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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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第99話 グロッセンベルグ防衛戦

 敵襲の報が伝えられたのは、まだ朝靄の残る時刻だった。

 南方のから現れたのは、ヴァルトハイン公爵軍の本体。騎馬と歩兵、荷車と投石機を伴い、五千を超える兵が列をなす。旗印の下には、ユリウスのかつての同胞もいた。


 それを見つめるユリウスは、街の城壁上に立っていた。


「来たか……敵の数は?」


 隣に立つリィナが、目を細める。


「五千二百前後。中央に重装歩兵、左翼に投石機五基。右翼に弓兵と予備兵力。騎馬隊は後方の丘に待機中。……配置が甘いです。罠にかけられます」


 リィナは高性能な視覚センサーを持つ生体ゴーレムである。望遠鏡など不要。地形の傾斜や、敵の陣形の乱れすら即座に読み取る。

 ユリウスは頷くと、街の各部署へ命令を伝える。


「リィナの観測データに基づき迎撃を開始する。サジタリウス、投石機を優先して破壊せよ。オリオン部隊、東門の防衛線へ急行。砦側の通信回線は維持しつつ、最終防衛網の展開を」


 市街地の各区では、住民たちが訓練通りに避難し、職人たちが自ら整備した魔導機関を点検する。動力源は、地下の〈プロメテウス〉から供給される魔素。すでに砲台にも、パワードスーツにも充填は完了している。


 砦に響く低い唸り――それは、魔導錬金砲〈サジタリウス〉が発する魔素圧縮の音。


「照準よし。弾頭、通常式。第一射、撃て」


 雷鳴のような発射音が響き渡った。

 青白い閃光が空を駆け、リィナの観測した座標へ正確に命中する。敵の投石機一基が木端微塵に砕け、爆風と火の手が上がる。


「命中確認。敵隊列、混乱しています。照準を左に五度、次撃を要請します」


 リィナの冷静な報告を受け、次弾が装填される。そこにミリが走ってくる。


「兄貴! 補給路は確保済み。プロメテウスの出力も安定してるよ!」


「ありがとう、ミリ。心強いよ」


 青白い閃光が放たれ、敵の投石機を爆砕した第一射の轟音がまだ残響を引いている中、ユリウスは叫んだ。


「リィナ、行くぞ!」


「了解。〈オリオン〉、出力最大」


 二人の装着するパワードスーツ、PS-01〈オリオン〉が地面を抉るほどの衝撃とともに跳躍する。地上数メートルを滑空するように敵陣の只中へ突入。爆煙と混乱の中を、青と白の残光を引きながら突撃していく。


「貴様……誰だ!?」


 叫ぶ敵将校の声を無視し、ユリウスの右腕から展開された高周波ブレードが閃く。鉄鎧を紙のように裂き、敵の前衛が一人、また一人と倒れていく。

 リィナもまた、拳を突き出すごとに炸裂音を響かせ、敵を吹き飛ばす。強化義肢に内蔵された衝撃術式が、人間の筋力では不可能な打撃を生み出す。


「今だ、第三射!」


 ユリウスの命令を受け、城壁上のサジタリウスが再びその魔素を収束させる。

 だが今度の弾頭は違う。〈武器散布弾〉――鍛冶工房で用意されていた余剰武器を封入し、敵陣に向けて“降らせる”という前代未聞の弾頭だった。


 ドオォン……!


 爆音とともに、空から無数の剣、斧、槍、棍棒が降ってきた。


「な、なんだこれは……!? 雨か、鉄の……」


 驚き、混乱する敵兵たち。その武器は、鍛えられた職人たちの技術がこめられた実用品。倒れた敵の武器を拾い、形振り構わず戦いを続けるユリウスたちを支援する意図があった。

 実際、ユリウスの手にあったハルバードは、敵将の盾を叩き壊した際に過負荷で爆ぜた。

 だが彼は、すぐさま足元に落ちていた大剣を拾い上げ、動きの鈍い敵二人を巻き込むようにして切り払う。


「武器が壊れたら、拾えばいい。選り好みしてる暇はない!」


 次々と敵を薙ぎ払うその姿は、まさに鉄の暴風だった。

 リィナもまた、足元に落ちたハルバードを拾い、三人の敵兵を一閃で薙ぐ。彼女の動きには迷いも躊躇もない。


「この装備、古い型ですが……素材は良い。問題ありません」


 それを見た味方兵の士気が爆発的に上がる。


「俺たちも続けぇぇっ!」


 民兵たちが武器の雨の中から得物を拾い、勇敢にも敵陣に斬り込んでいく。まるで、鉄の神々が地に兵を鍛えるために武器を降らせたかのような光景だった。


 敵軍は、ただの市民によって蹂躙されていると錯覚するほどの混乱に陥った。


 最後の敵将が声を張る。


「退け! 一旦退けぇっ!」


 しかし、時すでに遅し。彼の背後に回り込んだユリウスが、拾った鋼槍を彼の背中に突き刺した。


「――勝利は、我らの鉄と意志の上にある」


 ユリウスたちの勝利で戦いは終わった。



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