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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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第33話 集まる難民とNTRインデックス

 母子を砦に迎え入れてからというもの、噂を聞きつけた人々が次第に集まり始めた。

 最初は数人だった。だが日が経つにつれ、十人、二十人と数は増えていき、やがて砦の周囲には小さな人だかりができるようになる。

 どの顔も疲れ切り、痩せ、寒さと空腹に耐えていた。


「ユリウス様、砦の中だけではもう収まりきりません」


 セシリアが持ってきた記録帳には、既に百を超える名前が並んでいた。


「これじゃ寝る場所も足りないよ」


 ミリも、急ごしらえのテントや小屋の図面を描きながら頭を抱えていた。


「……でも、だからって見捨てるわけにはいかない」


 ユリウスは砦の外を見つめながら静かに言った。

 こうして、彼らの日々は住宅の建設と、生活に必要な道具や食料の生産に明け暮れることになる。

 ミリは連日、工房で釘や建材を鍛え、ユリウスは〈工場〉スキルで簡易の木工所や道具製造機構を次々に立ち上げる。

 リィナは裁縫や調理を通じて住民の生活を支え、セシリアは魔導によって水や暖房を賄い、時に医療の手伝いもした。


「私たちが作るのは、ただの建物じゃない。生きる場所なんだ」


 ユリウスのその言葉が、皆の胸に小さな火を灯す。

 荒野の砦は、静かに、だが確かに人々の希望となっていた。


 ある日砦の一角、洗濯物を干していたリィナが、何かを見つけたようにぴたりと動きを止めた。

 目を細めてじっと遠くを見る。視線の先には、新しくやってきた若い女性たちが、小さな子どもと一緒に畑の作業に加わっている姿があった。


「……点数、78点。年齢は適正、表情も穏やか。料理の手際、動きの無駄が少ない。危険度、中」


 小声でつぶやくリィナの背後から、怪訝そうなセシリアの声が飛ぶ。


「……何をしているの、リィナ?」


「はい、ユリウス様の寝取られ危険指数を計測中です」


「寝取られ……何ですって?」


 セシリアの眉が跳ね上がる。リィナは真剣な顔のまま、洗濯ばさみをくるくる指で回しながら説明を始めた。


「砦に女性が増えましたので、万が一にもユリウス様が誤って心を奪われるリスクを分析しています。これは防衛の一環です」


「どこの誰に何を防衛してるのよ!?」


 セシリアがタオルを振り回して抗議するが、リィナはまったく悪びれない。


「重要なのです。例えば今の女性、料理・子育て・笑顔力に優れる中堅クラス。さしずめ『癒やし系家庭力型』。対応策は“胃袋を先に握る”」


「な、何その謎の分類……!」


「なお、セシリア様は“知性派隠し球型”、ミリ様は“幼馴染ポジ物理攻撃型”ですので、常時警戒レベル中。私は“家事万能型古代兵器枠”で安定圏内にあります」


「勝手に分類しないで!」


「セシリア様、敵を知り己を知れば百戦危うからずといいます。私は常にユリウス様を死守するため――」


 そこまで言って、リィナはふと空を見上げる。


「……ただし、ユリウス様が『こういう普通の幸せ』に惹かれたら、そのときは私は……」


 ほんの少しだけ寂しそうに見えたその顔を、セシリアは見逃さなかった。


「リィナ……あんたって、たまにズルいわよね」


「ええ、基本性能が高いので」


「そういう意味じゃないっての!」


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