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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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200/213

第200話 波乱の結婚式

 ヴァルトハイン城の大広間。魔導灯がきらめく荘厳な空間で、ユリウスとセシリアの結婚式は盛大に行われていた。

 帝国再興を象徴する政略的な婚姻――のはずなのだが、どう見ても当のセシリアは浮かれまくっている。


「このたびは皆さま、お集まりいただき感謝します! 本日は――私の勝利です!」


 セシリアが堂々と宣言すると、参列者たちは微妙な笑顔を浮かべ、会場にどよめきが広がった。

 ユリウスはその横で「政務優先のはずでは……?」と静かに首を傾げるが、銀髪の花嫁は耳まで真っ赤にしながら照れ笑いしていた。


「いいえ、今日は政務よりも大事な日です。だって、あなたの隣に立てるのですから……」


一方その頃――


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」


 隣の控室でアルの絶叫が響いていた。


「なんで、なんで、お兄ちゃんと結婚してるのが、セシリアちゃんなの!?」


 床に転がってじたばたするアル。

 ミリがため息をつきながら髪を整えてやっている。


「そりゃあんた、妹ポジションだからだよ。政略結婚に妹は入らないんだよ」


 政略でなくとも、妹は兄とは結婚できないとは言わないミリ。

 これで収まってくれるならという淡い期待から、全てを否定するのをやめていた。


「でも、アルだってお兄ちゃんとずっと一緒にいたのにぃぃ!」


 涙をぽろぽろ流しながら、ふと視線がある物に止まる。


――セシリアの予備のウェディングドレス。


 ミリが振り返るより早く、アルはドレスをひっつかんで控室の扉を開け放った。


「お兄ちゃあああああああん!!!!」


 会場に響き渡る声。

 全員の視線が、一斉にバージンロードの先に注がれた。

 淡い茶色の髪をなびかせ、純白のドレスに身を包んだアルが、花嫁その2として登場したのだ。


「お、お兄ちゃん! アルも今から結婚するからねっ!」


「……え?」


「ええええええええええええ!?!?!?!?」


 驚くのはユリウスだけではない。セシリアは目を剥いて、ドレスを握りしめながら震えていた。


「ちょ、ちょっと待ってください!? なんであなたがそれ着てるんですか!?」


「だって! アルはお兄ちゃんが好きだもん! だから結婚するの! 負けないの!」


「落ち着いてアルちゃん! これは政略結婚よ!? 国家運営の一環よ!? そのへん理解して!?」


「国家とか関係ないもん!! 愛だもん!! アルのお兄ちゃんなんだもん!!セシリアちゃんには愛がないって自白したじゃない!!!」


 その一言でセシリアの中で何かが切れる音がした。


「この……この戦争狂ロリゴーレムがあああああああ!!!!」


 大広間に絶叫が響く。どこからか「セカンドバトル開戦!」というミリの茶々も入る。


 当のユリウスはというと――


「……ドレス、似合ってるよ」


 その一言に、アルの顔は一瞬で真っ赤に染まり、ドレスの裾を持ってその場にへたり込んだ。


「うぇぇ……お兄ちゃん……それ……反則ぅ……」


 こうして、グランツァール帝国史上、もっとも波乱に満ちた政略結婚式は、記録的な混沌の中で幕を閉じたのだった。


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