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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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第19話 セシリアの秘めた願望

 夕暮れの風が荒野をわたる。パン工場からの帰り道、ユリウスとミリとリィナの三人は並んで歩いていた。

 その少し後ろを、セシリアは静かに歩いていた。焼きたてのパンの香りがまだ衣に残っている。砦の外れに生まれたばかりの小さな工房。けれど、あの光景を目にした今――セシリアの心には、確かな手応えがあった。


(グランツァールの威光は、まだ消えてなどいない)


 誰にも明かしていない。けれど、彼女は皇族。かつて魔導と叡智をもって世界を導いたグランツァール皇家の血を引く者。その誇りも、志も、決して失われたわけではなかった。


だが――


(この力があれば……)


 ユリウスのスキル。リィナの存在。ミリの鍛冶技術。今はまだ、荒野の片隅でパンを焼いているだけの工房。けれど、この火はやがて世界を照らす灯となる。


「……ふふっ」


 誰にも聞こえぬように、セシリアは微笑む。


(グランツァールの名を、もう一度高らかに掲げる日が来る。そのために、私は――)


「セシリア、遅れてるぞー!」と前方からミリの声が飛ぶ。


「え? あ……ごめんなさい、今行くわ!」


 セシリアは慌てたように小走りで追いつきながら、ローブの下でそっと拳を握った。


(この場所から始めるのよ。かつての威光を超える、新しい未来を)


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