表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双子の魔術師と仮面の盗賊  作者: curono
4章 双子のおばけ退治

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/150

時間稼ぎ

「いっ!!」

 叫んだその直後、空中にいたシンの体はよろめいていた。足を横殴りされ、その体制を崩していたのだ。その隙をあの魔物は見逃さなかった。動きの鈍ったシン目かけ、次の足がまた横から迫っていた。

雷申ライシン!』

 ヨウサの声がして、次の瞬間にはその足が痙攣けいれんしていた。寸でのところで攻撃を交わしたシンは、再び宙へと舞い上がった。

「ヨウサ! ありがとうだべ!」

「えいっ!」

 立て続けてシンジのかけ声が響き、シンジはその右手の氷の剣で、震えている敵の足を切り裂いた。たちまち魔物の足の一つがぼろりと崩れた。

「やった!」

 それを見ていたガイが思わず歓喜の声を上げるが、オミクロンの威圧的な声が響いた。

「果たして、喜べる状態かな?」

 その声にハッとしたのはシンだった。魔物の足に集中していたシンジとヨウサは気がついていない。魔物の目は――ヨウサを狙っている――!

「あぶねーだっ!」

 シンは即座そくざにその短剣を振り払う。

鎌鼬かまいたち!』

 しかしシンの攻撃を感じ取ったらしい魔物は、急にその頭を後ろに引っ込めた。その直後、シンの放った風の刃が、魔物には当たらず床に激突する。

 その音に、ヨウサがようやく迫り来る敵の攻撃に気が付いた。しかしその時にはすでに、魔物はまた目の前のヨウサ目かけてその口を突き出していた。

「きゃあ!!」

「くっ!」

 ヨウサの叫び声と同時に、シンは少女と魔物の口の間にすべり込んでいた。とっさにヨウサはその目をきつく閉じて身をこわばらせる。甲高い金属音が耳の奥に響いた。

「シンっ!!」

 気がついて叫ぶシンジの声に、続けて応じたのはオミクロンだった。

「ほう……。やるな」

 本当にギリギリのところだった。シンはあの短剣を横に構えて持っていた。その剣がつっかえるようになって、ギリギリのところで魔物の口が閉じられずに済んだのだ。しかしシンの体はすでにその口の閉じられる射程範囲内にある。剣がなければみ付かれている位置だ。

「シンくん!!」

 シンの背中越しに、思わず目を閉じていたヨウサが叫び声を上げる。

「くっ……ヨウサ……アレを使うだ!!」

 シンの言葉に思い出したようにヨウサが息を飲んだ。

「任せて!――『雷申ライシン』!!」

 その至近距離からヨウサは術を放った。シンに当たることなく、彼女の放った雷は一直線に魔物の口の中に炸裂さくれつした。

 その抜群のコントロールに、シンはタイミングよく剣を抜き、すぐにその剣を振り下ろした。

鎌鼬かまいたち!』

 しびれて開きっぱなしの口に風の刃が襲いかかった。口の牙の片方が切り裂かれて煙と共に消えた。

「ちょっとはダメージになっただなっ!」

「さすがシンくん!」

 シンに続いてヨウサも嬉々として声を上げる。

 しかし、喜ぶのはまだ早い。

「また出たあ~!!」

 ガイの叫び声が響いて、シンはガイの方を見た。またあの巨大アリが小さな魔物を生み出していたのだ。シンとヨウサの少し先で、シンジが襲いかかる魔物目かけて術を放っていた。

『皓々《コウコウ》!!』

 またも彼らはあの小さな魔物の消滅に大忙しだ。

「 ――ったく! これじゃこんなことのくり返しだよっ!」

 シンジが忌々しげに叫んだ時、オミクロンが笑いを含んだ声を響かせた。

「お前たちの力、なかなかなようだが――そんなにのんびりしていていいものか? 今デルタが闇の石の結界を解いている。我々が石を手に入れるのは時間の問題だぞ」

 目線を向ければ、意地悪い笑みを浮かべてオミクロンが見下ろしていた。その隣でまた頭を出して戦いを見ようとしていたデルタが、彼の蹴りでまた頭を引っ込めた。

「私たちを止めるのではなかったのか?」

 確かに彼の言うとおりだ。着々と魔物を弱らせてはいるものの――

 目の前であの巨大なアリが頭を震わせていた。きっとあの震えが治まったら、またあの頭からも攻撃を仕かけてくることだろう。まだ油断できない――。

 オミクロンは闇の石を手に入れるまでの時間稼ぎをしているのだ。このままでは敵の思うツボだ。思わずシンはその唇をんだ。

「くっそー! どうにかして早くアイツを倒さねーといけねーだべっ!」

 今の戦い方ではどうしても倒すのに時間がかかる。どうしたらいいか、思わずシンがうなった時だ。

「小さな魔物にかまっていると〜、本体が攻撃してくるでしょ〜? 逆にそれ、利用できないかなぁ」

 思いがけずつぶやいたのはガイだ。ガイは何かをひらめいたのだろう。彼の発言は気になるものの目の前の敵から目線を外さずに、シンが質問を投げかける。

「どういうことだべ?」

 ガイは敵の動きを見ながら、小声でつぶやくようにいった。

「いや、小さい魔物に集中しているフリをして〜……。大きい魔物がこっちを狙ったスキに、大打撃を与えるっていうのはどうかなと思って……」

「それいいじゃない!」

 同意したのはヨウサだ。しかしすぐに顔を曇らせる。

「でもどうやって?」

「来ただ!」

 三人の思考はそこで中断された。魔物がまたあの頭をシン目かけて突撃させてきたからだ。

火焔カエン!』

 火の玉を投げつけると、思いがけず魔物はそれを頭を上にあげてかわしてきた。そのまま上から突っ込むようにしてその口を大きく開いた。

雷申ライコウ!』

 またもみ付かれそうになるその寸でのところで、ヨウサが雷を食らわせる。

水柱スイチュウ!』

 立て続けに響いたのはシンジの声だった。見ればいつの間に小さな魔物を倒し終えたのか、ガイのその隣から術を放っていた。シンジの放った水魔法のおかげで、魔物は勢いよくその体を水に流され、彼らと魔物との距離を大きく離した。

「ナイスだべ!」

「それよりも――アイツをさっさと倒す方法を考えなくちゃ!」

 走りよるシンジの表情も、焦りが表れていた。二人の危機感を煽るように、ガイもバタバタと騒ぎ立てる。

「そうだよ~! 急がないと、闇の石が奪われちゃうよ~!」

 ガイの言葉に双子は目を合わせる。そうだ、こうしている間にも、デルタが(嫌々ながら)闇の石の封印を解いているのだから――!

「なんとか――ガイの思いついた作戦を実行できねーだべか……」

と、シンがつぶやきながら、目線を上げると――弟の刀が目に飛び込んできた。

「――そうだべ……これはどうだべ?」

 シンがふと思いついたように三人に向けて声を潜めて話しだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ