第17話 遺跡発見
埃っぽい空気と、ひんやりとした冷気が肌をなぞる。パン工房の床下にあった地下通路を、ユリウス、セシリア、ミリの三人はおそるおそる降りていった。
「……階段、長いな。結構、深いぞこれ」
ミリが後ろを気にしつつ呟く。
壁に埋め込まれた古びたランタンがところどころに残っており、セシリアの魔法で灯された光球がそれを照らすたびに、浮かび上がる古代の装飾や、風化しかけた文字が見えた。
「この装飾……古代アルケストラ帝国の様式に間違いないわ」
セシリアの声が少し震えているのは、興奮のせいか、それとも不安のせいか。
やがて通路の先に、鉄の扉が姿を現した。ユリウスが慎重に手を伸ばし、錆びた取っ手を回す。
ギィ……。
重い音と共に扉が開くと、そこには意外にも広い空間が広がっていた。天井まで届く書架、中央に設置された錬金装置、散乱した書類、そしてひときわ大きな机の上には分厚い書物が鎮座していた。
「研究室……?」
ユリウスの声に、セシリアは目を見開いた。
「まさか、本当に……生きたまま残ってるなんて……!」
セシリアは書物のもとに駆け寄り、そっと埃を払い落とす。表紙には、魔素で描かれた封印式がまだかすかに残っていた。
「これは……錬金術の研究日誌。恐らく、ここで魔素変換や他の術式を研究していたんだわ」
「すげぇ……本当に遺跡だったんだな……」
ミリも目を丸くして辺りを見回した。
その研究室には、時の流れから取り残されたような静寂が漂っていた。
しかしその中には、確かに未来へとつながる“知識”が眠っていた。




