正義
ほんとに短い小説さ…。
昔々、あるところに正義感の強い男、いや、強すぎる男がいました。
男は自分の「悪」だと感じた者を断罪して来ました。
恋人を殺した女、盗みを働いた子供、殺人現場にいた血を浴びた男など。
彼は自分こそが正義である、と思っていました。
しかし、ある日、断罪中、老人にみられていることに気がつきました。
老人は問いました。
「お主は何をしているのか?」
断罪を終えながら、男は答えました。
「悪を滅しているのさ。」
さらに老人は問いました。
「何を基準にして悪としているのか。」
背を向けながら男は答えました。
「正義に反しているからさ。」
老人は言いました。
「それは本当に悪であったのか?お主のそれは本当に正義であるのか?例に一つ上げてやろう。お主が以前殺した男、彼は大量殺人犯により家族、友人を皆殺しにされた被害者での。お主がみたのは彼がその殺人鬼を見つけ出し、これ以上被害者を出さぬように倒した場面じゃ。そこで、彼をお主は殺した。お主は悪だと断じたが、正義の反対はまた別の正義でもあるのじゃ。
再度問おう。
そ れ は 悪 だ っ た の か の ?」
男は振り向いた。
しかし、老人はそこにいなかった。
男は考えた。
「私も悪であったのではないか?」と。
そして、男は。
死 ん だ。
正義って、なんだろうね。