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童話シリーズ

道化師の涙

作者: Goko

ある国に道化師の青年が1人。城下町に赤い屋根の宿屋があり、そこの前の噴水のある広場が彼の仕事場である。

彼は言葉は話せなかった。しかし、道化師としての技術でそれをカバーし、一躍国の有名人となっていた。

彼には熱狂的なファンがいた。その女性は彼が有名になる前から、ずっと彼の仕事ぶりを見に来てくれていた。


あるとき、その女性はパタリと来なくなってしまった。なぜだろうと彼は思った。

しかし、その女性がいつくるか分からない。明日くるかもしれない。そう思い、女性が来る日を待ち続けていた。

待ち続けている期間はこの技をしたら喜んでくれるだろうか。こんな風に踊って見せたら喜んでくれるだろうか。と、更に技が増え、彼は王室に呼ばれるまでに有名になっていた。


王様は彼が国と国の大きなパーティーで、素晴らしい余興をしてくれたと感激した。

「そなたに褒美をくれよう。何が良い。」

彼は『ずっと私のことを見続けてくれていた女性がいた。彼女が今何しているのかを知りたい。』

そう紙に書き、王様に渡した。

「よかろう。しばし待っておれ。」


すると、期間もあまり経たずに王様に呼ばれ、王室へと向かった。

「おぉ、来たか。女性が見つかったぞ。しかし、王室へは呼ばなかったのだ。すまぬな。」

すると、王様から地図をもらった。

「ここへ行くが良い。」

そう言われると彼は嬉しそうに走り出した。お礼がずっと言いたかったのだ。辛い時も、苦しい時も、辞めようと思った時も、あなたが来てくれたからずっと続けていたのだと。


地図の場所は城下町から少し離れた小さな山小屋だった。彼女はベッドに1人横たわっていた。

「あなたは道化師の。どうかなされましたか?」

女性が話しかけて来た。

彼は紙に『彼女に用があって来ました。ずっと私の仕事を見に来てくれていて、お礼が言いたいのです。』と書いて女性に渡した。

「私は今、こちらの女性の看病をさせていただいている看護師です。ですが、辛い事に、原因不明の病なのか、まだ解明されていないのですが、彼女ずっと目を覚まさないのです。」

彼はショックを隠せなかった。私を救ってくれた彼女が今、いやずっとこうして苦しんでいたと気付けなかった事を後悔した。

彼は無言のまま彼女の前に立った。すると、彼女が今まで見て来た技や、彼女にまだ見せたことのない技を彼女の前でやって見せた。

彼は彼女が見に来てくれていた過去のことを思い出していた。誰よりも大きな拍手をしてくれて、戯けてみせたら誰よりも笑ってくれて。

『あなたを見るといつでも元気になれそう!』

と、ずっと言ってくれた彼女への感謝の気持ちを込めて。元気になってと声を振り絞ろうとしたが、彼はやはり、言葉には出来なかった。最後までやりきった後に、満面の笑みを浮かべて泣いていたという。


その後、彼は1人の女性の笑顔を見る為に仕事をする。と言い張り、噴水の広場にも、城下町にすらも現れなくなったという。















しかし、4年後、車椅子の女性と道化師を男が見たという噂が流れた。所詮は噂であったが、その女性は満面の笑みを浮かべていたという。



何よりも大切な思いってありますよね。

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