第七章 姫君奪還 1.序奏
冒険者見習いである僕は、教会や冒険者ギルドでの書類仕事の合間に、ギルドから出される依頼などもちゃんとこなしている。具体的には雪掻きとか雪掻きとか雪掻きとか……今なら雪掻き初段くらい貰えそうな気がするよ。
そんな雪掻き作業も一段落ついて、再び書類仕事漬けの毎日。……いや、こちらの世界では恵まれた待遇なんだろうけど……これはいわゆるサラリーマンというやつではなかろうか。折角の異世界なんだから、もう少し異世界っぽい展開を期待するのも、必ずしも間違いではないと思う。波瀾万丈の大冒険はいらないから、少しだけ起伏のある生活、プチ冒険カモン!
……とか思っていたら……その週の最終日になって、停滞気味の日常を吹き飛ばすような出来事がやって来た。それも思いっ切りハードモードで。この世界って、ハードモードとイージーモードの二択しか無いんだろうか……。
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「え? 捕まっちゃったんですか? お姫さま」
「あぁ、随分と逃げ回っていなさったようだが……とうとうお捕まりになったってぇ話だ。明日にもここの町へ連れて来られるってよ」
僕にその話を伝えてくれたのは、馴染みの冒険者さんたちの一人だ。知り合いが捕まったと聞いた時には複雑な心境だったけど、所詮は一日話しただけの間柄だし、何より僕にはどうにもできない。と言うか、子供が首を突っ込む話じゃないよね。さ、仕事仕事!
……なのに、どうしてこうムカつくんだろう。
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仕事が終わる頃になって、ようやくこのムカつきの理由に思い当たった。
〝意思に反して自由を奪われている者がいる〟――それがこの不愉快の原因だ。
病気のためとは言え、意思に反して入院生活を余儀無くされていた頃の自分の姿が、囚われのお姫さまと重なるんだ。
そして……僕はこっちの世界で生きると決めた時、もう傍観者にはならないとも決めたんだった。
……うん、解っちゃった以上は仕方がないよね。
短いので、次話と同時公開とします。