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なりゆき乱世~お姫さまと埋蔵金~  作者: 唖鳴蝉
第一部 新天地と新生活 篇
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第三章 シガラ 2.町の顔役

 落ち着いた様子で控えめに希望を述べるマモルの態度に、シャムロは思いがけなく感心した。てっきりおんぶにだっこの要求を出されるものとばかり思っていたのだが……これは中々見どころがありそうな子だ。

 しかし、「迷い人」である事を隠すのなら、自分が保証人になるのは(かえ)って(まず)いかもしれぬ。何しろ自分とユーディス姫が知己である事は知られている。その自分が態々(わざわざ)この子の保証人になるなどと知られた日には、この子にまで余計な詮索が及ぶかもしれない。

 それに……気になる点はもう一つある。さっきのこの子の話では、洞窟に冒険者らしき屍体があったという事だが……



「マモル、その屍体が持っていたマジックバッグというのは、それか?」

「あ、はい。今は僕の荷物なんかが入ってますけど」

「ふむ……見つけた時、中には何が入っていた?」

「え~と……銀貨の入った財布、ポーションらしいものが何本かと、塩の塊、ロープにマント、毛皮……あとは携帯食料みたいなものですね」

「財布の中に入っていたのは? 銀貨だけか? 書き付けなどは?」

「入っていませんでした。財布も(あらた)めてみましたが、隠しのようなものは無いみたいでした。……ご覧になりますか?」

「いや……場合によっては後で見せてもらおう。それで、その屍体が身に付けていたのは?」

「ボロボロになった衣服の他は、剣と短剣、水筒だけですね」

「ギルドカードのようなものは? 持っていなかったか?」

「僕が気付いた限りでは」

「ふむ……その剣と短剣を見せてもらえるか?」

「あ、はい」



 今一つシャムロの意図が解らないマモルであったが、別に隠すようなものではないと判断して、そのままマジックバッグから取り出す。その剣をしばし見ていたシャムロは眉を(ひそ)めると、今度は短剣の方を見て再び顔を(しか)める。



「……あの?」

「長剣の方は結構な業物(わざもの)だ。一介の冒険者が持つにしては不似合いなほどにな。対して短剣はどこにでもある数打ちのもので、使い込んだ形跡も無い」



 その口調から、あの遺体が持っていた剣と短剣が、冒険者が持つにしてはおかしなところがあるらしいと察するマモル。



「すまんがマジックバッグの方を見せてもらえるか? ……あぁ大丈夫、中身を調べるような真似はしない。外見と容量を確認したいだけだ」



 マモルはしばし逡巡したが、腹を(くく)ってマジックバッグをシャムロに手渡す。シャムロはその袋を検分していたが、マモルの名前が書いてあるのを見て少し微笑んだ。子供らしい占有欲と思ったのかもしれない。次に何やらバッグを【鑑定】しているようであったが、再び眉を(しか)める事になった。



「……あの……?」

「……マモル、君はこのバッグの容量を知っているな?」

「あ、はい。確か、小屋一つ分くらいあると……」

「その事は決して口に出すな。……いや、これを持っている事自体、できる事なら隠しておけ。……見習いとは言え冒険者として活動するなら、難しいかもしれんが」

「え……?」

「この国の常識を知りたいと言うから教えてやろう。通常出回っているマジックバッグの容量は、大きいものでも荷馬車半分ほど。小屋一つなどというのは論外だ」



 上級貴族でもなければ持っていない筈だと聞かされて、思わず目を見開くマモル。だとしたら……あの遺体は一体……?



「ギルドカードを持ってない事も考え合わせると、マモルが考えたような冒険者でない事は確実だろう。ただ……何者なのかは見当も付かん」

「えぇと……そうすると……」

「冒険者ギルドでは、屍体の事は口にするな。剣とマジックバッグは隠しておいて、普段は短剣だけを身に付けておけ。ギルドには戦災難民とでも言っておけばいい」

「はぁ……」

「ついでに言うと、私がマモルの保証人になるのは(かえ)って(まず)い気がする。何分私はユーディス姫の知人という事で、ここの領主と代官から目を付けられているのでね。その辺りの事情は察しているだろう?」

「何となく……」

「だからマモルの保証人は、知り合いの神官に頼む事にする。……『迷い人』の件を明かす事になるが、異存はあるかね?」

「いえ……シャムロ様のご判断で(しか)るべく……」

「解った。それから私に様付けは要らん」

「……はい、シャムロさん」

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