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なりゆき乱世~お姫さまと埋蔵金~  作者: 唖鳴蝉
第三部 旅と謎解き 篇
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第十五章 謎解き

「マモル! 説明してもらうぞ!」



 獰猛(どうもう)とすら言えそうな笑みを浮かべてマモルに詰め寄っているのはユーディス姫。ここはカーシンの館である。



「説明と言われても……まだ正解なのかどうかも判らないんですから……」



 〝探偵は みんな集めて さてといい〟

 ――などという川柳もあるが、マモルにしてみれば、まだ謎解きは終わっていないのである。自分の解釈が正しいかどうかも確かめていない以上、あやふやな仮説を話しても意味が無い。少なくとも現場へ(おもむ)いて、何かの手掛かりが残されていないかどうかを確かめてから、というのが探偵のあるべき姿であって……などという主張が通じない相手もいるのであった。



「マモルの考えが合っているかどうかなど、後で確認すればいい! それよりも、だ。今までにあの碑文から、ナワリなどという文字を拾い出した者はいないんだ。どうやってそれを引き出した!?」



 胸ぐらを掴まれ締め上げられて、きりきり吐けと責められているような気がする。



「いえ……ですから、まだ決まったわけではなくてですね……今の段階で不確実な仮説を披露するのは……あぁ……はい……解りました……」



 ぎらぎらと眼を底光りさせ、それこそガルル……という(うな)り声が聞こえてきそうな様子のユーディス姫を見て、これは駄目だと諦めるマモル。そんな様子を見て、カーシンが取りなすように説明を買って出る。



「いや、姫がああまで固執しておるのには事情があってな。ナワリというのは、フォスカ家の先祖の一人が討伐したダンジョンのある場所なのだ」



 ――ダンジョン!?


 一転して()(ぜん)前のめりになったマモルを見て、少しばかり引き気味になるカーシン。なぜにこうまで食い付くのだ?



「ま、まぁそうだ。スタンピードなど起こしては(たま)らんというわけで、領内の安全のために討伐したのだが、さして有名なダンジョンでもないため、今では知っている者はほとんどいない筈だ」

「その、知られていない筈のナワリを、どうやってマモルは引き出した!?」



 すっかり観念した様子のマモルが、訥々(とつとつ)と解読作業の説明を始める。



「えぇと……姫様から戴いた絵図面をですね……」



・・・・・・・・



「……むぅ……虹の色とはな……」

「あたし、赤黄緑青の四色とばかり思ってました」「うん」



 呆れたように呟いたサティとカフィであったが、今度はこれが大いに物議を(かも)す事になった。



「……はて? 五色ではなかったか?」



 (いぶか)しげに言うカーシンに同調したのはソーマであったが……



「いや、拙者も五色と教わりました。赤黄緑青紫の五色だと」

「何? 赤橙黄緑青の五色ではなかったのか?」

「え~? あたし、赤黄紫だとばかり思ってた」



 わいわいと騒ぐ一同をよそに、独り浮かない顔をしているのはなぜかユーディス姫である。



「……姫様?」

「む……? どうなされた?」



 ()(げん)そうに心配そうに問い詰められたユーディス姫は……



「いや……子供の頃に母から聞いたお伽噺の事を思い出したのだ。今の今まですっかり忘れていたが、虹は七人の妖精が飛んだ跡なのだと……フォスカ家だけが知っているお話だから、(みだ)りに口に出してはいけないと言われていてな……」



 ポカンとした顔の一同であったが、姫の告白を聞いて、その顔は更に変化する事になる。



「……その妖精たちの名前も聞いた筈なのだが……どうにも思い出せなくてな……」



 姫を見つめる一同の視線が、残念な子供を見る者のそれに変わった。

話の中に出てきた川柳は、横溝正史(1946;角川文庫1973)「蝶々殺人事件」に、推理作家S.Y氏の作として登場します。


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