まえを行く人
〇タイトルを変えました。(旧タイトルは、『よくあること』です)
〇内容は、旧タイトルのときと、ほぼおなじです。
(どうすっかなあ……)
学校からの帰り道、レンタルビデオ店に寄ったのがいけなかった。
たまたま出てきた客の男が、自分とおなじ方角に歩いていったのだ。
十六才の高校生である、A(仮名)は思った。
(ふたつ角をまがっても、まだあのおっさんが俺とおなじ道を行くんで、『まさか……』と思った。さらに三回めのわかれみちで、やっぱりおなじ方向に行くんで、『あー、これ、長びくやつだわ』って思ったさ)
ブレザーに手をつっこんで、Aはいらいらとあるいていく。
なにがAをむかむかさせるといって、まえを行く人(中年の男。きっとこの人も帰宅中だ)に、『うわっ。なんだあいつ、ずっとオレのあとつけてきやがる、ストーカーか?』って思われていやしないか。ってことだ。
(だ、れ、がっ、おまえみたいなおっさんのストーカーなんてするかっ)
自分の勝手な被害妄想につっこみまで入れて、Aは歩きつづける。せめて、自然に追い抜くことができればいいのだが。
こっちが歩調をはやくすると、あっちも歩調をはやくする。
かといって、スピードをゆるめて距離をとるのもやるせなく、ではべつのルートに変更するかといえば、そこまで気をつかう道理もない。
(こうなったら……)
Aは走りだした。このいごこちの悪さから、はやく解放されたくて。
走って、徐々に男の背中に近づいて、
包丁で刺して殺した。
※このものがたりはフィクションです。
読んでくれたかた、感想を書いてくださったかた、ありがとうございました。