システムの復讐~ゲームの世界に転生した俺だが今までの罰が下ってしまいました。~
思いついた設定をとにかく書いてみたかったので短編にしてみました。
くだらなくて短いので暇つぶしにさくっとお読みください。
俺は28歳のゲーム配信者だった。
ある日、近くのコンビニまで晩飯を買いに出かけていた所で突如として突っ込んでくる車に轢かれた。
そして、俺は目覚める。
あたりは暗闇で何一つ見えない、そんな時に頭上から女神の姿をした女が降りて来る。
見た事があるぞ、今、俺がプレイしている「ワールド オブ シェリア」というゲームのチュートリアルに出てくる女神様だ。
どうやら俺はこのゲームの世界に転生してしまった事を悟る。
これからチュートアリアルが始まってシェリアの世界に放り込まれるのだろう。
「ワールド オブ シェリア」は全世界で1億本の販売をほこる超人気ゲームだ。
キャラクターメイクではかなり細かい設定ができ、その可能性は無限大とも言われる。
スキルに関しても、ある程度の質問に答えるとシステムがそれを踏まえた上でランダムにスキルを割り振る為、同じスキルの組み合わせを持ったプレイヤーとは中々出会わない。
通常はソロプレイのゲームだが、大規模イベント時はワールド解放があり全世界のプレイヤーと協力してクエストクリアや攻防戦などがあるのも魅力だ。
数々のゲーム配信をしてきたが今はこのゲームが熱く、配信をするだけで投げ銭を貰え生活ができるほどの人気コンテンツだった。
その中で俺はネタキャラを作り視聴者の笑いをかっさらいながら配信をしていた。
とにかくキャラクターメイクできるゲームはそこからネタにして、プレイも壊滅的なスキルを選んで難易度MAXでプレイというのがお決まりだ。
聞き覚えのある神々しいBGMが流れる中、女神が俺の目の前に降りてきた。
大丈夫だ、いくら俺がネタキャラプレイヤーだとしてもやっているゲームの情報くらいは知っている。
キャラクターメイクではああしてこうして、女神からの質問にはこう答えて……と頭の中を巡らせる。
そして、女神が降り立つとニコリと微笑まれた。と思った瞬間、また俺の意識は飛んだ。
目覚めると辺りを森に囲まれた小屋の中だった。
あれ?チュートリアルは?と焦るが、直ぐに自分のいる場所の確認をする。
辺りを見回すと、この場所にも覚えがあった、ゲーム開始時に主人公が目覚める場所だ。
ここから剣と魔法の世界が始まるのだ!!
しかし、急激な不安が俺を襲っていた。目を開けた瞬間に少し映った緑色の物。
俺は自分の手を前に出して見ると人間の時よりも細い緑色の腕と爪が鋭く伸びている手を見る。
そして、その態勢でいるとピンク色の毛がファサファサと自分の視界に入った。
まさか、まさか?!
俺は顎の辺りを撫でて見ると不安は確信へと変わっていく。
腹、足を見ても緑みどり。腰にボロの布を纏っているだけの姿。
この部屋の隅に鏡があるはずだ、そう思い出し探すとゲーム通り置いてある。
俺は鏡の前に立って確認した。
そこには全身緑でピンク色ツインテールの痩せ型ゴブリンが立っている。
更には俺の拘りだったダンディなお髭にアホ毛じゃつまらないと言って装飾したアホ花が一輪、頭に挿さっていた。
最悪だ。
何て悪い冗談だろうか、今までネタキャラを生み出して、世の中の視聴者の笑い者にしてきた罰なのだろうか。
それにしてはあんまりだ、転生といえば一般的に最強チートもらって俺ツエーをする時だろうがっ!
俺は心の中で叫ぶ。
そして、まだ確認しないといけない大事な事を思い出す。
そうだ、スキルだ、スキルを見なければ。
俺は恐る恐る心の中で「ステータス画面」と呟く。
すると思った通り目の前にステータス画面が展開してくれた。
Lv1、力1、知能1……。
Lv1で良かった。これならまだポイント割り振りでなんとかできるかもしれない。
しかし問題はスキルだ。スキルは初期割り振りからの派生で覚えていく物で、アクティヴスキルとパッシヴスキルがある。
俺は恐る恐るステータス画面を横にすると、アクティヴスキル「料理」、パッシヴスキル「威嚇する光」と書かれていた。
ゲームのまんまじゃないか。
俺はこのゲームで料理系統のスキルを極めて配信を行っていた。
だって面白いじゃないか、緑色のゴブリンが器用に料理しているなんて、しかも、ピンクツインテールの髭もじゃときたものだ。
そしてこの一輪咲いた花には「威嚇する光」を仕込まれていて定期的に光る。
効果は周囲の自分よりLvの低いモンスターを近寄らせないようにしてくれる事だが俺は料理中にむやみやたらに光る花が面白い、ただそれだけで気にいっていた。
絶望を感じている所で、この先の進行を思い出す。
確かこの小屋の扉を出たら、主人公の育ての親と名乗る老婆が現れる。
その時にモンスターが襲ってきて戦闘になるはずだ。
俺はステータス画面の「アイテム」の欄を見ると、そこには「包丁」と「ピンクのエプロン」という地獄のような文字が書かれていた。
それでも仕方なしに装備をする。初めての戦闘だ、裸よりかはましだろう。
ああ、そしてもう一つ覚悟しなければいけない。ステータス画面で見えたあの文字を。
しばらくしてから、俺はゆっくりと小屋の扉を押して覚悟を決める。
すると、こちらに名前を叫びながら近づいてくる老婆の声が聴こえた。
「おーい、ポッコンチーニ、ポッコンチーニ。」
どうやら一生をこの名前で過ごすしかないようだ。
ボッコンチーニは、イタリア南部で伝統的に作られるモッツァレラチーズの一種で、一口大にカットされたものです。
今回はそれを少しもじりました。