あたたかいお味噌汁はいかが?
始めて小説を書きました、難しいですね。
今日もまた一段と雪が降っています。
近頃の夜は特に暗いというのに、舞う雪が耳をもシンと暗くするのです。
窓から望むその景色は、遠い恋仲を思い出させます。
彼とはずいぶん長い付き合いでした。
勉強熱心。物を学び人を知ろうとする、とても優しい人。
初めて肌を重ねた夜も、今日みたいな白んだ化粧をしていました。
彼が永い眠りについた夜も、そうでした。
なにも感じることができず、とても虚しかった。
今にして思えば心が凍っていたのだと実感させられます。
温もりが、熱がなければ、人はそれが冷たいものだと感じられないのだと。
そしてその逆もまた然り。
あの温もりはとても痛くて、だからこそ忘れられない。
物思いに耽りながら大根の支度をして、取っておいたお出汁に入れ火にかけます。沸騰しないようにじんわりと。
ある程度火が通ったらお揚げさんも入れて、味噌を溶いていきます。何があっても変わらない、いつものお味噌汁。
寒い思いをさせないためにも、まずは汁物から。
カンカン、と。外から階段の音が忙しく聴こえてきました。雪の日に似つかわしくないけれど、その音が待ち遠しかったものでつい頬が緩みます。
ねぇ、あなた。
あなたはものをよく見る人だったから、あなたが床に伏せて、日が経つにつれて陰る私に気づいていたのでしょう?
"僕のことは忘れて幸せになってください"
写真の裏のメモ書き、いつ書いたのだか。
私ね、好きな人ができたの。
あなたに似た勉強熱心な人よ。
あなたがいなくなって、凍えた私の心を融かしてくれた人。
でもね、あなたのことを忘れることはできない。
彼の温もりと同じくらい、やっぱりあなたの温もりも忘れられない。
だから、あなたも連れていくわ。
嫌かもしれないけれど、一回の我儘くらいは許してよ。
トントントンと、音がなって戸を開けました。
「お邪魔します!すみません、遅くなってしまって……」
「いらっしゃい、外寒いし、ずいぶん冷えたでしょう?ちょうど出来たてなの。あたたかいお味噌汁はいかが?」