ジョンはジョンに戻りたかった
やはり、僕はジョン・レノンのファンなんだよね。正直に言うとビートルズよりもジョン・レノン個人の方が好きなんだよ。悪いけどポールやジョーシやリンゴには全く全然興味がないんだ。でもね、ポールのソロのアルバムは10枚持っているよ。まあね、これは色々と考えた結果だから仕方ないことなんだけれどもね。もっと踏み込んだ事を言おうかな。『順番が違う』、という事かな。そう順番がね。ひょっとしたら順番が間違ったのかもしれないけれど、それはそれで正しい選択だったなぁと今では凄く思っています。
一体、順番とは何か? それはね、まだ僕がウブでナイーブな子供の時にね、亡くなった母親からプレゼントとして買ってもらったCD、4枚組のアルバム、生誕50周年記念アルバム『LENNON』の事なんだよ。つまり、ビートルズよりも先にジョン・レノンのアルバムを夢中になって朝から晩まで聞いてしまった事が原因なんだよ。当時はこのアルバムが全てだったのでね、全く頭の中にビートルズのビすら浮かんでこなかった。本当にね。物凄く最高のアルバムだったよ。なんせ、4枚組の中にジョン・レノンのソロ・アルバムが全部あるんだからね。ジョンの歴史が分かるアルバム。「ジョンの魂」、「イマジン」、「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」、「マインド・ゲームス」、「心の壁、愛の橋」、「ロックン・ロール」、「ダブルファンタジー」、「ミルク・アンド・ハニー」がね。全部入っているアルバムなんだ。
CDは擦りきれないけど気持ちとしては擦り切れるまで本当に朝から晩まで『LENNON』を聞いていたよ。ビートルズはね、その後の話なんだ。ビートルズは「ジョン・レノンの若き日々を追ってみようかな〜」という気持ちで聞いていました。赤盤、青盤をね。これも亡き母親からプレゼントされました。もちろん、ビートルズはとても素晴らしかったよ。素晴らしかったけれども、ソロのジョン・レノンのヒリヒリするような、限界をぶっ飛ばすような、極めきった迫力に完全にノックアウト状態だったのでね、ビートルズの音楽は逆に幼く聞こえたんだ。若さとエネルギッシュは感じたし、ロックンロールの魅力も感じたよ。だけど、やはりね、ビートルズには幼さを強く感じたね。お子様ランチを食べている感じかな。大人になる前の音楽に聞こえてしまったんだよ。
でもね、解散間際のビートルズの曲、特にホワイトアルバムのジョーシの「ロング・ロング・ロング」とジョンの「ディア・プルーデンス」には、物凄く、かなりドキリとして驚いたよ。ちょっと、ただ事ではない深いメロディーがそこにはあったからね。間違いなく、この2曲はビートルズというよりも、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスンの個人の内面に触れる事ができた初めての曲に聞こえたからなんだ。つまり、二人ともビートルズから離れつつあるという事を表した最初のメロディーとも言える。まあ、これはさ、僕の個人的な解釈、意見なんだけどもね。
もっと考察するとね、「ディア・プルーデンス」はジョンが綺麗な夕暮れの空を見ないで地面に映る自分の影を黙って見つめている様な切ないメロディーを奏でているし、「ロング・ロング・ロング」のジョージは『さよなら』と紙に書いた書き置きをテーブルに残して家を出ようとしたけれども、舌打ちをして、書き置きをひったくってポケットに入れると、結局は仕方なく寝室に戻ってベッドに入るという様な寂しくて孤独なメロディーを奏でている。ホワイトアルバムからビートルズの解散は近付いたからね、ジョンとジョージには、何か感ずるものが働いてこの2曲を書いたんだと思うよ。特別に、この2曲のメロディーを聞くとね、そう感じる。非常に大人っぽい曲。ビートルズの曲じゃないみたいな曲。僕には完全にジョン、ジョージのソロ宣言を告げた曲に聞こえます。
話を戻して、最初にジョン・レノンのソロをドップリと聞いてしまったのでビートルズは幼く見えた、ということなんだと思うよ。
ソロのジョンのスタンスとは、売れるとか売れないとかの次元ではなくて、超越した世界観、愛をテーマにしているのが素晴らしいんだ。
続くよ