、今は徒歩五分ほど離れている。

普段は一緒に帰るのに、告白の日だけは決まって一人だ。


――――


「えへへ」


悠真からもらった髪飾りを身につけながら、思わず笑みがこぼれる。


「……好きよ。心の底から、ずっと」


背中を丸めて、海岸から道路への階段を上っていく悠真を見送りながら、私はそう呟いた。

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