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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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198/213

第198話 言い間違い

 城の執務室を離れ、久しぶりの夕食の時間。

 テーブルにはユリウス、セシリア、ミリ、そしてアルの四人が並んでいた。

 豪華すぎず、だが温かみのある料理が並ぶ、いつもの食卓。だが今夜は、どこか空気が違う。


「ふふふ……♪」


 セシリアはさっきから妙に上機嫌で、口元には絶えず笑みを浮かべている。グラスを持つ手がほのかに震え、頬が赤い。


(……なんかテンションおかしいぞ)


 ユリウスが訝しげに視線を送ると、ミリがすっと顔を寄せてきて、ひそひそ声で耳打ちした。


「兄貴、あいつ……やばくね?」


「やばいって、なにが?」


「なんか……乙女モードっていうか、もう一周回って壊れてるぞ」


 その瞬間、


「ユリウス……これからは、ますます忙しくなりますねぇ」


 セシリアがぽわぽわした表情で声をかけてきた。


「まぁ、政務も増えるだろうしね」


「そうじゃなくて……こ、こ……子作りが忙しくなりますねっ!」


「……えっ」


「…………えええええっ!?」


 グラスを持っていたミリが思いきりお茶を噴き出し、テーブルの向こうのユリウスに直撃。

 アルが


「わぁっ、服が!」


 と慌ててナプキンで拭き取りにかかるが、その横でミリが真っ赤な顔で立ち上がる。


「こらセシリアァァァァ!!」


「は、はいっ!?」


「先に婚約者になったのはあたしだぞ!? なのにっ……あたしだって……戦争が終わるまで、我慢してるのに……! ううっ……ずるいぃぃ……!」


「ま、まってミリ! 私だって本気で口を滑らせただけで!」


「口が滑って子作りって出るかー!?」


 ユリウスはタオルで顔を拭きつつ、気まずく視線をそらす。

 セシリアは手をバタバタさせながら赤面。

 ミリは鼻をすすって怒り泣き。

 アルは一人ナプキンを持って真顔で反復作業。


「お兄ちゃん、またお茶がかかったね……大変だね……」


「う、うん……ありがとうアル」


 和やかな、いや、騒がしいながらも、どこか平和を感じる食卓だった。

 なお、この時ユリウスの中でアルだけ好感度がアップしたことを、セシリアとミリは知らなかった。


 誰にも気づかれず、アルの目がネコ科の猛獣のように光る。


(計画通り……)


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