第三章 シガラ 3.教会の神官(その1)
「……なるほど、事情は呑み込めた。そういう事なら引き受けよう」
シガラの町にある教会の神官はカマルといい、初対面のマモルの保証人となる事を即決した。
「え? えぇと……」
「あぁマモル、この男は孤児の世話をするのが生き甲斐という有徳の仁だから、気にする必要は無い」
「……お前の口ぶりだと揶揄されているようにしか聞こえんのだが……マモル君と言ったね、この男の言うとおりだから、君が心配する事は無い。ユーディス姫とシャムロが揃って推す以上、君の為人に問題は無いという事だろう」
実際には色々と隠している事があるため、そうまで言われるのは心苦しい。そしてそういう内心の想いが気の毒なほど表情に出ているのだが……当のマモルはその事に気付いていなかったりする。話せない事情のある事を察した上で、マモルの事を信用してくれている――嘘が吐けない質だと見透かされているのが大きい――というところにまでは、思いが至らないのであった。
「……すみません。ご迷惑をおかけします……」
「だから、そういう事は気にするな。こいつは道楽でやってるようなものだ」
「道楽呼ばわりは心外だが……気にしなくていいというのはその通りだ。あぁ、ただし一応君の事を【鑑定】させてもらいたいが、構わないか? これは保証人としての習わしみたいなものでね」
「あ、はい。勿論構いません」
この日あるを期して、予め【ステータスボード】でステータス画面を偽装しているのだ。抜かりは無いとばかりに自信満々のマモルを見て――相変わらず判り易い少年だ――些か怪訝そうな表情を浮かべたが、まぁ見れば判るだろうと【鑑定】をかけるカマル。表示された結果がこれである。
ちなみに、【肖る者 Lv2】がいつの間にかレベル2になっていたのは、解放されたスキルの数が関係しているらしい。レベル2に上がった事で【肖る者】の感度も向上しているらしく、前よりも短時間の観察で技術を習得できるようになったようだ。ただ、道具を使った技術は依然として習得できないらしいのが残念である。
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名前:マモル・ユゴー [遊行寺 護]
種族:人間 [異世界人]
性別:男
年齢:十一
魔 力:30 [130]
生命力:32 [97]
筋力値:13 [29]
防御値: 7 [24]
敏捷値: 8 [28]
器用値: 6 [17]
知力値: 6 [59]
スキル:【生活魔法】【鑑定 Lv2[Lv4]】[【言語学 Lv5】]
[固有スキル:【ステータスボード】【肖る者 Lv2】]
[称号:迷い人]
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[]で括られた部分は表示されていない筈。これなら問題は無いだろうと自信満々のマモルであったが……
「おや? マモル君は苗字持ちか?」
いきなり落とし穴があったようだ。
「え? えぇ……僕のいたところでは全員そうでしたけど……この辺りは違うんですか?」
聞けばこの国では、苗字を持っているのは貴族と一部の商人ぐらいで、平民は苗字など持っていないのだという。
「……なのに苗字持ちって示されているのは……」
「この国の出身でない事がバレバレだねぇ……」
彼我の世界の懸絶ぶりに頭を抱えたマモルであったが……