4話
ディアーナから離れた場所で1日過ごした後、俺は誰もいなくなった噴水広場に来ていた。俺は仲間だった死体の山を目の前に泣き崩れることしか出来なかった。
「みんな…みんな…!」
俺は泣いた。泣いて泣いて泣き疲れた。日が暮れるまで死体の前にいたが誰一人として姿を見せることはなかった。
日が山に沈み月が出始めた時俺はようやく動くことが出来た。
炊事班が貯めていた薪を死体の山に全て使い。みんなを火葬した。血塗れになっている死体は誰が誰か分からなかったが、明らかに数が足りなかった。恐らく奴隷として連れていかれたやつもいるのだ。
火を見ている間何故か涙が止まらなかった。叫ぶ訳でも無くただひたすら泣いた。そして日が消えたあと残った灰を袋の中に入れて、リーダーが使っていた民家の庭に埋めた。そこに墓石を置いて、大きくなったらいつか飲もうと約束した酒をかけておいた。
「結局飲めなかったな…」
俺は最後の一口を自分で飲み干して、空の瓶を置いていく。
そして、リーダーが管理していた地図やデバイスを回収した。
「リーダー、借りていきます。全てが終わったら帰ってきます。」
次に食料や寝袋を取りにシイラの家に行った。当然2人の姿はない。缶詰やレーションは全て回収した。そしてふたりが大切にしていた宝物をお守りとして持っていくことにした。
「シイラ、ユイ、これ持っていくよ。じゃあまたね。」
誰もいない部屋に向かってそう言う。2人がいた部屋を後にする。
そのあとは敵の兵士が持っていたものを調べた。拳銃と弾、ドッグタグからこの国の兵士だということがわかった。無事だった武装は全部回収した。
物資と僅かな金を持って俺はディアーナを後にした。
駆動騎士があればこれだけの食料でも国境を越えられるはずだ。
とにかく西に、この国から去りたかった。どこに行けばいいかは見当がついている。リーダーと駆動騎士が完成したら行こうと言っていた傭兵の国のリンドルだ。この国に行けば駆動騎士さえあれば仕事にありつけるはずだ。
俺は何も考えずにスラスターを動かしながら西にひたすら進んだ。その間は特に何も感じなかった。泣きすぎて感情がおかしくなってる気がした。
そして国境を越えた翌日、少しだけ休んだ。綺麗な川があったので、降りて水浴びをした。その日はその川から動く気にならなかった。
次の日、俺は簡易テントの中の寝袋で目を覚ます。川が近くにあるせいかいつもより少し冷えた。外に出て顔を洗う。川の水は冷たくて一気に目が覚めた。
ライターで火を起こして温めた缶詰と飯盒炊飯で炊いた少しのご飯を食べる。暖かい食べ物を食べたおかげで体温が戻ってくる。
俺はこれからどうすればいいのだろう。
俺が守りたかったものは全てなくなってしまった。
いや、やることなんて決まっている。
最後の仲間のユカリを取り戻す。
俺はそう決意してコクピットの中に戻る。
目標の街はもう少しだ。