第十一章 盗賊退治 4.急の段(その1)
三十分後、二十名近い盗賊たちの殲滅を終えたマモルたちは、警戒を続けつつもアジト内のお宝を根刮ぎにしていた。
「ちぇっ、思ったより時化てんな」
「ここには居着いたばかりみたいだったからね。貯め込むほどの稼ぎは無かったのかも」
「しかし、金子の類はそこそこあるではないか」
「そりゃ、金貨があったのはめっけもんだけどさぁ……やっぱりこう、盗賊の宝と言えば金銀財宝とかさぁ……」
「無いものねだりをしても仕方がない……待って……この下、何かある」
警戒のために発動していた【遠隔触覚】が、地下に違和感を検出した。これは本来土の振動を感知するスキルであるが、マモルは歩いた時の振動の伝わり方から、地中に何かあるようだと勘付いた。改めて【反響定位】と【遠隔触覚】を発動し、音波の反射から地中の構造を診断する。
「……やっぱりだ。この下、何か埋まってるよ」
「お宝かっ!?」
「とは限らないけどね。待ってて」
スキルの【掘削】を発動する。これは穴掘りに補正のかかるスキルであるが、【肖る者】のレベルが低い現状では、道具を使って掘る場合には補正がかからない。なので素手で掘るしかない――と、思っていたのだが……
(そう言えば……先生から土魔法も習ってたんだっけ……)
試しに【掘削】を発動したまま土魔法を使ってみたら……それはもう、素晴らしい勢いで穴が掘れた。
「うわぁ……」
「おぃマモル! お前、魔法が使えたのかよ!?」
「あ、うん。カーシン先生に習ったんだよ。覚えておいて損は無いからって」
魔法というのはそんなに簡単に覚えられるものだったか――という疑念が二人の頭を掠めたが、何しろあのマモルだからな――という事で納得する。
「まぁ、それはよいとして……埋まっていたのはこれか?」
「宝箱みたいだね……少し小さいけど」
「お宝っ♪」
やや小振りな箱の蓋を開けると、中には金銀財宝ザックザク……ではなく、どこかで見たような小さな革袋が三つ。
「――なんだ? これ」
当てが外れて拍子抜けしたようなヤーシアであったが、
「これって……」
「マジックバッグのようだな。しかも、同じ拵えのものが三つ。これはひょっとすると……」
「ひょっとすると……何だよ?」
「いや……マモル、中を検めてみてはくれぬか? 拙者の考えが正しいかどうか、そうすれば判る筈だ」
「あ、はい」
言われるままにマモルは袋の中身を検める。マモルのマジックバッグのように使用者固定の機能が付いているのではないかと思ったが、幸いにもそういう事はなく、簡単に中身を確認する事ができた。
「……こっちに入っているのは武器ばかりですね。槍に剣に弓矢……しかも、どれもこれも規格が大体揃ってる」
「武器かぁ……悪くはないんだろうけど、あたしたちが持っててもなぁ……。あのお姫様に押し付けるか?」
「それも良いかもね。こっちは食糧みたいだけど……携行食糧ばっかりだね」
「うぇ、あの不味いのかよ。あたしはいらないぞ?」
「僕も欲しいとは思わないけど、量だけは随分あるよ? これもお姫様案件かな。最後の一つは……」
マモルが最後の革袋を開けてみると、出てきたものは硬貨であったが、金貨は無く全てが銅貨と銀貨であった。
「何だよ、鐚銭ばかりじゃんか……って、何で態々こんなのを隠してんだよ?」
ヤーシアの疑問も無理のないものであった。上には金貨の入った袋が置いてあったのに、埋められている方は銀貨と銅貨ばかりなのだから。
「確かに銀貨と銅貨だけどさぁ、どっちも枚数が半端じゃないよ? 多分だけど、金貨十枚どころじゃないんじゃない?」
「お♪ マジかよ♪」
途端に機嫌を直したヤーシアであったが、ソーマの方は独り考え込んでいる。
「ソーマさん?」
「……ん? あぁ、いや、拙者の考えが当たったようだ。恐らくだが、これらはどこかの軍需物資であろう」
「え?」
「こいつら、軍を襲ったってのかい?」
そんな手練れには見えなかったがと半信半疑のヤーシアであったが、ソーマの説明は納得のできるものであった。
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