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双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
4章 双子のおばけ退治

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コンビネーション

 シンの提案は一瞬だった。こそこそと四人が話す暇はさほどなかった。

「何をしている? うかうかしているとまた攻撃をくらうぞ」

 オミクロンの挑発的な声が響いて、その次の瞬間には魔物が雄叫びを上げていた。目線を向ければまた小さな魔物を生み出している。

「え、でも誰がおとりになるのさ!?」

 困惑こんわくした表情でシンジが叫ぶと、シンは魔物めがけてすでに飛び上がっていた。

「全員だべ!」

 その言葉にシンジとヨウサが一瞬顔を見合わせる。

「――多分シンがあっち行ったってことは、僕は反対側を狙えってことだ」

「反対側――?」

「ヨウサちゃんはシンと一緒に! 足止めは僕一人で十分!」

 言うが早いがシンジはシンとは反対側に駆け出した。大量に生まれ出た小さな魔物は巨大な魔物を背に、部屋中扇型に広がろうとしていた。

 その右側に飛び出したシンは、そこから中央に向けて風の刃を飛ばした。

鎌鼬かまいたち!!』

 連続で短剣を振るうその動きに合わせ、小さな魔物は次々に風に切られ消えていく。

「手伝うわ! 『雷申ライシン』!!」

 シンの飛び上がる足元から、ヨウサが仕留めそこなった魔物を次々雷で仕留める。

「うわ~! ヨウサちゃん、うまくなったね~!」

 シンとのコンビネーションを初めて見るガイが、後ろから応援を飛ばす。

氷刃ヒョウジン!!』

 反対側の左から、シンジも敵を凍らせていく。

「フ……そうしている間にも時間は過ぎていくぞ」

 戦う彼らを見て、オミクロンが見下した表情で言い放つ。その言葉に一瞬彼に視線を向けるシンだったが、かまわず小さな魔物を仕留めていく。それをしばらく眺めているオミクロンだったが、一つため息をついて後ろを向いた。

「……所詮しょせんは子どもだな。魔法の腕は確かに立つようだが、あの魔物ごときに足止めされる程度では――大した術者でもないようだ」

 そんなオミクロンの言葉を聞いていたデルタが、ちらと目線を向ける。

「けっ……あんまりあのガキを見くびらない方がいいぜ」

 つぶやくようにデルタが言うと、オミクロンはそれを鼻で笑う。

「フン、確かになかなかの腕だが、恐れるほどでもあるまい。あの程度の子どもに負けるとは、デルタも随分ずいぶんなまったものだな」

「んだとっ!?」

 オミクロンの発言に思わず反発するデルタだが、相手はそれに構わずあごで結界を差す。

「結界はどうだ? 解けそうか?」

「けっ、今やってるところだっての!」

 デルタが嫌々ながらまた一つのブロックを動かしていく。ブロックの上にかざした手の甲の宝石が赤く光る。それを見届けながらオミクロンがひとり言のようにつぶやいた。

「無事石を手に入れたら、あの子どもたちから残る石を手に入れるとしよう。あの様子なら、新たな魔物を召喚するほどでもない」

 すると、思いがけずその発言にデルタが鼻を鳴らした。それを耳にした幼子が不愉快そうにまゆをよせると、赤髪の青年はちらと視線を送りながら口の端をゆがめた。

随分ずいぶんと甘く見てるな、オミクロン。あいつらはホントに舐めない方がいいぜ」

 デルタの発言にオミクロンは目を細める。どうして彼にそこまで言わせるのか、理解できなかったからだ。不愉快そうに幼子は鼻を鳴らす。

「フン、私はお前とは違う。あの程度の魔物に手こずる奴らなど――」

「だから、そこが舐めてんだよ。ホントにあいつら、手こずってんのかねぇ?」

「何――?」

 デルタの発言に、オミクロンがまゆを再び寄せたその時だった。

 唐突とうとつに耳をつんざく魔物の叫び声が響いた。

「なんだ!?」

 思わずオミクロンが背後の召喚獣に目線を向けた。見ればあの巨大なアリの足がまとめて二つ、崩れ落ちたところだった。

「――何、どういうことだ――?」

 戦いを見ていなかったオミクロンは困惑こんわくした声を漏らす。まさかあの一瞬で、そこまでの大打撃を魔物に与えるとは思っていなかったのだ。そんな彼の目の前で、四人の少年少女が魔物の周りを走り回っていた。

「まず一撃だべ!」

 シンが叫ぶと、またも魔物は小さな魔物を生み出していた。それを確認すると、双子は視線を合わせ無言でうなずいた。

「どういうことだ――いつの間にあれだけの打撃を与えたのだ――?」

 動揺どうようするオミクロンの眼下で、また四人と小さな魔物との戦いが繰り広げられていた。見ればまた四人は小さな魔物を消滅させることに集中している。

「――またあんな小物に手を焼いている――」

 オミクロンがあきれるようにつぶやく。足を半分も失い、動きが鈍っている巨大なアリには彼らは全く見向きもしない。見れば巨大アリはあの大口を開けて青髪の少年をにらんでいた。

「あのままではあの少年は大怪我だぞ――」

 そうオミクロンがつぶやいた直後、予想通り大アリはシンジめがけてその頭を突っ込んできた。――その時だった。

 予想に反してシンジはその大アリにすぐ視線を合わせた。

「何っ!?」

「皓々《コウコウ》!」

 驚いたのはオミクロンの方だった。シンジは大アリをにらみながらその口に冷気魔法を叩き込んだ。小さな魔物を切り裂いていた右手には氷の剣が握られていたが、左手には別の魔法をすでに準備していたのだ。アリの動きに気がついた直後、抜群のタイミングで氷魔法を発動したというわけだ。

 もちろん悲鳴を上げたのは大アリの方だった。

「今だべっ!」

 大アリの悲鳴を合図にするように、シンとヨウサの攻撃の矛先が変わる。

鎌鼬かまいたち!』

雷申ライシン!』

 頭が氷漬けになったアリのその横で、シンとヨウサのダブル攻撃が炸裂する。素速い二人の攻撃は無防備なアリの右半身に激突、右に残っていた二つの足がボロリと崩れた。右側の足を失った巨大なアリは、そのまま右にかたむくとその胴体を床に叩きつけた。

「なんだと!?」

 彼らのコンビネーションに一気に体制が逆転したことに、オミクロンも驚きを隠せない。

「胴体に心臓部分があるはずだよ~! ヨウサちゃん、まずしびれで動きを止めて~!」

 魔物から逃れるように逃げ回っていたガイが、倒れた魔物に気づいて大声を張り上げる。

「任せて!――『雷申ライシン』!!」

 ガイの的確な指摘にヨウサはアリの胴体に雷を直撃させる。またアリの悲鳴が鳴り響くが、それも一瞬――

「行くだべよっ!」

「うんっ!」

 シンのかけ声にシンジはうなずくと、胴体めがけて突っ込んだ。

鎌鼬かまいたち!』

「はっ!」

 シンの放った風の刃とシンジが突き出した氷の剣が同時にアリの胴体に突き刺さった。

空間を震わすほどの断末魔の悲鳴が鳴り響いて、次の瞬間には魔物がサラサラと砂のように崩れ落ちていった。

「やっただべ!」

「やったね!」

 狙い通り、作戦がうまくいったのだ。ワザと攻撃されそうな隙を作るため、小さな魔物に集中するふりをしていたのだ。そして魔物がこちらを向いて、大きな攻撃をしようとした瞬間に反撃に出て、残る一方が大技で攻撃を仕かける――。彼ら四人の作戦勝ちだったのだ。

 双子は倒れた魔物を見てハイタッチした。



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