Scaredを聞きながら心のしとねは何処と呟く夜がある
僕が今1番恐れていることは、いつかポール・マッカートニーが死ぬことだ。ポールが死んだら泣きはしないけど絶望はすると思う。ポールの老いっぷりには悲しくて目を伏せたくなる時がある。改めて歳を取るということは残酷なことだと強く実感するし痛感するし痛々しくて嘆きたくもなってしまう。自分の親だけは歳を取らない、絶対に老けないという強い思いや願望が子供にはあるものだ。僕がポール・マッカートニーに抱く感情はこれに近いものがあるかもね。ただ、ポールは反日だからね。ポールに対する思いは、若干、距離がある。
誰しも、いつまでも若くいたいと奮闘する。アンチエイジングをするために高いお金を払って若作りをする人がいるが、はっきり言って無駄だし無意味だと思うね。老いには抗えないし、誰しも歳を重ねてヨボヨボになってしまうからね。あっちこっち体が壊れていき、歯が抜けて、白髪が増えて、目も見えづらくなる。耳が遠くなり、アソコも元気がない。記憶もあやふやになってきて、さっき食べたものが思い出せなくなっている。生老病死。これが人間の悲しい現実であり真実なんだよ。どんなにお金があって老いは治せない。どんなにお金があっても死から逃れる方法、助かる方法はないし死は避けられない。死にゆく運命、それが人間だ。死ぬために生きている運命。僕はビートルズが世界を変えたという言葉を信じない。
話を戻して、現役バリバリの若いポールの姿を知っているだけに今のポールは老体にムチを打って孤軍奮闘をしているようにも見えて、結構、辛いものがある。
ここで、急に、ふと思う。
ひょっとしたらポールは完全燃焼して燃え尽きたいと思っているのではないか? とね。
声が出なくなるまで歌い続けてステージの上で完全に燃え尽きてステージの上で死にたいんだと思ってやしないか? とね。
ポールは深い喪失感を抱えて音楽活動をしてきたとも言える。
『お金はあるし、ビートルズで世界的なミュージシャンとなり名声も得た。だが、どれだけ周りからチヤホヤされて持ち上げられてはいるけれども嘘っぱちに見えるし何かが足りない。どうしても何かが足りない。頑張っても頑張っても何かが足りない。一体何が足りないのだろうか? 何だろうか? そうだ。ジョン・レノンだ。ジョン・レノンが足りない。ジョン・レノンがいない。ジョン・レノンがいないから、何をやっても反響がないので全てが虚しい結果に見えてしまうんだ。誰に向けて音楽をしていけば許されるのだろう?』とも思っているのかもしれない。
ポールは気難しい性格で頑なな心の持ち主であり、気持ちが散漫な時が多くて、なかなか自分の本音を晒さないし語らない人間だ。麻薬のやり過ぎで頭が鈍くなっているしね。
そんな難しい性格のポールに、唯一、ヒョイと簡単にポールの心に入り込めたのがジョン・レノンだったと思うんだよね。
ポールはジョン・レノンに対して依存しているんだと思う。身も心もね。いや、ジョン・レノンを崇拝しているんだとも思う。信仰に近い形でね。
「僕にとってジョン・レノンはエルヴィスだった。ジョンは憧れのヒーローだった。ジョージもリンゴもジョンに憧れていた」とポールは最大級の言葉を言っています。
ポールはジョン・レノンが死んだ後に、たくさんのミュージシャンとコラボレーションをしてきた。
スティービー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、エリック・スチュワート、エルヴィス・コステロ、カニエ・ウェスト等々。
どれも長続きはしない関係に終わってしまっている。ポールのビートルズとしてのプライドの高さ、ポール自身のステータス高さが災いして長続きしてこなかったんだと思う。何よりも新たなパートナーとジョン・レノンを常に比較してばかりいたのではないかとも思う。ジョン・レノンと比べられたら相手はたまったもんじゃないと思う。ポールには、そのつもりがなくても毎回ジョン・レノンと比べてばかりいるから新しいパートナーとの関係が直ぐに冷めるというか、『熱しやすく冷めやすい』ということになってしまう、という事も考えられるかもしれない。
ポールはジョン・レノンを失った事で、葛藤ばかりする日々を送ってきたんじゃないのかな。表向きはショーマンシップに振る舞うけれど、ジョン・レノンという音楽的な最高のパートナーを失った事への深い悔やみと後悔に苛まれているのかもしれない。
ジョン・レノンは悲劇的な死を迎えた事で神格化された面も否定はできない。『本当のジョン・レノンを知っているのは、この僕だ。ジョン自身も神様扱いはされたくないはずだ』とポールは思って、ビートルズ時代の無邪気な姿のジョン・レノンを思い出して欲しいがために、繰り返し繰り返しビートルズをリマスターばかりして販売しているのかもしれない。大人になる前の、独り立ちする前のジョン・レノンに固執して執着している感じにも見えるね。楽しかった時期を懐かしがってばかりいるからポールはビートルズのリマスターを繰り返しているんだ。ジョンの死を利用したりビートルズの栄光にしがみついて金儲けをしているとも言える。ビートルズは過剰に自画自賛をするナルキッソスのバンドだとも言えなくもない。大人になったジョン・レノンが選んだパートナーがオノ・ヨーコだ。つまり大人になったジョンをポールは知らないでいるということなんだ。いつまでも無邪気な頃のジョンに思いを馳せてばかりいるのが今のポールなんだ。
ひょっとしたら、ポールは『ビートルズの思い出の中で生きていたい』とも思っているのかもしれない。老いた姿を隠す老人もいるが、老いた姿をさらけ出す事で『最後まで生き様を見届けてほしい』と思っているのかもしれない。
僕が今1番恐れていることは、いつかポール・マッカートニーが死ぬことだ。ポールが死んだら泣きはしないだろうけど絶望はすると思う。喪失感よりも諦めの感情に支配されそうな予感もある。生きる痛みや生きる苦痛から逃れられないことの諦めかもしれないし、この世に取り残された諦めの悲しみかもしれない。
つづく




