第一章 異世界不思議発現 3.二日目(その2)
本日最後の投稿です。
しばらく色々と調べたり確かめたりしてみたけど……どうも、僕が地球にいた頃に本やテレビで得た知識が、既にスキルとして用意されてるみたいだ。どうやら、仕組みとかをちゃんと理解したものだけが、スキルとして登録されるみたいだけど……。検証しようにも、何が用意されてるのか判らないのがなぁ……。飛べると思って木から飛び降りて、飛べずに落下、骨折とか……馬鹿みたいだし……。
――けど、それで解った。
昨日カマキリの化け物――【鑑定】はバランティスって言ってたけど――が僕を見失ったらしいのは、きっとこの【隠身】っていうスキルのせいだ。多分、地球でカメレオンとかヒラメとかタコとか、そういうのを読んだり観たりして得た知識が原因で獲得したんだろうな。……てか、【隠身】っていうスキル自体は、こっちにもあるのか。習得に補正がかかったって事かな?
で、こっちの【掘削】っていうスキルだけど……確かに素手で土とか掘るのが楽だったから、多分このせいだと思うんだけど……試しに剣とか使って掘ってみても、全然楽じゃないんですけど。何か理由があるのかな……あ? ユニークスキルのレベルが低いうちは、道具を使ったスキルは得られない? ひょっとして、これか? 道具を使って掘ると、スキルの補正が効かないとか? ……だとしたら、使いどころが難しくなりそうだな、このスキル。
あと、【鎮魂】っていうスキルが生えてるんだけど……これってやっぱり、昨日の般若心経かなぁ……。こっちのスキルって、どうなってるんだろ。お経とか、こっちにもあるのかな?
あ、ちなみにこの三つのスキルは、全て【肖る者】のサブスキルみたいな扱いになってた。ステータスボードのスキル欄には表示されなくて、【肖る者】からプルダウンメニューを開くと出てくるんだよね。【肖る者】の効果で取得したスキルは、皆サブスキル扱いになるのかな?
――癖のあるスキルには違いないけど、僕がこちらの世界で生きていく上では役に立ちそうだ。
……そう、生きていく。
ステータスを表示させた時に、そしてその後で自分を【鑑定】した時に解ったんだけど……僕の病気が消えている。今までに無かったくらい体調が好い。将来発症する可能性が無いとは断言できないけど……少なくとも、今の僕は健康だ。
健康な身体で、見知らぬ国へ来て、見知らぬ生き物たちを観察できる。遺跡だって見に行けるかもしれない。
僕が願っていたとおりの人生がここにある。……少しハードな気もするけど。
とにかく――そういう事である以上、向こうでできなかったあれこれを、何もかも纏めてこちらの世界で体験しないと。貰ったスキルはそのために使おう。
そのためには……できる事を増やすのと、面倒に巻き込まれないようにステータスを偽装するのと……当面はその二つかな。
とりあえず、手軽にできそうなステータスの偽装から先にやっておくか。
こちらの世界の平均的なステータスと比較すると、僕のステータス値は少し高いようだ。軒並み一般人の平均……いや、子供の分だけ少し下か……ともかくその値に偽装してもいいんだけど、そうすると今度は実際の筋力とかとの不釣り合いが生じるかもしれない。露見しそうな筋力と敏捷性は、少し高めにしておくか。
――というところで、新たに用意したステータスがこちらでございます。
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名前:マモル・ユゴー [遊行寺 護]
種族:人間 [異世界人]
性別:男
年齢:十一
魔 力:30 [100]
生命力:32 [80]
筋力値:13 [26]
防御値: 7 [20]
敏捷値: 8 [25]
器用値: 6 [15]
知力値: 6 [55]
スキル:【生活魔法】【鑑定 Lv2[Lv4]】[【言語学 Lv5】]
[固有スキル:【ステータスボード】【肖る者 Lv1】]
[称号:迷い人]
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[]で括ったのが本当の数値で、これは【鑑定】では見られない……筈だ。【鑑定】では[]に括られていない部分だけが見える筈。この数値が妥当なのかどうかは正直言って判らないけど……少なくとも、本当の数値を晒すよりはマシだろう。
できる事を増やすのは……獲得している筈のスキルをどうやったら解放できるか判らない以上、こっちの生き物とかを観察する方が確実かな?
次の投稿は明日の20時を予定しています。
作者の別作品「従魔のためのダンジョン、コアのためのダンジョン」 「スキルリッチ・ワールド・オンライン」も、「小説家になろう」で連載しています。宜しければこちらもご覧下さい。