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移動中  作者: 鈴木明子
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1月26日

きのう。

 きのうは、給料日だった。

この日を待って、色々計画していたことが、キャッシュカードを忘れた為に、今日にひきのばされた。

お財布は、空っぽだ。

 きのうは、電車もおくれた。

私は、時間より、かなり余裕を持って通勤しているので、多少遅れても慌てない。

間に合わないようでも、同じ時間に入る同僚にラインを送ると上司に伝えてくれる。

この仲間たちの為に、本当に助けられている。ほとんど、同期入社のせいもあって、さまざまな情報も共有できる。

 私がひとりでいるのが気楽になったのは、私の見た目とはギャップがある、口の悪さのせいだ。

本心で感じたことは、言っていいことと、悪いことがある。

同僚のひとりは、会社のおじさんに「苦労してきたんだねえ。」と見た目だけでいわれたせいで、そのおじさんは何をしても、嫌われることになった。

会社の若い上司に、「その考えは、えぐい。」と言われて、一同で「えぐい」をトイレで検索している光景も見てきた。  えぐいで傷つくおばさんが、パーマをかけてきて、みんなに褒められている時、私はおばさんを見るなり「チリチリ」と言い放って、おばさんは崩れ落ちた。しばらくの間、私はチリチリと言った人となって、回復するのに、時間がかかった。

 だのに、電車が遅れて駆け込んできた同僚が珍しくベルトをしていて、しかもベルトがよれていて、何人かで直してあげている光景をみて、「まわし」と言ってしまった。しまったと思っても、取り返しがつかない。一同、微妙な空気のまま仕事に散っていった。日頃から、なんでもいい合える仲とはいえ、ひどい言葉だ。この人は、見た目がぽっちゃりしていて、天然の雰囲気が漂う。私が、時々「くまもーん」と呼ぶと、どついてくる。仕事中、反省していたのに、「悔しかったら、くびれてみろ。」と、また言ってしまった。彼女が「わたしは、ここに脂肪を置いているだけなの。これは、ベルトで、まわしじゃないの。」と言って自分を慰めていた。わたしは、自分のストレスを彼女にぶつけてしまった。

しばらく、彼女の言うことは、なんでも聞いてあげよう。ゆるして欲しい。きのうの私を。 

 私の中の悪魔を鎮める為に、少しひとりになりたい。


ごめんなさい、仲間たち。

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