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なりゆき乱世~お姫さまと埋蔵金~  作者: 唖鳴蝉
第一部 新天地と新生活 篇
6/56

第二章 逃げ出したお姫さま 1.最低の出会い

 僕がこっちの世界に迷い込んでから十日、色々とスキルも得たし、食糧も少しは確保できた。

 スキルの中で出色なのは、スライムを観察していて獲得した【融解吸収】だ。身体に触れたものを文字どおり融かして吸収できるスキルで、大抵のものから――栄養価に違いはあるけど――栄養を獲得できる。サバイバルに最適のスキルです。貰った時には喜んだよ。これで食糧問題は解決――って……必要な栄養素を含んだものが手に入らなきゃ同じだって事に、少し経ってから気付いたけどね。まぁ、それでも、食糧となるものの幅が増えたのは朗報だから、しばらくの間はハイになってたよ。……【身体変形】ってスキルを得ている事に気付いた時には、少しブルーになったけど……。

 何より驚いたのは、こんなスキルを貰っても、僕の種族は「人間」のままだって事かな。凄いな異世界。


 そんな事を考えながら洞窟へと足を向けていると、洞窟の方から足音がするのを感じた(・・・)


 これは新たに解放された【遠隔触覚】というスキルだ。土の振動を感知するスキルで、ソナーのように使う事ができる。ハダカデバネズミという動物の知識から得たスキルみたいだ。お蔭で色々と助かっている……今みたいに。

 【隠身】を発動しながら近づき、【熱感知】で洞窟の中を探る。ガラガラヘビのピット器官に関する知識から得たスキルで、動物が放つ熱……赤外線を見る事ができる。……中にいるのは二人だけ、それ以外にはいない。


 しばらく迷った僕は、【隠身】を解除して(すい)()する事にした。ここが異世界でも、今の僕が子供でも、先住権や所有権はきちんと主張するべきだろう。一応手には水筒を持って……


「どなたですか? 何の御用ですか?」


 そう声をかけると、中の二人はようやく僕に気付いたようだ。……鈍いなぁ。


「誰だ! 名を名告(なの)れ!」


 そう言って出てきたのは、冒険者っぽい格好の勇ましいお姉さんだった。美人だけど、何か怒っているようで迫力がある。腰の剣に手をかけて……あ、僕一人なのを見て()(げん)そうな表情だ。


「お前は何者だ! 追っ手の一味か!」

 ……追っ手?


「貴女こそ誰ですか。人の家に勝手に入り込んで」


 (わざ)ときつい口調でそう言ってやると、女の人は初めて戸惑ったようだった。その後ろからもう一人の女の人が恐る恐る出てきたけど……その人が手に持っているのは、僕が作って保存していた魚の……


「ぼ、僕の干物――!!」



・・・・・・・・



 十分後、僕の目の前には土下座して平謝りしている二人の女の人がいた。



「――本当にすまない。てっきり避難小屋のようなものだと思って……」

「……入り込んで、中を荒らした挙げ句、僕のなけなしの保存食料を食い荒らしたわけですね?」

「……すまない……本当に……」

「ごめんなさい……」

「はぁ……もういいです。責めたところでどうにもなりませんし、腹中のものを出してもらっても困りますし」


 スライム直伝の【融解吸収】を使えば何とかなるかもしれないけど、気分的に嫌だ。いくら美人でも、ゲ○はちょっと……。

 あ、お姉さんたちは二人とも美人だった。最初に現れたお姉さんは見た目二十歳ぐらいで、勝ち気そうな顔立ちの美人で、男言葉で話している。格好も男の冒険者と同じだし。もう一人のお姉さんは少し年下……多分十七~八歳くらいだろう。大人しそうな見た目だけど、芯は強そうだ。一見こっちのお姉さんを勝ち気なお姉さんが護衛している――って感じだけど、言葉の端々からすると逆みたいなんだよね。ま、深く立ち入る気は無いけどさ。


「……すまない。()(しょう)だが代金は支払うので、それで勘弁してもらいたい」

「代金って……お金を戴いても、こんなところじゃ使いようもありませんし」

「それだ。君がこんなところで暮らしている理由は詮索しないが、もうすぐ冬になるぞ? こんな場所で、子供一人で冬を越すのは厳しいのではないか?」


 う~ん……それは常々考えてたけど、ここがどこで、町や村がどこにあるのかも判らなかったから、選択肢に入れる事ができなかったんだよね。


「紹介状くらいは書いてやれるから、シガラの町へでも出た方が良くないか?」


 シガラの町?


「そうですよ、こんな寂しい場所で子供が一人暮らしなんて、良くありません」

「私たちは事情があって同道できないが、あの町には知り合いがいるのでな。頼めば手助けくらいしてくれるだろう」


 いや……でもねぇ


「そのシガラの町に行く道筋が判らないんですけど……」

「うん? やはりこの辺りの者ではないのか?」


 さて……どうしたものかね。ある程度の事情は話しておいた方がいいのかな? どうもこの二人って逃亡者みたいだし……だったら僕の事をどうこうするような余裕は無いだろ。紹介状とやらは後で見せてもらえばいいし、何より今後の事を考えると、少しでもこの世界の情報が欲しい。ここで冬越しは難しいとも思ってたしね。これはある意味で好機ってやつかもしれないな。


「実は……」


 さて、化かし合いの始まりかな?

本日も四話公開します。次話は約一時間後に公開の予定です。


【ちょっと裏話】本作におけるユニークスキル「肖る者」と、拙作「スキルリッチ・ワールド・オンライン」のスキル「トリックスター」の類似に気付かれた方もおいでかと思いますが、実は「肖る者」の方が原形になります。話の核となるユニークスキルの設定は思い付いたものの、話の筋立てがどうにも思い付かず、思い切ってVRゲームものに書き直してみたのが「SRO」だったりします。

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