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真実の向こうへ
<真実の向こうへ>
サクラギは呆然と立ち尽くす中、後方から迫りくる白銀の刃の軌道をスロー再生を見ているような感覚で見つめていた。刃の切っ先が自分の視界より内側に消えていくと、左の胸のあたりに違和感を覚えた。
無意識の内に口から呻き声が漏れる。
「サクラギ君!」
崩れ落ちる視界の中に涙を一杯浮かべた同僚の顔が映る。
「クロキ……」
サクラギは同僚の腕に抱え込まれるように倒れた。
不思議と痛みは感じなかった。ただ、受け入れがたい真実の前に精神力がついていかない。流れる血と共に力が抜けていく。
〈ミサキ……どうやら俺はここまでのようだ……すまない……〉
「どうだ?大切な者を失う感想は?」
威圧的な声が響き渡る。
薄れてゆく意識の中、優しく抱きしめられる感覚があった。共に戦い、助け合ってきた同僚の仄かな香りを感じた。
「ク…ロ……キ……」
最後の力を振り絞り、すぐ目の前にある女の顔を見る。
「……さよなら…サクラギ君……」
サクラギはゆっくりと目を閉じた。深い海の底に沈んでいくような安らぎが全身を包み込んでいった。