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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
4章 双子のおばけ退治

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問いかけの謎

 思いがけない展開に、オミクロンは目を丸くしていた。

「まさか――まさか本当に召喚獣を……あの体制不利な状態から仕留めきるとは――」

 驚きの表情を浮かべていたのも束の間、その幼い外見とは裏腹に真剣な表情に変わる。

「――これは……やはり……」

 オミクロンがそうつぶやいた時だった。四人の少年少女は武器を向けながら彼に向き直っていた。

「散々時間使わせてくれただな!」

「ついでに体力もね」

「でも、ここまでよ!」

「そうだそうだぁ~! 闇の石から手を引くことだぁ~!」

 四人のその言葉にオミクロンが舌打ちしたその背後で、場違いな明るい声が響いた。

「出たぁーーーっ!!」

 思わず驚く四人と一人の目の前で、あのデルタが穴から飛び上がった。その姿を見て四人とも息を飲む。

「あ、あの石は――」

「闇の石だべ!!」

 そう、飛び上がったデルタの手のひらには、あの黒い闇の石が浮かんでいたのだ。

「くそっ! 手に入れさせるもんかっ!」

 デルタのその姿を確認するや否や、シンジがその右手の剣で狙いを定めて叫んだ。

氷刃ヒョウジン!』

 呪文と共に氷の剣先から、氷のつぶてと風がデルタ目かけて一直線に吹き出した。それに気付いたデルタがハッと目線を向けた時には、すでにその攻撃は目前に迫っていた。しかし――

『パリエス』

 即座そくざに反応したのはオミクロンだった。シンジの魔法が発動された直後すぐに呪文を唱えていた。彼の呪文に反応して、ひとつの魔法陣が空中に浮かび上がっていた。半透明でうっすらと光るその魔法陣は、ちょうどシンジの攻撃とデルタの間に浮かび上がると、氷の粒を全てその表面で跳ね返した。

 激しい雨風が当たる屋根のような音を響かせて、シンジの放った魔法は全てその魔法陣にさえぎられた。

「むっ」

「――っとびびった……」

 その様子に魔法を発動した青髪の少年は苛立いらだった表情を見せ、デルタはほっと安心した表情を浮かべた。

「な、なんだよ、オミクロン……。オレをかばうなんて珍しいな」

 デルタの正直な発言に、彼の方を見向きもせず幼子は鼻を鳴らす。

「闇の石を見つけ出し、ペルソナ様に届けるまでが我らの役目。デルタも油断するな」

「ちっ……わかってるよ」

 不機嫌に一言漏らすと、デルタはすぐにくぼんだ床から這い出てきた。

「ここでこのまま逃すわけには行かないだべ!」

 そんな敵二人にシンが叫ぶと、思いがけずオミクロンがその緑の瞳を細めて笑った。

「それは私のセリフだ。お前たち、闇の石を持っているだろう?」

 その言葉に、シンとシンジが警戒するように構えをとる。それを見て幼子の目がさらに細くなる。

「お前が持つ風の短剣――それは風の闇の石の力を武器化した姿……。そして闇の石の地図となる光の闇の石のかけら――。そして恐らくはその青い少年が持つ水の闇の石……。ペルソナ様はそれら闇の石を必要とされている……。お前たちには出来すぎたものだ。渡してもらおうか」

 高圧的なその言葉に、反射的に双子が叫ぶ。

「誰が渡すか!」

「渡せと言われて渡すバカはいねーだべ!」

 反抗的なその言葉に、オミクロンがうっすらと笑った。不気味なほど大人びた表情で口の端をゆがめていた。

「――ならば力づくで奪うまでだ――!」

 そう言ってまたオミクロンが両手の甲を光らせた。その様子に双子は息を飲む。

「あの動きは――!」

「また召喚術――!?」

 先程の戦いで、大きな怪我こそはなかったが、正直体力は相当消耗しょうもうしていた。この状態で、またあれほどの召喚獣と戦うには分が悪い――双子の背中には冷や汗が流れていた。

「そこまでよ」

 空間をゆらめかせるように女性の声が響いた。その声にシンたちだけでなく、オミクロンもデルタもはっとする。

「この声は――」

「エプシロン――?」

 オミクロンの呪文を唱える声が止まり、そんな彼の背後の空間が水面のようにゆらめいた。そしてその水面から浮かび上がるようにして現れたのは、想像通り水色の女性、エプシロンだった。

「エプシロン……なぜ止める?」

 思いがけず味方に攻撃を止められたことに、少なからず不満を抱いたのだろう。にらむように彼女を見上げるオミクロンに、エプシロンは静かに視線を投げていた。

「――ペルソナ様のご指示だからよ……」

 その言葉にオミクロンは沈黙する。口をはさんだのはデルタだ。

「え、マジかよ、今ならオレたち三人でこの四人と戦えるんだぜ? ここでやっちまったほうがいいじゃねえか!」

「邪魔者がここに来ようとしているの。いちいち厄介事やっかいごとを起こしていられるほど、今のペルソナ様に余裕はないわ」

 デルタにそう告げる彼女の声は心なしか沈んで聞こえた。その声色にデルタが口を閉じる。

「――そういうことであれば仕方ないな……」

 オミクロンはすぐにそう答えると、急にくるりと背を向ける。突然の態度の変わりように四人の子どもたちは一瞬ポカンとしていたが――

「あっ! ま、待つだ!」

「はっ! 逃げる気かっ!?」

 事の流れに気がついて、双子があわてて声をかける。その言葉にオミクロンが答えるより早く、デルタが偉そうに叫ぶ。

「誰が逃げるかよ! 今回はこの闇の石を手に入れることが狙いだからなっ! だが見てろよ、次に会った時は必ず――」

「ハイハイ、アンタは石ごと早くこっちに来なさいな」

「いてっ! ま、待て、耳引っ張るな! いててててっ! いた、痛いっ!痛いって!!」

 全てのセリフを言い終わらないうちにエプシロンに片耳をつままれ、そのまま引っ張られるようにデルタはあのゆらめく空間に引きずられた。

「あ、待つだ!」

 その様子にシンがあわてて攻撃を仕かけようとするが――

鎌鼬かまいたち!!』

「パリエス」

 シンの放った風の刃は、またもオミクロンが瞬間的に作った半透明な魔法陣にさえぎられてしまう。

「むっ、またやられただ――!」

「今回はお互いここまでとしようではないか。お前たちの石は見逃してやる。今はな」

 悔しがるシンに向かって、うっすらと光る魔法陣の向こうでオミクロンが言い放つ。

「何を――!」

「待って!」

 オミクロンにみ付くように反発する双子だったが、その動きはすぐに止まった。後ろから二人の裾を引いたのはヨウサだ。見ればその表情は怯えでも怒りでもなく、心底心配している様子だった。

「ヨウサ……」

「ヨウサちゃん……」

 双子が思わず彼女の名を呼ぶと、ヨウサはエメラルド色の瞳をちらと壁に向けてささやいた。

「今はトモくんたちを地上に戻す方が先よ。ミランたちも助けなきゃ……」

 その言葉に双子はハッとしたようにヨウサの視線の先を見る。部屋のすみの壁には白い鳥頭の友達が、大きな魔法陣の上には猫科の少年と植物族の少女が横たわっている。それを確認して双子は顔を見合わせた。

「……確かに……」

「今はここから抜け出す方が先だね……」

 双子がそうつぶやいた時だ。空間を震わせる音が響いて四人は顔を上げる。見ればすでにエプシロンもデルタもいない。あの空間のゆらぎとなる部分が大きくゆらめき、間もなくそのゆらぎが消えようとしているのだ。二人はすでにその向こうに行ってしまったのだろう。

 その水面のような空間のゆらぎの前で、オミクロンがただ一人、彼らを無言で見つめていた。それに気がついて、シンは静かに口を開いた。

「――次に会った時は、必ずおめーらの悪事を止めてやるだべ!」

 シンがにらみつけるように言うが、彼は無反応だった。それに苛立いらだちを感じ、思わず双子が口を開こうとした矢先だった。茶髪の幼子は静かに口を開いた。

「お前たち……確かに危険因子であることはよくわかった……。だが……一つ尋ねる」

と、オミクロンは目を細めた。

「お前たち、『影』と名乗る者を知っているか?」

「へ?」

「か、かげ……?」

 その言葉に双子は顔を見合わせた。何のことを聞かれているのかわからなかった。目線をヨウサとガイに向けても、もちろん彼らにも心当たるものなどない。

 思わず首をかしげあう四人に、オミクロンは深く息を吸った。

「――そうか。……ではさらばだ」

「あっ……」

 彼らが質問の意味を尋ねようと思ったが、時すでに遅し。茶髪の幼子は、あのゆらめく空間の向こうに消えてしまったところだった。四人が見守る中、水面のようなゆらぎはふわりと消え、あとには沈黙し困惑こんわくする四人が残るばかりだった。





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