第21話 三人視点リィナのデザイン
【三人それぞれの視点:リィナの服デザイン騒動】
--- セシリア視点 ---
(……ちょっと待って? なにこの布の量……)
セシリアはリィナが描き出したスケッチを覗き込み、絶句していた。リィナは真剣な顔で、淡々と下着と服のデザインを描いていく。その内容たるや、胸元が大きく開き、スリットは太ももどころか腰骨まで到達しそうな、**とても貴族の前では着られない代物**だった。
「リィナ、それ……誰が着る想定なの?」
「私です。自己最適化の一環として、最も評価が高かったデザインを抽出しました」
「評価って、どこの評価基準よ!」
スケッチの片隅にはなぜか「※皇宮舞踏会参加時・男性陣の視線集中率98.4%」と書いてあった。 セシリアは、わなわなと肩を震わせながら、スケッチブックをそっと閉じた。
--- ミリ視点 ---
「ぶっははははは!! なっ、なんだそりゃあ!? 戦う気ゼロじゃねーか!!」
ミリは腹を抱えて笑い転げていた。リィナの描いたデザインは、ドワーフ鍛冶師の常識を遥かにぶち抜いていた。ヒラヒラ、ピタピタ、スケスケ。全部のせだった。
「お、おい兄貴! この子マジで着る気だぞ!? いったいどんな趣味教育してんだよ!」
「してないしてない! 僕じゃない! リィナの中のデータで勝手に……!」
「ハァ~~、たまんねえなこれ。もうちょっと見せてくれ、な?」
「ミリ、やめて。セシリアが怒る」
「怒ってねーよ、もう呆れてんだよ……」
--- リィナ視点 ---
(分析完了。現在の砦には服の在庫ゼロ。対応が必要)
リィナは内蔵されたデータベースを走査し、アルケストラ帝国時代の侍女服デザインを高速で再構築した。意匠性、素材指定、動作補助の考慮。完璧だ。
「ご主人様。こちらが私の着用予定衣装となります。ご確認を」
「お、おう……」
リィナは小首を傾げた。なぜ皆、顔を赤らめたり、笑ったり、困惑したりするのだろう?
帝国時代はこれが標準だったはずだ。視線集中率98.4%。高評価デザインである。
「……まさか、これが時代遅れだったのでしょうか?」
しゅんと肩を落としたリィナを見て、ミリがついに笑い死にしかけた。




