表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/213

第22話 魔素変換炉から出来た布

「縫製工場は……やっぱりやめましょう」


 セシリアが言うと、砦の広場にいた全員がうなずいた。


「いくらなんでも、あの布の量はおかしい……。下着からドレスまで量産体制って、戦争でも始める気かよ」


 ミリが顔を引きつらせながら呟く。


「では、魔素変換炉を用い、基礎素材から繊維を再構成してみてはいかがでしょう」


 すっと手を上げたのはリィナだった。いつものように無表情ながらも、わずかに光る瞳には確信がある。


「布って、魔素で作れるものなのか?」


「可能です。アルケストラ帝国では〈セルリア繊維〉という人工繊維が実用化されていました。魔素と植物性構造因子を組み合わせて生成します」


「……なんか、すごそうだな」


 セシリアもミリも目をぱちくりとさせる。


「理論上は、純度の高い魔素があれば問題ありません。ただし、レシピは私の内部データベースに記録されている情報を参考に、現地素材に適応させる必要があります」


「お、おお……わかんないけど、任せるわ、リィナ!」


 ユリウスの合図で、魔素変換炉が再起動される。リィナは手際よく炉に魔素流路を接続し、石版のような制御盤に指を滑らせた。


「材料投入。魔素変換開始。分子構造展開……開始しました」


 光が走り、炉の内部で何かが編まれていくような音が響く。

 十数分後、変換炉から排出されたのは、やわらかな光沢を持つ、真っ白な布だった。


「おぉぉ……」


「すげぇ、ほんとに布になってる!」


 セシリアとミリが駆け寄って触れると、それはまるでシルクのようになめらかで、しかも丈夫だった。


「これは……下着からワンピース、フード付きのコートまで、用途に応じた布地が生成可能です」


「なにその万能ぶり!? 優秀すぎない!?」


 ミリが叫ぶが、リィナはほんの少し、得意げに胸を張っていた。彼女の中のアルケストラ帝国の技術が、いま再び形となったのだ。


「これで、ようやくちゃんとした服が……!」


「……もう、デザインはリィナには任せないけどね」


 セシリアが小声で付け加えたが、誰も聞いてはいなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ