表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/213

第14話 パン工場

「――というわけで、魔素パンは……うん、ちょっと固すぎたね」


 パンとは思えない質感の塊を手に、ユリウスは苦笑する。ミリはそれを床に叩きつけ、鈍い音を響かせた。


「これ、投げたら狼くらい倒せるだろ……兄貴、あたしの歯が死ぬとこだったぞ」


「すまない。焼き方の問題かな……?」


 セシリアは腕を組み、眉をひそめていた。


「魔素の流量が安定してなかったのもあるけど、そもそもパンの作り方を理解してる?」


「パン屋さんに修行に行ったことは……ないね」


「……やっぱり」


 そんなやりとりのなか、ユリウスはふと思い立ち、空を見上げながら呟いた。


「やっぱり【工場】でパン作ろう。ちゃんとしたやつ」


「またでっかいの出すのか?」


「いや、今回は小さめに調整するよ。場所も……砦の中じゃなくて、少し外れた場所にしよう」


 そう言って、三人は砦の外へと足を向けた。


 だが、門を抜けてすぐ――


「……なに、あれ」


 セシリアの足が止まる。その視線の先、砦の影から顔をのぞかせるように、巨大な構造物がそびえていた。金属と石の塔――いや、要塞めいた高炉だった。


「えっ? ああ、あれは僕が最初に試したやつだよ」


 ユリウスがさらりと言うと、セシリアは勢いよく振り向く。


「“試した”って、あれ一つで小国家の設備よ!? あなた、本当に何者……」


「工場スキル持ちだけど……制御難しいんだよね」


「難しいとかのレベルじゃ――!」


 セシリアはこめかみを押さえながら、ユリウスを睨んだ。


「本当に、スキルの使い方には自覚を持って……はぁ……」


「う、うん……反省してる……」


 そんな空気のなか、三人はやや開けた場所――荒野と砦の境の草地にたどり着く。


「ここなら……大丈夫かな。よし、いくよ」


 ユリウスはそっと目を閉じ、地面に手をかざす。


「【工場】、パン工房・小型型式……構築開始」


 風が吹き、魔素が揺らめく。光の輪が広がり、中世風のパン工房が徐々にその姿を現していった。

 レンガ造りの壁、木製の看板。石窯、ミル、作業台……どれも自然で、暖かみのある作りだ。


「うぉ……兄貴、今度はちゃんと“工房”って感じだな」


「うん、今回はサイズ抑えたからね」


 セシリアは呆れたような、でも少し感心したような笑みを浮かべた。


「まったく……とんでもないスキルを持った人に会ってしまったわね」


 その鼻先に、ふわりとパンの香りが漂った。まだ試作の途中だが、今度は――期待できそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ