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外れスキル〈工場〉で追放された兄は、荒野から世界を変える――辺境から始める、もう一つの帝国史――  作者: 工程能力1.33
1章

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第10話 工場見学製鉄所

 翌朝。

 ユリウスとミリは、まだ誰も使ったことのない巨大な製鉄所の正面扉を押し開けた。


 ギギィィ……と重たく軋む音とともに、中からひんやりとした空気が流れ出す。

 昨日ユリウスが魔力を使い切って建てたばかりの構造物。内部は静まり返っており、どこか神殿のような荘厳さがあった。


「……な、なんか……でっけえな……」

「自分で作ったんだけどな。正直、記憶があいまいだ」


 二人は注意深く中を進み、炉のある区画の奥へと向かった。

 すると、巨大な貯蔵庫のような空間の隅で、ミリが何かを見つけて目を見開く。


「……兄貴、これ……!」


 彼女が指さした先には、赤茶けた鉱石の山が積まれていた。

 光を受けて、ところどころに金属質の光沢がきらめく。


「これは……鉄鉱石だな。間違いない。しかも結構な量だ……!」


 ユリウスがしゃがみ込み、手に取った石をじっくり眺める。

 不純物は多いが、十分に精錬可能な品質だった。


「けど……」


 彼は炉の方を振り返り、首をかしげた。


「この高炉、まだ動かしてないんだよな……。魔力も注いでないし、稼働用の人員もいないし」


「つまり、材料だけ作って放置ってわけか。なんて中途半端なスキルだよ……」


 ミリが呆れたように言いながら、鉱石の山に手を当てる。


「でも、これだけあれば、精錬できりゃしばらくは困らねえな。……で、どうすんだ? このデカブツ動かすのか?」


「いや……」


 ユリウスは少し考えたのち、ぽんと手を打った。


「まずは、砦の中に小規模な精錬炉を作ろう。手が届く規模で、俺とお前の手で動かせるやつだ」


「お、いいじゃねぇか。そっちのほうが性に合ってるぜ、兄貴!」


 二人は笑い合い、鉄鉱石の山をひとまず袋に詰めはじめた。

 その後ろで、稼働していない巨大な高炉は、静かに沈黙を守っていた――。


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