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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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第16話 嫉妬の炎で抜ける床

 柔らかな日差しが差し込む工房の中。焼きたてのパンの甘い香りが満ちる空間で、セシリアはふとユリウスの横顔を見つめた。


「本当に……あなたって、すごいのね。パンだけじゃない。工房も、精錬炉も、全部あなたのスキルで」


 素直な賛辞に、ユリウスは少し目を伏せて、困ったように笑った。


「すごいかどうかは分からないけど……僕は、誰かの役に立つものを作りたかっただけなんだ。生まれ持ったスキルが〈工場〉なら、それで誰かの暮らしを少しでも良くできたらって」


 言葉に熱はなかったが、嘘のない思いがそこにはあった。

 ミリはその声に、思わず手に持っていたパンを止めた。


 “誰か”の役に立つ。


 それはきっと、目の前にいるセシリアのことも含まれている。わかってる。でも――。


「……ちょっと、奥見てくる。道具の棚、なんか気になってたから」


 ミリは無理やり笑ってそう言い、二人のそばを離れる。心の中にふと差し込んだ小さな棘。それを自分でも持て余して、ただその場から少し遠ざかりたかった。


 奥の壁際に積まれた道具の棚に向かって歩き出す。視線を落とし、棚の横を通り抜けようとしたその時――


 ぐしゃっ。


「うわっ!?」


 不意に床板が大きく軋み、ミリの足元が崩れた。


「ミリ!?」


 ユリウスとセシリアが慌てて駆け寄る。埃と木くずが舞い上がる中、ミリは何とか片手で棚の端をつかんで、ずり落ちずに済んでいた。


「いってぇ……な、なんだこれ……床の下、空洞になってるぞ?」


 セシリアが小さな光球を灯して、穴の中を照らす。


「……階段……? 地下通路?」


 覗き込むと、そこには確かに、砦の奥深くへと続く、石造りの階段が広がっていた。


「こんなとこ、地図にはなかったぞ……兄貴、これって――」


「……うん。もしかすると……遺跡かもしれない」


 三人は見つめ合い、息を呑む。


 その瞬間、荒野に秘められた謎が、静かに姿を現した。


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