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サムシングなジョン・レノン

※前に連載していた『ビートルズが好きだ!』から再編集をして改めての連載『ビートルズの夢』に投稿します。2019年8月6日の作品です。ジョン・レノンとポール・マッカートニーの会話は想像で書きましたが、ジョンとポールのコメントは本物のコメントになります。




☆☆☆☆☆☆☆☆



『ビートルズを夢』


ジョンは教会の広場で演奏をしているのを忘れたわけじゃないはずだと思いたい。歌っている歌詞をデタラメに歌いまくり、シャウトばかりして、卑猥な歌詞をまぶし始めてきた。


ジョンとポールが出会った1957年7月6日だ。


あの日こそ、本当の意味で世界が変わった日だ。

 

観客席の男子たちはジョンのエロティックな歌詞を聴いて含み笑いを浮かべていた。女子たちは怒りの形相や、赤らめた顔をして腕を組んでいた。

 

ジョンは「カム・ゴー・ウィズ・ミー」の中で「♪僕に着いて来いよ~♪ 一緒に刑務所に入ろうぜ〜♪」と歌詞を変えたり、もっと下ネタを入れたエロスチックな際どい歌詞や、ジョークを強く混ぜ込んできた。


「アイツは何なんだよ?! 歌詞が違うよな??? こんな歌詞じゃなかったよな?」と15歳のポール・マッカートニーはジョンの歌がオリジナルとは全く別物な歌になっていくことに目を丸くしていた。ジョンは次々と閃いた言葉で歌っていく。ポールは聞いた事もない歌詞に度肝を抜かれていた。


ポールはジョン・レノンがチューニングの狂ったギターで弾いているのに気付いた。それと見たことのないコードでフレットを押さえている事にも注目した。バンジョー・コードを使用してギターを弾いている謎の違和感にもポールは戸惑っていた。


ポールはジョンの弾く未熟なギターの技術や、演奏する能力よりも、ジョンのパワフルな迫力と圧倒的な存在感に引き込まれて魅力を感じていた。


『魅力的な奴だな。凄い迫力だ』とポールは考えていた。ジョンの圧倒的な迫力とクールに歌う姿を見て完全に心を奪われてしまっていた。


ポールは前列で一際拍手や声援を送っている女性の姿にも目を向けていた。

 

『アイツの母親かな……。シャレた母親だな。アイツの家族が見に来ているんだな』とポールは思いながらミミおばさんとジュリアを黙って見ていた。


ジョンの声は最初から歌い始めた瞬間から既にジョン・レノンの歌声でオリジナリティを持って歌っていた。安易な模倣や真似に走らずにだ。


ジョンの声が全てを物語っていた。圧倒的に心に深く刻み込むほどの魅力的で素晴らしい声をしていた。どこにもない声だった。唯一無二の声。ジョンの声はポールの魂を、心を本能を激しく揺さぶって衝撃を与えた。


ステージの袖でしゃがみ込んでいる男は汗だくになっていた。

  

華やいだ若い女の子たちは、夏の陽射しを浴びてワンピースを着ていた。


セント・ピーターズ教会でのライヴのメインはチェシャー・ヨーマンリーというバンドだったのだが、ロックンロールやスキッフルを歌うジョンのバンドのクォーリメンの方に誰もが拍手喝采を送っていた。


当時の心境をミミはこう語っている。

 

「私がそこに着いて、私とジュリアと若い女性たちとお茶を飲みながら立ち話をしていると、急に大きなビートが伝わってきたんです。バン、バン、という音が庭の奥の方からしてきました。周りは一斉に奥の方に移動することなりました。若い人たちは出店から離れて、庭の方に走って行ったんですよ。『みんな、どこにいくのかしらね?』と私が言うとジュリアは『バンドが出ているのよ。ミミ、行きましょうよ』と言ったんです」ミミはステージに近づくと心臓を鷲掴みされたように立ち尽くした。


「私はジョンに釘付けになっていました。あまりの驚きに、目の前の光景が信じられませんでしたよ」とミミは懐かしそうに笑っていた。

 

クォーリメンは午後にも再び演奏することになっていた。


運命の出会いは夜の演奏前の休憩時間に訪れた。


クォーリメンは午後7時頃にも、再び演奏をすることになっていて1時間の休憩中にジョンとポールの共通の友人、アイヴァン・ボーンに連れられてやってきたポールがいた。


「ジョン、ちょっといいかい?」とアイヴァン・ボーンは言ってジョン・レノンの肩を叩いた。 


「なんだよ?」


「こちらはポール・マッカートニーだ。ポール、ジョン・レノンだよ」


「やあ、ジョンだ」


後にポールはジョンとの初対面のことについて、こう語っている。


「ジョンは馴れ馴れしく僕の肩を抱きしめたよ。ジョンは酔っていて酒の匂いがしていた。ジョンに差し出されたからね、僕も少しは飲んださ」ポール・マッカートニー


周りにいたのはクォーリメンのメンバー、ピート・ショットン、レン・ギャリー、コリン・ハントン。それにアイヴァン・ボーン、ポール・マッカートニーだ。


皆で、しばらく世間話や音楽について話した後、ポールは我慢が出来なくなったので「ギターを貸してほしいんだ」とジョンに頼んだ。ジョンはポールに手渡すとポールは右利き用のギターを逆さまに持ち直した。

 

「ははははは」とクォーリメンのメンバーの誰かから笑いが起きた。ポールは気にすることなくギターを鳴らしてチューニングを始めた。


バンジョー・コードをギターコードにチューニングし直した時、ジョンの顔が、一瞬、青ざめた。 


ジョンは母親のジュリアと一緒に夜更けまでバンジョー・コードでギターの練習をしていたのだ。ジョンは母親から教わったコードをポールに直された事で、ジュリアを否定されたような気持ちになり、内心ショックを受けていた。


ポールはお構いなしにチューニングを続けていた。


2分後。


ポールは、ともかく、クォーリメンのメンバーは別にして、まず、ジョン・レノンという男に納得させるだけのものを見せつけなければならないと思っていた。


ポールはギターを左利きに持ったまま激しく掻き鳴らして、エディ・コクランの「トゥエンティ・フライト・ロック」の歌詞を完璧に歌いこなし、完璧なギターを披露した。ジョンは黙り込んでポールを見ていた。クォーリメンのメンバーたちは驚きを隠せないで見ていた。

 

次にポールはジーン・ヴィンセントの「ビーパップ・ア・ルーラ」を歌い出した。ポールは熱を帯びた激しい歌い方をしてシャウトをした。ジョンは非常に厳しい視線をポールに向けていたのだが、ジョンの心は雷に打たれたかのように震えていた。

 

ジョンは明らかに自分よりもギターの才能があり、歌詞を間違えずに正確に歌うポールの姿に興奮を隠せないでいた。

 

最初、ジョンは自分よりも年下のポールに対して無視に近い感情があった。今はポールに対して強い脅威を抱いていた。何か絶対的に正しい直感が心の中で生まれた瞬間でもあった。


ポールは自信に溢れていて恍惚の表情を浮かべながら「ビーパップ・ア・ルーラ」に酔いしれていた。ポールもジョンに負けないくらいにロックン・ロールに浸かりきっていたのだ。

 

「トゥエンティ・フライト・ロック」、「ビーパップ・ア・ルーラ」は通好みであるし「ビーパップ・ア・ルーラ」に至ってはロックン・ロールの歴史の中でも重要な曲の1つに挙げられている。(ビートルズの解散後、ジョン・レノンもポール・マッカートニーも、この曲をカヴァーすることになる)。


ポールはピアノの前に座って腕を回すと、今度は得意のリトル・リチャードの名曲「ロング・トール・サリー」を歌い出した。


まさに高音ボイスが天井を突き破りそうだった。ジョンもクォーリメンのメンバーも驚愕したままポールを見ているしかなかった。


「今いる連中より上手い、明らかに実力があり上をいっている。そんな奴をバンドに入れるべきか、止めておくべきなのか、グループとしての向上を取るか、それとも、自分の地位を強化するのか。僕が下した決断は、ポールを仲間に入れてバンドのレベルを上げるということだった。もし、コイツを入れたら扱いに苦労するかもしれない、という考えも頭にあった。でも、ポールは素晴らしかった。仲間にするだけの価値があった。おまけにエルヴィスに似ていたんだ。ようするにだ、僕はポールに惚れたのさ。あの日だ。全てはあの日から始まったんだ」ジョン・レノン

 

「僕と同じ誕生日で、一緒に学校に通っていたアイバンという友人を通して会ったんだ。僕たちは仲良く、ジョンの友達でも会ったんだ。それで村の祭りに行き、アイバンを通してジョンと知り合った。人と話すとき、「趣味は?」みたいな会話をして、それで、「サイクリング」とか、「水泳」とかいう答えになるのが普通だろ。そんな感じで、「僕は作曲が好きで、いくつか書いてみたよ」と言ったんだ。それでみんな「へえ……」みたいな感じになった。無視する感じさ。でもジョンは、「マジ? 俺もだよ!」と言ってきたんだ。それで僕は、「おお、君も曲を書くの? 僕の曲を聞かせてあげるから、君の曲を聞かせてよベイビー!」ってなったんだ。で、彼は僕に、彼の書いたどうしようもない曲を聞かせてくれて、僕も彼に、どうしようもない曲を聞かせたんだ。基本的にはそういう経緯だったよ」ポール・マッカートニー

 

 

 

 

つづく

ありがとうございます。

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